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航空自衛隊の次期早期警戒管制機について考えてみる

安全保障
この記事は約6分で読めます。

先日、韓国空軍がE7早期警戒管制機を購入する話を書いたのだが、「日本はどうするんだろう?」という疑問が頭を離れなかった。というわけで、妄想全開で軽い読み物としてお付き合い願いたい。

米、韓国にE7早期警戒機4機を売却へ 北朝鮮念頭に脅威への対処力向上図る

2024/11/5 14:35

米政府は4日、韓国にE7早期警戒機4機と関連装備を売却する計画を承認し、議会に通知した。総額は49億2千万ドル(約7500億円)に上る。

産経新聞より

アメリカ・ボーイング社はE7早期警戒管制機のバックオーダーを30機分以上抱えているので、当面、E7早期警戒管制機が退場するということはないのだろうが、実は、早期警戒管制機って「不要論」も出ているんだよね。

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早期警戒管制機不要論

次期早期警戒態勢

そんなわけで、日本の航空自衛隊はどうするんだろう?ということは、ちょっと気になってはいた。

コメントで教えて頂いた業務仕様書によれば、「将来の戦闘様相,早期警戒管制機等の運用動向及び技術動向を踏まえ, 将来的にAWACSの機能を代替し得る装備品等に関する調査分析」をする積もりだという。

分析を急いでいる背景には、日本が運用中のE767早期警戒管制機や、E-2早期警戒機の「次」を考えるタイミングに来ていることや、こんな記事に書かれた事象が影響しているのだと思われる。

(勘違いでE767を早期警戒機としていましたが、以降内容についてはE767早期警戒完成機という風に修正させていただきます

A-50早期警戒管制機の撃墜

ええと、先ずはこちらのニュースを。

ウクライナ、ロシアの早期警戒機を撃墜と 先月に続き

2024年2月24日

ウクライナ軍は23日、ロシア軍のA50早期警戒管制機を撃墜したと明らかにした。ウクライナ軍は今年1月半ばにも、同型の偵察機を撃墜したと発表している。

BBCより

ウクライナ軍がロシア軍の運用するA-50早期警戒管制機を撃墜したニュースである。このニュースの確からしさは確認できていないが、以前から「撃墜されたら困るね」という認識はあったようだ。

逆に言えば、それだけ早期警戒管制機運用の優位性は高いのだが。

ロシア連続で「航空戦の要」喪失、実はヤバイのは“日本”? 突きつけられた現実 すぐそこにある脅威

2024.03.02

2024年2月、ロシア空軍の早期警戒管制機がウクライナによって撃墜されました。1月に続いて2か月連続の損失ですが、実はこの戦訓を深刻に考えないといけないのは、航空自衛隊の方かもしれません。

~~略~~

そのようななか、実は日本こそ、ロシアを上回るAWACS大国であるということを忘れてはいけません。航空自衛隊は2024年2月現在、大型のE-767早期警戒管制機を 4機、小型のE-2早期警戒管制機を13機保有しています。ウクライナ侵攻前のロシアがA-50早期警戒管制機を9機保有していたのと比べると、トータルの機数ではほぼ倍です。

乗り物ニュースより

逆に言えば、運用している早期警戒管制機を失ってしまうと、航空優勢というアドバンテージを失う可能性があるという意味でもある。

だからこそ、「代替手段の模索」というのが始まっていると言えるだろう。日本も早期警戒管制機、早期警戒機を多数運用しているので、ヒトゴトでは無いのだ。

AWACS機能の分散

とはいえ、こうした議論は今に始まった話ということでもない。

早期警戒機不要論に拍車、NATOや米国が進める「AWCASシステムの分散化」に中国も追従
中国の早期警戒管制機を開発してきた技術者達はNATOや米国に追従して「AWCASシステムの分散化」に言及、NATOがE-3廃止を発表したことで登場した「大型AWCAS不要論」は現実のものになる可能性が高くなってきた。
中国、将来のAWACSは無人化されネットワークに統合されたものになると断言
中国は将来のAWACSについて「単一プラットフォームではなくネットワークを活用して分散化される」と言及していたが、珠海航空ショーで取材に応じた中国航空工業集団は「将来のAWACSは無人化され統合されたものになる」と断言して注目を集めている。

