良かったのか悪かったのか。
知床半島先端部の携帯電話基地局整備 当初計画は中止
10月12日 06時12分
知床半島の先端部で国などが進めている携帯電話の基地局の整備計画について、地元自治体から工事の見直しを求める意見が出たことなどから、当初の計画は中止されることになりました。
NHKニュースより
この計画、大変残念なことに携帯電話の基地局を維持する為に、太陽光パネルを敷設する予定だったんだよね。
携帯電話基地局は必要ですか?
約7000平方m
毎日新聞に寄れば、アンテナ設備を稼働させるために必要な電源は太陽光発電に依存し、パネル設置面積は約7000平方mなのだとか。
半島先端の整備は、知床岬灯台にアンテナを設置し、約7000平方メートルに電源となる太陽光パネルを敷設する計画。自然保護団体や地元町民などが必要性に疑義を呈し、関係省庁などに再考を求めていた。また、工事予定地の100メートル以内のエリアにかつてオジロワシが繁殖に使っていた営巣木が見つかり、知床世界自然遺産地域科学委員会がオジロワシへの影響調査を求めていた。
毎日新聞より
概ね、83.7m×83.7mの広さ(2118坪)を太陽光パネルで敷き詰める計算になるので、同じ広さで調べたら首相官邸や福岡ドームが同じ敷地だった。
まあまあの広さが首相官邸や福岡ドームといわれてもピンと来ない人の方が多いと思う。目安としては都心の小学校の敷地面積くらいのイメージだ(省令で児童数721人以上の場合、敷地面積は7200平方m程度が推奨されている)。
安全性確保の為に基地は必要?
周辺を航行する船舶の安全確保には、通信設備の設置が必要で、国は漁業者などの安全確保の為に基地局設置を進めてきた訳なんだけど。
国などは、漁業者などの安全確保のために知床半島の先端部に携帯電話の基地局と太陽光パネルを整備する計画を進めてきました。
しかし、環境保全策などについて助言を行う「知床世界自然遺産地域科学委員会」は、自然環境への影響調査が不十分だとして来年8月まで継続的に調査するよう求めていて、現在、着工は見合わせとなっています。
NHKニュース「知床半島先端部の携帯電話基地局整備」より
この話も少々怪しい。
実際のところ、海上における遭難及び安全の世界的制度というのが定められていて、緊急通信するための装置を搭載すべしということになっている。

GMDSSを装備しなければならない船舶は、国際航海に従事する総トン数300トン以上の貨物船及びすべての旅客船ということになっている。
この安全確保義務は漁業者には義務化されていないんだけれども。
義務化しようという流れになってきている。携帯電話使えるようにしようという流れには、少々疑問を感じるよね。
羅臼町長は「安全のためには必要」と主張しているが、この主張もピンと来ない。
だって、知床遊覧船沈没事故(2022年:令和4年4月23日)は事務所の無線用アンテナの故障が問題視されていたけれど、別の場所から無線通信を行って、交信できていた(注:本来遊覧船に設置すべき船舶無線は免許も受けていなかったので、アマチュア無線を違法に使っていたが)。
携帯電話も部分的に使えたらしいので、船長が乗客から借りた携帯電話で118番通報をしている。つまり、事故と携帯電話通話環境の有無との関係性は無かったのではないかと思う。
僕の邪推ではあるが、単に観光客と一部の漁業関係者が「携帯電話が使えないなんて!」と文句を言っているだけではないのかと。
電話が通じなかった?
一方で、通話が出来なかった事を問題視する報道も見かける。
沈没の遊覧船「携帯通じず」
知床半島と周辺海域は普段は人が足を踏み入れないエリアも多く、携帯電話が通じる場所は限られている。通信事業者のエリアマップによると、最もエリアが広いNTTドコモでも半島の先端部分は電波が届かない。2022年4月に行方不明の6人を含め、乗客乗員26人が死亡した知床岬遊覧の観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没事故の際に使っていた通信手段は通話エリアが狭い携帯電話で、機能しなかったとされている。
地元からは、携帯電話が通じれば、沿岸の避難港への誘導や早期の救助活動が可能だったのではないかという指摘もあった。ある関係者は「命は助けられなくとも、あんなにも行方不明の方が出る事態を軽減できたはずだ」と語る。
周辺海域では小型船が漁をしており、漁業者にとっても携帯電話はメッセージのやり取りもできる手軽な連絡手段として重要視されている。事故を受け、知床半島の北側を占める斜里町と南側の羅臼町は、自然環境に配慮した上での基地局の設置を国などに強く要望してきた。
nippon.comより
この話は上に紹介したようにどうにも嘘くさい。
事実として、アマチュア無線であっても通信が出来ていたことや、部分的に携帯電話が通じたという実績がある以上、通話が出来たら早期救助活動が可能だったというのは理屈に合わない。
知床岬の携帯電話基地局、総事業費9億円 環境相「やむを得ず許可」
2024年6月5日 19時00分
世界自然遺産・知床の知床岬で計画されている携帯電話基地局設置について、総事業費は約9億円で、このうち約4億4千万円が国の補助金でまかなわれることがわかった。4日の衆議院環境委員会で、松木謙公委員(立憲)の質問に総務省が答えた。具体的に予算規模が示されたのは初めて。
朝日新聞より
多額の費用がかかることも既に判明しているが、自然環境への影響調査や安全対策が講じられているとは言い難い状況も分かってきている。
正直、自然保護団体からの反対意見というのも、胡散臭さを感じているので、どちらの言い分を採用すべきかは悩ましいところだが。


