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日鉄、韓国ポスコの全株式売却とその理由

安全保障
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なかなか露骨だね。

日鉄、韓国ポスコの全株式売却 資本効率向上へ、提携は継続

2024年09月24日18時53分配信

日本製鉄は24日、保有する韓国ポスコホールディングスの全株式を売却すると発表した。これまで進めてきた政策保有株売却の一環で、資本効率を向上させるのが狙い。

時事通信より

韓国ポスコといえば、八幡製鉄、富士製鉄(この2社は後に合併し新日本製鐵→現:日本製鉄)と日本鋼管(現JFEスチール)の3社から技術導入を受け、新日鐵住金(現:日本製鉄)から技術を盗んだことでも有名である。

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関係を清算しろ

USスチール買収

日本製鉄だが、現在、大揉めに揉めているのがUSスチール買収話である。

日鉄 USスチール買収後も雇用守ること強調 従業員への文書公表

2024年9月24日 11時36分

日本製鉄はアメリカの大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収に向けて、現地の従業員に宛てた文書を公表し、生産や雇用を守ることを改めて強調したうえで、買収に反対する労働組合の執行部に対し、協議に応じるよう求めました。

NHKニュースより

この話はなかなか難しい話で、アメリカにとってUSスチールは大切な国産技術のウチの1つであって、外資が入るのは避けたいという思惑がある。

しかし、USスチールは支那から安い鋼板が入ってくるという事情もあって、営業状態は宜しくない。

USスチール黒字化 1―3月最終 単価改善が寄与

2024年5月8日

米高炉大手のUSスチールが2日発表した1―3月決算によると、純利益は前年同期比14・1%減の1億7100万ドル(259億円、昨年10―12月は8000万ドルの損失)と2四半期ぶりに黒字化した。

産業新聞より

したがって、USスチールとしては営業の梃子入れはどうしても必要である。そういう意味で日本製鉄からの投資と技術は垂涎の的というわけだ。

日本製鉄側の事情

一方、日本製鉄としてはやっぱり支那の安値攻勢にかなり苦戦しているのは事実である。

これに対して日本製鉄は労働組合の執行部が不正確な情報を流しているとしてUSスチールの従業員に宛てた文書を公表しました。

この中では、 ▽高炉の操業を長期的に維持し、従業員の雇用や福利厚生を守ること ▽安価な輸入品に対するUSスチールの通商に関する対抗措置には干渉しないこと さらに ▽買収がアメリカの鉄鋼業界全体の競争力を高め、国家安全保障の強化につながることを改めて強調しています。

また、労働組合の執行部が日本製鉄との交渉に全く応じず、会社側の提案を真剣に検討していないと指摘したうえで、協議に応じるよう求めました。

NHKニュースより

ここまでUSスチール側に良い条件を提示してでも、アメリカ国内での鉄の販売を実現することができれば、かなりの利益が期待できる。支那の鉄製品に押されてアメリカが関税をかけている点にも、かなり苦戦しているのだけれど。

こうした破格の条件提示している理由は、引用部分の最後の一節、「労働組合の執行部が日本製鉄との交渉に全く応じず」の部分に影響してくる。正直コレはかなり政治的な話で、現在行われている大統領選挙において、特にトランプ氏側がUSスチール売却に強硬に反対している。まあ、バイデン氏も反対していたし、その後釜であるカマラ・ハリス氏も反対の立場ではあるんだけどね。

つまり、アメリカの国益にとって、USスチール売却がプラスになるか否か?という話は、安全保障面から見るとプラスにならないという判断もあるわけだ。

そしてポスコとの関係を清算

と、そこへ来て冒頭のニュースである。

売却時期は市場動向などを見極めた上で判断する。売却額は約1150億円程度になる見通し。株式売却後も技術交流などの提携関係は維持する。

時事通信「日鉄、韓国ポスコの全株式売却」より

ポスコなどと技術提携したところで、日本製鉄にとってメリットは殆どない。ポスコから優れた技術を得られる可能性はかなり薄いからだ。

両社は2000年以降、戦略的提携契約を締結し、株式の相互追加取得や技術交流を進めてきた。一方で日鉄は、06年に5.04%保有していた株式を、16年には3.42%まで減らしていた。同社は今回の売却による25年3月期業績への影響を未確定としている。

時事通信「日鉄、韓国ポスコの全株式売却」より

実際に、関係清算のために株式保有率をどんどん減らしている。元々そういう計画だったのだろうが、今回のことで丁度よかったという判断なのかも知れない。

日韓協力「象徴」に節目 ポスコと資本関係解消へ―日本製鉄

2024年09月25日07時05分配信

日本製鉄は、四半世紀にわたる韓国ポスコホールディングスとの資本関係を解消する。ポスコは1973年6月に韓国南東部で浦項製鉄所を稼働。「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を鋼材の供給で支えた。日本製鉄は前身企業が同製鉄所の立ち上げを支援、その後は株式の相互保有にも発展させ、日韓経済協力の象徴とされてきた。脱炭素などで協力は続けるが、大きな節目となる。

~~略~~

しかし、12年には「方向性電磁鋼板」の製造技術を不正に取得したとして、新日鉄がポスコを提訴。15年に和解するまでぎくしゃくした関係が続いた。その後、16年には資本効率向上を理由にポスコ株の一部を売却したが、全株式を手放すことになった。