何れも航空万能論さまのところの記事だが、ここのところ早期警戒管制の運用の仕方についての話がチラホラ聞かれるだけに、各国でも議論されている話題ではあるのだろう。

「空の司令塔」としての機能と地位を築いてきた AWACS は、その幅広いレーダー覆域 と、司令塔の安全を確保するためにエスコート・ファイターによる護衛を受けるという特 徴から、これを撃墜することはそもそも想定し難い。今回のロシアの AWACS(A-50U)で あれば、対空レーダー覆域は半径 600km、対地覆域は 300km ということで、大方の危険は 事前に察知し回避できるほどの機能を誇る。

自衛隊のサイトより

そして、凡そ撃墜は困難だろうと言われてきた早期警戒管制機は、しかし実は撃墜か、或いは使用不能な状態になってしまっている。

そうならないような対策を講じるのは、不自然なことではあるまい。

そのための早期警戒管制機能の分散なのだけれど、ドローンなどを多数飛ばしてネットワークを形成し、警戒機能を実現する発想になるのだろう。そういえば、F-35A戦闘機のレーダー機能とか、無人随伴機に持たせるレーダー機能も似たような発想であったと思う。

つまり、色々な航空機や或いは衛星などをノードとして使い、ネットワーク化して全体像を把握しようという発想であり、デカイ空の的となりがちなAWACSの運用は止めようということなんだろう。

ただ、じゃあそれが今すぐに実現可能か?というと、なかなか難しそうである。結局、情報処理する管制機が何処かに必要で、それは通信する以上は空にいた方が都合が宜しい。

アメリカはE7早期警戒管制機を整備

実際、アメリカはAWACSの脆弱性を認識しながらも、早期警戒管制機は引き続き運用していく予定ではあるようだ。ロシアのA-50早期警戒管制機の撃墜は、前に出し過ぎたという疑いが強いことも、この方針維持の決定に関係はしていると思う。

アメリカ空軍 E-3早期警戒管制機の後継にボーイング737ベースのE-7を選定

2022.04.28

アメリカ空軍は2022年4月26日、現在運用しているE-3「セントリー」早期警戒管制機の一部を、新型のE-7「ウェッジテイル」早期警戒機で置き換えると発表しました。

アメリカ空軍によると、契約締結は2023年度を予定しており、同年度の予算では試作初号機を開発し、翌2024年度に2機目の試作機を製作、そして2025年度から量産機の配備にむけた生産決定を計画しています。

乗り物ニュースより

ただ、A-50早期警戒管制機の撃墜は今年のニュースであったので、既に走り始めているこの計画の見直しは、もしかしたら今後あるかもしれない。

尤も、E-3「セントリー」早期警戒管制機の更新は必要なので、当面はこの方針を維持する可能性は高いと思っているけれども、撃墜されてしまうと困るのでなんとか守るための方策を考えるということになるのかな。

おそらく韓国は、アメリカの計画を見て自国に配備したE7早期警戒管制機の増加を決定したと思う。だけど、そもそもE7早期警戒管制機を増やす事を考えるよりも、センサーノードとして使う無人機を増やして連携させる方向の方が健全だとは思うんだよね。おそらくはそれも考えてはいるんだろうけれど。

では本邦は?というと……、うーん。あれかな、アメリカとの連携を考えればE7早期警戒管制機の導入はアリだけど、しかしそもそもバックオーダーの積み上がったE7早期警戒管制機を選ぶのは余り賢い選択肢とは言えない。そうなると、E767の近代化改修とかP1哨戒機をベースにした早期警戒管制機もどきを作るか?とか、そういうことを考えていく必要があるんだろうと思う。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    AWACSの自衛問題、そもそもAWACSの利点は「高いところから視程が稼げる」で、前に出ればそれだけ先まで見える、のですが、危険性も増す、と。
    こっちから見えるという事は、あっちからも見えるという事ですから。
    で、攻撃された(まず確実にミサイル)として、
    ・如何に早く(遠くで)発見するか
    ・如何に早く(遠くで)撃墜するか
    ・如何に避けるか
    この三点がキモかと。
    ここで効いてくるのが、東側空対空ミサイルの長射程化で、西側は一歩遅れてる感じです。
    ただ、空対空ミサイルってのは、初期段階でドカンと加速して、後は惰性で飛んでくものなので、早めに見つければなんとかなる。
    で、ミサイルのステルス化が効いてくる。
    さらには、打ち落と(ハードキル)したければ自衛用ミサイル装備か、護衛機をつけないといけない。
    ソフトキルはチャフ・フレア・ECMでしょうが、効果が完璧ではないし、回避運動も含めて空域制御を捨てないといけない可能性が高い。
    AWACSに四六時中付いて飛べる護衛機は今のところないので、
    ・AWACS自身が自衛用ミサイルを持つ
    ・無人機を侍らせる
    のどちらか、多分、無人機が有望でしょうね、いざとなれば身代わりにもなると言う意味で。
    ※そこで寄生戦闘機XP-85ゴブリンですよ!とか言ってはいけない。

