近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。
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スペインで大雨による洪水被害発生

北欧ニュース
この記事は約9分で読めます。

スペイン、随分と大変な目にあったようだ。

スペイン東部の洪水 死者211人に スペイン首相が明らかに

2024年11月3日 17時04分

スペイン東部の洪水についてサンチェス首相は死亡した人が少なくとも211人に上ると明らかにしました。被災地では、行方不明になっている人たちの捜索活動が続いているほか、ボランティアも加わって土砂を取り除く作業などが進められています。

NHKニュースより

国内最大級の大雨に見舞われ、洪水被害が発生し、多数の死傷者が出た模様。

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大雨災害

記録的な大雨

最近の「記録的な大雨」という表現はあまり信用できないのだが、かなりの大雨であったようだ。

ウェザーニュースより

天候不順で大雨が降るということは、日本ではそれなりに経験するものなのだが。

スペインの気象当局によると、10月29日にはバレンシアの西方に位置するトゥリスの観測点で1時間最大179.4mm、24時間では618.0mmの猛烈な雨を観測。1時間雨量はスペイン国内での記録を更新しました。日本歴代1位の1時間雨量は153.0mmですので、とてつもない雨になったことがわかります。

ウェザーニュースより

1時間最大179.4mmというと、日本でもそうそう体験するような規模ではない。気象庁では以下のように定義しているのだが…。

1時間雨量(mm)予報用語人の受けるイメージ
10以上~20未満やや強い雨ザーザーと降る
20以上~30未満 強い雨やや強い雨
30以上~50未満 激しい雨バケツをひっくり返したように降る
50以上~80未満非常に激しい雨滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)
80以上~猛烈な雨息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる

実は、1時間100mmを超えるような雨は滅多に降らない。1時間100mmというのは、降った雨がそのまま溜まった場合に1時間で10cmの深さの水溜りができる。「ええ?10cmで大変なの?」と思うかもしれないが、地形の起伏によって低いところにより水が集まってしまうので、時間100mmを超えるレベルだと極めて洪水発生の可能性は高い。

日本での記録

上の記事には、「日本歴代1位の1時間雨量は153.0mm」とあるが、これは「気象庁が観測した史上1位」という意味であり、近代化した計測技術の上での記録ということになる。

だが、過去にはもっと降った記録がある。

長崎大水害「1時間雨量187㎜」梅雨に起きた観測史上最大の豪雨

2023年06月12日

1時間雨量187㎜。1982年(昭和57年)7月23日に長崎県の長与町で観測した雨量です。今も破られていない日本の観測史上1位の記録です。さらに、アメダスなど気象庁が観測した史上1位の記録・1時間雨量153㎜を観測したのも、同じ日の長崎県の長浦岳です。この大雨をもたらし、299人の犠牲者を出した長崎大水害はどのような災害だったのか。その後の観測や防災体制、情報提供のあり方を変えた未曾有の大水害を取材しました。

NHKニュースより

毎年のように「最大の記録」が出てくるので、みんな不信感を感じているとは思うが、これにはカラクリがある。実は気象台では降雨量の観測地点を増やしているので、「過去最大」というの意味は、「その観測地点において」という注釈が付く。

この記事でも、過去に観測した時間187mmという記録は、気象庁の観測地点ではなく役場に設置されていた設備で観測したもの。

1982年(昭和57年)7月23日、長与町役場に設置されていた雨量計で午後7時から午後8時までの1時間に187㎜の雨を観測しました。

NHKニュースより

だから、同じ地域で「過去最大1時間雨量153㎜」というのが気象庁の記録ということになってしまう。実際にこの地域でも大水害の翌年、昭和58年(1983年)から「記録的短時間大雨情報」の運用が始まっている。

日本で「線状降水帯」という言葉が使われ始めたのも、ごく最近の話(平成26年:2014年以降)で、観測技術が発達したからこそというわけだ。

スペインでの大雨

比較的温暖な国スペイン

さて、地理的な話を復習しておこう。

スペインの気候は、地域によって大陸性気候と地中海性気候に分けられる。大陸性気候の地域では、昼夜の寒暖差が大きく、夏は暑く、冬は寒くなる。地中海性気候の地域では、年間を通じて温暖で乾燥している。

内陸性気候のマドリードは空気が乾燥している。
夏は熱いが、しのぎやすく、湿度の少ない暑さ。
冬は風が冷たく、寒さが厳しく感じられる。快適なシーズンは春と秋頃。
四季ははっきりしていて、一年を通じて朝と夜の気温差が激しい。
年間を通じて降雨量は少ない。
地中海性気候に属し、一年を通して温暖で比較的天気がよく温暖。
春から秋にかけては過ごしやすく、夏の昼間はかなり暑くなる。
逆に冬はかなり寒く、冷え込みやすい。
典型的な地中海性気候。
アンダルシア平野は乾燥地帯で雨はあまり降らず、夏は太陽が輝き40度を越え過酷な暑さになる。

