コメントを頂いてからニュースを確認したのだが、確かに大事になりそうである。
イスラエル、空爆でヒズボラ指導者ナスララ師殺害 イランにも打撃
2024年9月28日午後 10:43
イスラエル軍は28日、レバノンのイスラム教シーア派の民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師を殺害したと発表した。レバノンの首都ベイルート南郊にあるヒズボラの本部を27日に空爆した。
ヒズボラもナスララ師の死亡を確認した。ヒズボラと後ろ盾であるイランにとって大きな打撃となる。
ロイターより
中東のニュースは、僕の中では大体「仁義なき戦い」で脳内再生されるのだが、現実はもっと悲惨だね。
戦争はもはや止められないか
計画的犯行
さておき、テロ組織ヒズボラの最高指導者であったナスララは殺害されてしまった。
ヒズボラの最高指導者ナスララ師殺害 軍事的な緊張高まる
2024年9月29日 4時39分
イスラエル軍はレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者、ナスララ師を空爆で殺害しました。
~~略~~
軍の報道官は「ナスララがヒズボラの本部でさらなる攻撃の指揮をしていたところをイスラエル軍の精密な攻撃で殺害した」と述べました。
AP通信は専門家の分析としてイスラエル軍はこの空爆で地下施設の攻撃に使われる「バンカーバスター」と呼ばれる、厚いコンクリートなどを突き破って爆発を起こす特殊な爆弾を使った可能性を報じています。
NHKニュースより
他のニュースソースで確認できていないのだが、NHKニュースが伝えるところによると、ナスララはバンカーバスターを用いた精密爆撃で殺害されたようだ。(注:追記していますが、精密爆撃だったかどうかはちょっと怪しいようです)
爆撃されたのはレバノンの首都ベイルート南郊。
イスラエル軍は27日にレバノンの首都ベイルート南郊への空爆でナスララ師を殺害した。29日、この攻撃で同師と共に側近幹部を含む20人以上の「テロリスト」が死亡したと発表。攻勢を緩めず、同日もベイルート南郊などへの空爆を続けた。
時事通信「レバノン境界で「小規模作戦」実施か」より
この話が本当であれば、ナスララの動向はイスラエル側に筒抜けであったということであり、通信を封じていた状態で逐一イスラエル側に情報が入っていたことを意味する。
ポケベル爆破から、一連の作戦は入念に練られたモノであった可能性が高く、イスラエル側はこの作戦の成功で沸き立っているらしい。
支持率回復したネタニヤフ氏
当然、こうした一連の作戦を成功させたことで、ネタニヤフ氏の支持率も上がる。
ネタニヤフ氏政党への支持が回復、イスラエル世論調査
2024年9月16日午後 2:31
イスラエルのネタニヤフ首相率いる右派政党リクードへの支持がイスラム組織ハマスによる昨年10月7日の奇襲攻撃以降、徐々に回復していることが13日発表の世論調査で分かった。
ロイターより
この調査はポケベル作戦より前の調査であり、去年10月7日以降の傾向を示すモノで、9月13日発表の世論調査の結果ということになっている。
パレスチナ側からテロ組織ハマスがミサイル攻撃をしたのが2023年10月7日で、これに対してネタニヤフ氏はイスラエル軍を動員して大規模攻勢をかけた。それこそ、ガザ地区をすり潰す勢いで、である。
西側諸国も、最初はイスラエルに同情的であったのだけれども、一転して批判するような論調が増え始めた。
アメリカは相変わらずイスラエルを支持する姿勢を示していたのだけれど、興味深かったのはインドがイスラエル側を支持していた点だ。
こうして、西側もグローバルサウスと呼ばれる国々も、足並みを揃えられない状態でイスラエル戦争は激化していく。一方的な展開が続いたように感じていたのだけれど、イスラエル周辺国はイスラエルに批判的な立ち位置でもあって、現地の温度は周辺国との差があったのだろうと思う。
イスラエルの快進撃に、イスラエル国内におけるネタニヤフ氏の支持率は上がっているのだとか。この報道、どこまで信用して良いのかは不明だが。
中東の構図
さて、前回も引用したのだが、中東の構図を整理しておく。