本当に必要なのかは、なかなか悩ましいところ。
船上基地局も検討しては
そもそも、船で使うのであれば船上基地局という選択肢もあるのでは。
海上から電波を発射、沿岸エリアを通信でカバーする「船上基地局」とは
2024.03.08
「船上基地局」とは、船舶の上に携帯電話の基地局を積み、海上から陸上にアンテナを向けて電波を送信して沿岸のエリアをカバーする通信技術や設備のこと。地上以外の場所から通信をカバーする非地上系ネットワークシステムの1つであり、最大で停泊場所から半径数キロメートルのエリアをカバーできる。
船上基地局が使われるのは主に大規模な災害の発生時だ。陸上にある通常の基地局が被災して停波した場合、通信会社は車両型の移動基地局車や可搬型の基地局などを使って応急的な復旧を目指すことが多い。ただ被災地への道路が寸断されるなどして、仮復旧にも時間を要する場合もある。停波エリアが沿岸部であれば、船上基地局を使うことで車両型や可搬型よりも早期に仮復旧できる可能性がある。
日経XTECHより
能登半島地震の時に初めて運用されたとのことで、ノウハウも今のところ少ないし、現状では「災害発生時」という制約がある。
ただし、常設の携帯電話基地局を設置することが本当に望ましいのか?というような疑問が呈されている以上は、別の方法も検討すべきだと思う。船上基地局を使うとそれなりのコストがかかるので、そのコストを誰が負担するのか?という話にはなりそうだけれども、ユーザーに負担して貰えばイインジャナイかな。
だって、携帯電話の基地局の設置を求めるって、特別に発生する費用は自分たちでは負担する気ないんでしょう?おかしな話である。恐らくは、一般的な携帯電話の使用料金は支払うけれど、それ以上は負担する気が無いということなんだと思うしね。
そういう観点から考えていくと、この話は随分と胡散臭く感じる。まあ、必要であれば検討すべきだと思うんだけど、「必要だ」と言っている理由がイマイチ良く分からないという話なのだ。

北海道新聞などは推進派のようなのだが、かなり詳しく言及していて参考にはなる。
もう、電源地上に置くのがダメなら、SMR(小型モジュール式原子炉)を開発して設置したらどうですかね?結構小型でもいけると思うんだけど。
コメント
こんにちは。
>電源地上に置くのがダメなら、SMR(小型モジュール式原子炉)を開発して設置したらどうですかね?
そこでメガフロートですよ!(違
流氷来る海にメガフロートは悪手だから、じゃあ、無人潜水SMRモジュールで。
冷却水の心配ないし。
……え?位置決め用スラスターの推力が過大?前と上に変なハッチ?
やだなあ、戦略/攻撃両用の原子力水中ドローンなんて、そんなわけ無いじゃ無いですか……
こんにちは。
もちろん、SMR開発のために複数のテストケースを離島に配置しなければ。
それが、潜水タイプでも(違