スペインの代表的な地域の気候を簡単に紹介したが、今回の被害はスペイン東部。

スペインの洪水死者95人に、近代史上最悪の被害か 農作物に打撃

2024年10月31日午前 11:47

 スペイン東部バレンシア州を中心に発生した豪雨による洪水の死者が少なくとも95人に上ったと、地元当局が30日明らかにした。スペイン近代史上最悪の洪水被害になるとみられる。

29日から大雨が続き、気象学者らによると、一部地域では8時間に1年分の降水量に達するなどの集中豪雨となった。

ロイターより

バレンシア州はアンダルシアに近く、地中海性気候で年間降雨量の少ない地域であったため、日本でもあまり見ないレベルの雨が降ったことで大きな被害を出してしまったようだ。

あっという間に川が増水

特に、洪水被害が死者を増やす結果になってしまったようだ。

スペイン東部で洪水、72人死亡 一部地域で8時間に1年分の降雨
洪水に巻き込まれた車の内部を確認する消防隊

もともと降雨量の少ない地域だった為に、河川はあっという間に溢れて氾濫した。

こうした中、災害救援サービスの対応が遅すぎたとの非難や、スペインには自然災害に対応するための十分な警報システムが整っているのか疑問視する声が上がっている。

地方政府が監督する市民保護機関は10月29日午後8時過ぎ、バレンシア市とその周辺の住民に携帯電話を通じて緊急警報を発した。この時点で、多くの地域では洪水の水量が急速に増し、すでに大惨事が起きている地域もあった。

バレンシア州の被災地近くで暮らすミレイアさんは、住民は「まったく準備ができていなかった」と述べた。

「多くの人は車内にいて、そこから出られなくなった。そのまま溺れるしかなかった」のだと、ミレイアさんは話した。

BBCより

印象的にはスペイン当局の不手際が被害の拡大を招いたような表現が使われているが、過去にそのような事例が確認されているならばともかく、唐突にこれだけの災害を受けたのであればなかなか責められない話である。

バレンシア州アルファファル町は洪水で甚大な被害を受けた場所の一つ

こんな感じの河川が氾濫して車を押し流したようだ。

国王が泥を投げつけられる騒ぎに

で、こうした中、スペイン国王が被災地を訪れた模様。

国王が被災地訪問、住民は抗議 泥投げ騒然―スペイン洪水

2024年11月03日23時28分配信

スペインのフェリペ国王は3日、大規模洪水で200人超が死亡した東部バレンシア自治州を訪れた。被害が大きい州都郊外パイポルタをレティシア王妃らと共に見舞ったが、支援の遅れに不満を募らせた被災住民が抗議。警護隊ともみ合いになり、現場は一時騒然とした。

時事通信より

洪水災害慣れしていない国だということが、よく分かる話だと思う。

パイポルタでは少なくとも60人が犠牲になった。道路が寸断され、水・食料は不足したままだ。住民らは災害で「全てを失った無力感」(公共放送)や憤りを抱え、国王一行に泥などを投げたり、シュプレヒコールを上げたりする者もいた。

 王妃の護衛は負傷、流血した。国王と王妃は顔や着衣に泥を浴びても、被災者との対話を続けた。ただ、この日計画していた別の被災地の訪問は騒動を受けて延期された。

時事通信「国王が被災地訪問、住民は抗議」より

どうして復旧も進んでいない地域に足を運んでしまうのか。

日本では菅直人が首相であった時代に、東北大震災が発生した翌日の3月12日早朝に自衛隊のヘリコプターで現地入りしてしまって批判を受けたことは記憶に新しいが、どうして混乱している現場に負荷をかけるような真似をしたのか理解できなかった。

誰であれ、そんなことをしたら批判されるのは当たり前である。

分離独立再燃のリスク

さて、スペインの話をこのブログではあまり積極的に取り上げた記憶がないのだが、よくよく考えてみると、過去にカタルーニャ自治区の独立話をピックアップしたことがあった。既に消えてしまっている記事ではあるが。

カタルーニャ自治州選挙、スペイン政府寄りの社会党が第1党に 独立派は過半数割れ

2024年5月13日

スペインのカタルーニャ自治州で12日、州議会選挙が行われ、中央政府のペドロ・サンチェス首相の流れをくむカタルーニャ社会党が第1党となった。一方、同州のスペインからの分離独立を目指す勢力は過半数割れした。

BBCより

幸いなことに、と言って良いかどうかはわからないが、現状のカタルーニャ州は分離独立派が鳴りを潜めている。が、カタルーニャ州だけではなく、バスク州やアンダルシア州なども分離独立の動きは過去に何度も再燃していて、今回の洪水被害も上手いこと着地点を見いだせないと、分離独立派の力を増しかねない。