今回の騒ぎを宗教対立として整理すると、理解を誤る可能性はあるのだけれど、結びつきとして見るのは理解し易いので引用している。
イランを中心としたシーア派のグループは、イラク、イエメン、ヨルダン、シリア、にそれぞれ点在し、レバノンもそのウチの1つだとされている。
ややこしいのは、イランは国家的に動いているのだが革命防衛隊が主軸になっていて、イラクの実行部隊は武装組織「カタイブ・ヒズボラ」が、イエメンではフーシ派(イスラム教シーア派)が、レバノンではヒズボラが積極的に動いている。構図的に国家対立と簡単に割り切れないんだよね。
更に、シーア派と対立するスンニ派を持ち出すことがあるが、イスラエルは実はユダヤ教が主流でイスラム教は17%程度である。では、ユダヤ教とイスラム教の対立かというと、それも違う。ユダヤ人ヘイトか?それもちょっと違うのだ。シオニズム運動も無関係とは言わないが、恐らくは問題の主軸にはないだろう。
頭の中で「仁義なき戦い」が再生されてしまう理由は、その辺りにある。中東の話は概ね部族間対立(グループ間対立)という風に理解するのが分かり易く、国家という枠では動いていない所が多いのだ。
尤も、対外的には国家という枠組みは使っているけれども。
中枢が麻痺
そもそもイランとしてもイスラエルとの国家対立は避けたいと思っている節があって、レバノンは随分と前のめりだったけれどもやはり国家対立は避けていた。
ヒズボラまひ状態でイスラエルは勝利ムード-憂慮広がるレバノン
2024年9月30日 9:47
昨年10月7日のイスラム組織ハマスによる未曾有の攻撃に精神的にも大きなダメージを受けたイスラエルは、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラを攻撃し指導者ナスララ師を殺害したことで、勝ち誇ったムードにある。
29日付のイスラエル各紙は1面で「新たな中東」を宣言した。ネタニヤフ首相はナスララ師の死によって、「イランの悪の枢軸の主エンジン」を打破したと語った。悪の枢軸とはヒズボラのほか、パレスチナ自治区ガザのハマスやイエメンの親イラン武装組織フーシ派、シリアやイラクの新イラン武装勢力のネットワークを指す。
Bloombergより
そういったイスラエル抵抗勢力の主軸の1つが破壊されてしまった感じの状況にあって、直ぐに動ける人材がいなければ反イスラエルの勢いは一時的に削がれる可能性はありそうだ。
イスラエルへの報復に、一番に声を上げていた人物だからね。
イラン、イスラエルのヒズボラ本部空爆を非難 「レッドライン超える」
2024年9月28日午前 6:36
イラン最高指導者のラリジャニ顧問は27日、イスラエル軍がレバノンの親イラン派武装組織ヒズボラの本部を空爆したことを受け、イスラエルがイランの「レッドライン(超えてはならない一線)」を超えており、状況は深刻という認識を示した。
イスラエル軍によると、攻撃の標的はヒズボラの指導者ナスララ師だったという。
ロイターより
イランも声を挙げたけれども、じゃあ何かするかというと直ぐには動けないのではないか?というように思える。
とはいえ、「イスラエルを許すな」という温度感は高いように思えるので、動き出したら止められない流れになるだろう。
全面戦争の可能性
一方で、イスラエル側はコレを機に更に作戦を進める気であるように思われる。
こうした中、ナスララ師の殺害についてイスラエルのネタニヤフ首相が声明を発表し「イスラエル北部から避難している住民の安全な帰還と、この地域の力の均衡を変えるという目標を達成するためにはナスララの排除が必要条件だ」として正当性を強調した上で「歴史的な転換点となり得るところにいる」と述べ成果を誇示しました。
また、パレスチナのイスラム組織ハマスと連帯するヒズボラに打撃を与えることが、ガザ地区でハマスに拘束されている人質の解放につながるという考えも示し「われわれは大きな成果を上げたが、任務はまだ完了していない」と述べ、攻勢を強める構えを示しました。
NHKニュースより
どこまでやるのかは不明だが……、テロ組織ヒスボラを更に追い込む気であることは確実だと思う。ただ、それも時間稼ぎにしかならないと思うんだよね。
中東で全面戦争の可能性、和解の機会も存在=バイデン氏