時事通信より

この記事なんかも、日韓協力の象徴みたいな記事になっているが、実態は違う。殆どが技術の持ち出しで、更には製造技術を盗まれて訴訟にまで発展したのである。

この訴訟も、「日韓関係の改善」を盾に随分と日本側が譲歩したと聞くが、政治家にとっても業腹な話らしく、そういう意味でも「日韓協力」は終わってイイという判断になったのだろう。

宝山鋼鉄との合弁事業を解消

おそらくもう1つ関係する事案だと思われるのがこちら。

日本製鉄、中国宝山鋼鉄との合弁事業を解消-出資分全て売却へ

2024年7月23日 17:01 JST 更新日時 2024年7月23日 20:59 JST

日本製鉄は中国の鉄鋼メーカー宝山鋼鉄との合弁事業を解消すると発表した。保有する宝鋼日鉄自動車鋼板株の50%すべてを宝山に売却する。

発表によると、8月29日に経営期間の満了期日を迎える中、関係当局の承認が得られることなどを条件に合弁を解消する。同合弁は、中長期的な成長が見込まれる同国の高級自動車鋼板需要に応えることを目的に2004年に設立されていた。

Bloombergより

こちらの話は随分と分かりやすくて、Bloombergにもこんなことが書かれている。

日鉄は米USスチールの買収を進めているが、民主党のシェロッド・ブラウン上院議員がバイデン大統領に宛てた書簡で、日鉄と中国の鉄鋼業界との関係について「徹底的に調査することが不可欠」と主張していた。

Bloomberg「日本製鉄、中国宝山鋼鉄との合弁事業を解消」より

日本製鉄は否定しているが、間違いなくUSスチール絡みの案件だろう。

時事通信などは面白い評価の仕方をしているが、こちらはちょっと怪しい。

日鉄は世界戦略で、成長が見込める米国やインドへの投資を進めている。特に米国ではUSスチールの買収を目指すなど大きく経営資源を割いている。半面、中国では電気自動車(EV)の市場拡大に乗り遅れた日系メーカーが苦戦していることを受け、7月には中国鉄鋼最大手・宝武鋼鉄集団傘下の宝山鋼鉄との合弁事業を解消すると発表した。

時事通信「日鉄、韓国ポスコの全株式売却」より

要するに、宝山鉄鋼の方もポスコの方も、日本製鉄の資金繰りのために「仕方なく売却」をしたという風に分析しているのだ。

もちろんそういう側面があるのは事実だが。

関係弱体化の懸念

さて、こうしたニュースが飛び交う中、韓国ではこんな風にこのニュースが紹介されている。

日本製鉄ポスコホールディングス持分全量売却・・・「協力関係弱体化懸念」

2024.9.24

日本製鉄が自社が保有するポスコホールディングス株式を全量売却する。これに2000年から続いた両社間の協力関係が弱まる可能性があるという分析が出ている。日本製鉄は「実弾」の準備を通じて今後米国のUSスチール買収に備える見通しだ。

24日、日本製鉄は「戦略的提携契約などに立ち寄って取得・保有してきたポスコホールディングス株式289万4712株を資本効率向上のために売却することにした」と明らかにした。

Daumより

へー、2000年から続いた、ねぇ。実際は、ポスコの設立された1968年から四半世紀にわたって関わってきたんだけれども、そういうことは書きたくないようだ。

日本製鉄とポスコホールディングスは2000年8月に戦略的提携契約を結んだ。 2006年10月には株式の相互追加取得に関する契約を結び、提携関係をより一層深くした。これにポスコホールディングスも日本製鉄の持分1.7%を保有している。

Daumより

2000年というのは、どうやら戦略的提携契約を結んだ年のことのようだ。だが、1990年代に新日鉄を退職した技術者をヘッドハンティングしたのが同時期で、2004年頃からは急激にポスコの技術が向上していく。

要は、「戦略的提携」などと言いつつ、産業スパイに技術が抜かれたにすぎない話である。

ただし、業界ではポスコも今後の持分売却に乗り出すなど、両社間の協力関係が弱くなるしかないと見ている。最近、鉄鋼輸出障壁が高まり、協力に対する重要性が減ったためだ。

Daumより

間違いなく、関係清算に動いているんだよ!言わせんな。

まあ、そこまでやっても日本製鉄がUSスチールの買収に成功するかは疑わしいが、アメリカとしては身ぎれいな相手と交渉するということなのだろうから、資金の獲得よりも、スパイ対策の方が重視されていることは確実だろう。

アメリカもけっして真っ当な相手とは言いがたいのだけれど、支那や韓国を相手にするよりはマシである。

コメント

  1. 匿名 より:

    韓国は半導体、造船、液晶パネルなど日本から導入した技術をもとに産業を発展させてきた反面、新規研究開発の土台が無いのでいずれ価格で中国勢に追い付かれて行き詰まるでしょう

    • 木霊 木霊 より:

      韓国は、基礎研究に深みがないので、直ぐに研究に行き詰まってしまうんですよね。
      半導体や液晶パネルは思い切った投資によって、非常に大きな産業に成長しましたが……。
      韓国にできることは支那や台湾がもっと巧くやれちゃうわけでして。

  2. 匿名 より:

    教えない、助けない、関わらない。
    隣国との正しい距離感です。