    ただ、地対空も含め、AWACSを打ち落としたければ、まず攻撃側もレーダで捉えないと箸棒(戦闘機のレーダのレンジでは、AWACSに太刀打ち出来ない)なので、攻撃側もAWACS相当の強力なレーダを空に上げるか地上から狙う(地球の丸みを無視出来る距離なら)かしないとならない、というのは意外に見落とされてますね。
    つまるところ「見敵必殺・先手必勝」は変わることがなく、だったら、脆弱なAWACSではなく無人機を多数前に出してノードの数でエリアを支配する、そんな戦略を米軍は次世代として模索しているはずで……AWACS自身の管制能力は魅力なので、無くなりはしないでしょうけれど(無人機もAWACSの支配下にあって、情報収集は無人機、分析はAWACS、が理想ですね)。

    P-1やC-2の改造機は軍オタの間ではよく話題になりますが、時間の制約と費用対効果であまり得策だとは七面鳥は見てなくて、むしろ「日本の防空」に絞った場合は、海上も含めたセンサーノードをバラ撒く方がよいのではと思う次第(防空だけなら、情報処理システムが前に出る必要がない)です。
    ※この場合のセンサーノードは、海自の防空艦や、あちこちのガメラレーダ、御破算しちゃいましたがイージスアショアなんかも含む巨大ネットワークとなるのでしょう。
    ※実は、いずも型にF-35Bを載せる最大の理由がこれ、だと七面鳥は思ってます。

    • 木霊 木霊 より:

      やっぱり無人機を侍らせるパターンが優秀ですよね。
      そして海上に複数のセンサーノードをバラ撒くパターンは、バトルシップ(映画)で見た気がします。
      確かに津波検出用(名目)の浮きをバラ撒いておけば、センサーノードとしても使えそうですね。
      また、イージス・アショアは惜しいことをしました。今からでも遅くないのでは?とは思っていますが。

  2. 匿名 より:

    アメリカ海軍のNIFC-CAは艦隊防空用のE-2D 超水平線攻撃に無人AEWを検討中?開発中?
    自衛隊が小型無人ヘリ型早期警戒機による巡航ミサイル探知を計画
    成層圏プラットフォームを使った高高度無人AEWの通信に電波妨害を受けないレーザー通信を採用

    開発はしている、当然中国も

  3. 名無し より:

    日本のE-767は管制機ではないのですか?

  4. 匿名 より:

    恐らく皆感付いてるのに言わない次世代AWACSって

    第6世代戦闘機の無人随伴機の遠隔操縦士を多人数乗せる大型ステルスAWACS機、例えばb21ベースあたりが妥当な気が?

    少なくとも数機の無人随伴機を自乗機と共に操る第6世代戦闘機パイロットなんて
    どこのファンタジー ニュータイプ人ですか?だし

    これも誰も怖くて言わないけど「権力」「責任能力」以外は既に人を超越してる「えーあい」にそれさえ超越される能力、すなわち「力」軍事兵器の運用は任せられないですしね?

    結論 現状 「様子見」は仕方がない

    • 木霊 木霊 より:

      無人機の技術はかなり進んでいますから、無人機に目標を攻撃させるのは可能なのでしょう。
      ただ、何事にも想定外の事態は発生しますし、ご指摘のように判断の責任を「誰がとるのか」という問題を解決できないので、当面は地上からの判断をなくすことは難しいでしょう。ですが、地上との交信を挟むとタイムラグを生じるので戦力が落ちてしまう。痛し痒しといったところなんでしょうね。