2024年9月26日午前 2:20
バイデン米大統領は25日、中東で全面戦争が起こる可能性はあるとしつつも、イスラエルとパレスチナ地区ガザでの紛争およびレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘を解決する可能性はあるという認識を示した。
ロイターより
アメリカは全面戦争の可能性に言及し、何らかの動きをする可能性を示唆しているが、イスラエルへの働きかけをしたところで、ブレーキにはならないと思う。
また、イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」が必要とし、この点においてはイスラエルのネタニヤフ首相と見解が異なると述べた。
ロイター「中東で全面戦争の可能性」より
イスラエル首相のネタニヤフ氏が排除されないウチは、この方針は続けられそうだしね。
そうすると、中東戦争に突入という話はかなり現実的な状況になったと、そのように理解すべきなのだろう。
追記
随分お金を使って爆撃したようだね。
「前例ない爆発」に衝撃 住宅地が無残、地面に巨大穴―レバノン
2024年09月28日07時54分配信
耳をつんざく無数の爆音に、黒煙が上空を覆う―。イスラエル軍が27日、イスラム教シーア派組織ヒズボラの指導部を狙い、再びレバノンで大規模空爆を行った。現場に駆け付けた中東の衛星テレビ局アルジャジーラの記者は「首都ベイルートでは前例のない爆発」で、各地でパニックが広がっていると伝えた。
時事通信より
前例のない規模で爆撃したらしく、バンカーバスターを80発以上使ったとか。

せ、精密爆撃?!
イスラエル軍公式発表の動画で確認できる戦闘機は8機なので各機7発搭載ならば56発になりますが、「80発以上」が事実ならばさらに多くの戦闘機が作戦に参加していることになります。
~~略~~
なお公式発表にはまだありませんが、一部のイスラエルのメディアによると2000ポンド(約900キログラム)のBLU-109貫通爆弾だけでなく、4400ポンド(約2000キログラム)のGBU-28貫通爆弾まで使われたという未確認情報が流れています。またアメリカで開発されたばかりの5000ポンド(約2267kg)のGBU-72貫通爆弾が使われたという根拠の無い憶測も流れています。ただし今のところはこれらの使用の証拠は無く、確認されているのはBLU-109だけです。
F-15戦闘機に2000ポンド爆弾7発は1機だけで6トン以上の爆弾を運搬していることになり滅多に見ることが無い搭載形態です。第二次世界大戦でのB-29爆撃機が爆弾4.5トン~9トン搭載(作戦距離によって搭載可能量が変動)だったのに比べても遜色がなく、ジェット戦闘機のエンジン出力の強大さと、そして爆撃の苛烈さが分かります。
Yahooニュースより
この話が本当であれば、絨毯爆撃だよねぇ。
イスラエルとしては余程この作戦を成功させ、ナスララを含めたヒズボラ幹部を一網打尽にしたかったのだと思われる。
イスラエル軍は、別の最高幹部アリ・カラキ氏も殺害したとしている。軍は声明で「ヒズボラの指揮官らが本部で活動し、イスラエル国民に対するテロを画策する中で攻撃を実施した」と発表した。地下にいたナスララ師を狙って本部を空爆し、アリ・カラキ氏のほか他の司令官も殺害したという。
イスラエル軍は27日、ヒズボラ本部を空爆したと発表していた。
ロイターより
指令系統は随分とやられたみたいだ。
コメント
こんにちは。
首を潰しても、元々テロ組織は縦はともかく横の繋がりが希薄な印象なんで、むしろ統制取れなくなって癌細胞がとっちらかる結果になるかも……ってのを恐れる七面鳥です。
テロは、哀しいことに多分無くせない。
コントロールすることしか出来ない。
でもまあ、方法論として、全くコントロールを受け付けないトップを消して、コントロール可能なのとすげ替えるってのはアリなのかも。
コントロール効くといいんですけどね……
こんにちは。
僕の読みでは暫くは沈静化するのではないかなと。ただ、やられてばかりでは舐められますから何かしらやり返す可能性が高い。
それの連鎖は起きるのでしょう。
そして、和解はむずかしいでしょうねぇ。