スペイン | 国際テロリズム要覧について | 公安調査庁
テロ組織スペインの概要及び最近の動向を紹介します。

元より地理的に中東からの影響も大きな国であるので、そちら方面からの影響も少なくない。幸いにしてスペイン経済は比較的好調らしいので、余裕のあるうちに迅速に対応することが望まれる。

まあ、日本にいてスペインのことを心配したところで始まらないのだが、せめて被害にあわれた方々にはお悔やみを申し上げたいところである。

追記

あー、良くないなぁ。

スペイン 洪水発生から1週間 捜索続く 200人以上が死亡

2024年11月5日 6時19分

200人以上が死亡したスペイン東部の洪水は5日で発生から1週間です。被災地は今も浸水している場所も多く、行方不明者の捜索活動は難航しています。

~~略~~

被災地は道路や鉄道への被害で交通網が寸断され、支援が十分に行き渡っていない地域もあり、住民の間からはスペイン政府やバレンシア州当局の対応に不満や怒りの声もあがっています。

NHKニュースより

国王や首相が相次いで現地入りしたのに、当局の対応が遅れていると。

十全な支援をしていたとしても被災地の支援に不満が出るのは不思議ではなのだけれど、道路などが瓦礫で寸断されていることもあって、対応が遅れがちのようだね。スペイン政府はどれだけ誠実に対応できるのか?説明できるのか?が、重要になってくると思う。

日本のように災害に柔軟に対応して救助できるスキルを積んだ人々が多くいる国でも、能登半島地震の復旧には苦戦しているわけで。道路が寸断されているというのは、救助する際にもかなり足を引っ張ることなのだろう。

追記2

あらあら。

スペイン洪水、被災地企業の被害額は100億ユーロ超か

2024年11月6日午前 8:04 

スペイン東部を襲った洪水で企業の被害額は100億ユーロを超える可能性があり、被災地域向けの銀行融資額は200億ユーロ(218億2000万ドル)前後相当に上ると地元の企業団体やスペイン銀行(中央銀行)幹部が5日、明らかにした。

洪水に見舞われたのは主に東部バレンシア州で、これまでに少なくとも217人の死亡が確認されたほか、安否不明者が依然残されている。

スペイン政府は5日、被災者支援のため約106億ユーロの予算を計上した。

ロイターより

被害総額100億ユーロ(1兆6,000億円程度)とはまた大きな被害になったね。スペイン政府はかなりしっかり対応しないと。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    災害馴れしてない国は大変だなぁ……としか言えませんね。
    災害馴れしてるってのもたいがいなんですが……

    で、「パラシュート降下」大好きな方々は、スペイン軍の対応遅れはどう見てるんでしょうね?

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      でも、日本国内でも「スペイン国王、良く行った」「日本も見習え」とかいう人がいるのだから、案外馬鹿に出来ない行動だったかも知れません。
      リスクにリターンが見合っているとは思えないのですが、そこはスペインならではの事情があるのかも知れませんね。

  2. 山童 より:

    ええと……昔スペインで米国の西部開拓時代のゴーストタウンを観て驚いた事があって、
    実は70年代のマカロニ・ウエスタンで用いられていた屋外スタジオだった。観光地として利用されて後に廃棄との事でしたが、
    廃墟になって十年以上しても風化してない。
    それだけスペインの内陸部は乾燥してるんですね。湿度あらば撮影用の建物が何十年と保つ訳が無い。
    なので…スペインっても色々ある…は解るものの「洪水」にピンと来ないんですよ。
    まぁサハラ砂漠やタクラカマンサハラ砂漠、米国のモハーヴァエ砂漠でも、時に集中豪雨からの洪水が発生すると言いますから、そういうものなのかもしれませんが。
    しかし……バスクだのカタロニアだの中央政府と歴史的にアレコレある地域が存在するのはわかるすけど。
    国王陛下に泥を投げる? ふつう。
    日本じゃ震災に天皇時代の上皇陛下がお見舞いに参られた時に、皆が涙していたけらど。上皇陛下ほどではないにしても、フェリペ国王もそんなに悪い国家元首とも思えず、なんでそんな事するかね??

    • 木霊 木霊 より:

      スペイン国王のスペイン国内での立ち位置が象徴される話だと。
      日本では先ずこの時期に現地入りさせるなんてことはありませんし、山本太郎じゃ無いけど「何しに来たのか」とキレられるのも仕方がないのかと。
      フェリペ国王が良いとか悪いとか以前に、被災して気が立っているタイミングで、救助隊じゃない人が見学に来るというのは、国民の心を本当に分かっているのか?という気がしますよ。

      • 山童 より:

        ああ、たしかに上皇陛下はそういう部分は大いに気をお使い下さってましたね。なるほど。それは言えるかも。