救い難いニュースである。
外国人のタクシー・バス運転手増へ、2種免許20言語で受験可能に…ドライバー不足深刻化
2024/09/16 09:50
全国の警察で今月から、タクシーやバスの運転に必要な2種免許の学科試験を20言語で受験できるようになった。ドライバー不足が深刻化する中、外国人の運転手を増やす狙いがある。
讀賣新聞より
タクシーやバス運転手というのは、コミュニケーション能力が問われる職種であるハズなのに、何故、20言語対応の受験を増やしたのか。
おかしくない?
多言語対応と外国人材登用は矛盾した方針
自民党のダメなところは、業界団体と癒着しておかしな主張を政策に織り込んでしまうところである。
政府は3月、外国人労働者を中長期的に受け入れる在留資格「特定技能」の対象に「自動車運送業」を加える方針を閣議決定した。2028年度までの5年間でタクシーやバス、トラックの運転手を最大2万4500人受け入れるという。
讀賣新聞「外国人のタクシー・バス運転手増へ」より
確かに、タクシー業界やバス業界、トラック業界の何れもドライバー不足に苦しんでいる。
だけど、最大2万4,500人の外国人材を受け入れて、問題文に書かれている日本語すら理解できない状況で免許を出そうというのは、幾ら何でも無理がある。
国土交通省によると、タクシー運転手は22年度末時点で約24万人と、10年度末時点の約40万人から4割減った。地域住民や観光客の移動の足が不足する中、警察庁は外国人が2種免許を取得しやすい環境が必要と判断。日本語以外の言葉でも受験できるよう、国内での外国人の居住実態などを踏まえ、アジアを中心に20言語を選んだ。7月末までに全国で992人が外国語で受験し、うち408人が合格したという。
讀賣新聞「外国人のタクシー・バス運転手増へ」より
そして、やらかしているのは国交省か……。
2種免許とは何なのか
そもそもこの2種免許、1種免許とは区別されている理由は、以下のように説明されている。
道路運送法に規定する旅客自動車運送事業の用に供される自動車の運転者に対し、以下の 観点から、第二種免許取得を求めている。
○ 一般的に営利を目的としており、営業効率を上げようとするなどのため、1日の走行距離や輸送人員が多くなること
○ 乗客の指示による急な方向転換等への対応、乗客の動静確認及び安全確保等のため、 通常より高度の運転技能や知識が必要
○ 旅客自動車による事故は多くの人命を損ないかねないこと
→ 運転経験や取得要件について第一種免許よりも厳格な要件
内閣府のサイトより
確かに多くの人を運ぶためには、1種免許より厳しい要件を求めても良いような気はするけれども、大型1種免許でもバスの運転をすることができる。バスであれば営業では無くとも運転技能や知識は必要とされるし、多くの人命を損ないかねない。
実のところ、1種と2種で分ける理由は、あまりないように思える。結局のところ、必要なのは技術と経験なのだ。
ライドシェアには批判的
さて、このように外国人ドライバーを増やそうとしている一方で、ライドシェアの方はあまり進んでいない。
個人的にライドシェアが素晴らしいのか?と問われると、なかなか首を縦に振りにくいのだが、それは個人ドライバーが増えることに抵抗があるからだ。だけど、じゃあ、個人タクシーは違うのか?という疑問もある。
バイト形式の個人タクシーが増えると考えるのであれば、案外悪くないのかも知れない。
公明党「ライドシェア、拙速な議論認めず」 首相に提言
2024年5月30日 19:15
公明党は30日、一般ドライバーが有償で乗客を送迎する「ライドシェア」の新たな法整備について拙速な議論を容認しないとの提言を岸田文雄首相に提出した。「特定の時期までに結論を出す」といった方針を打ち出さないよう求めた。
日本経済新聞より
某党は反対の姿勢を示しているが、特に地方のタクシー不足はなかなか深刻なものがある様で。
デマンド型ライドシェア 別府市 実証実験の形での導入を提案
09月13日 16時26分
一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶライドシェアのうち、利用者が乗る場所や行き先を指定できる「デマンド型」を、別府市が実証実験の形で導入することをタクシー事業者などで作る協議会に提案しました。
別府市ではすでに、一般のドライバーが決められた時間や場所で運行するコミュニティーバスの形でライドシェアが始まっています。
NHKニュースより
一部の地方では実証実験を始めているようだが、結局タクシー会社がガッツリ食い込んでいる。2種免許の話といい、こうした業界の圧力があってあまり問題解決に進んでいないようだ。
ライドシェア導入によるドライバー賃金の低下というのは、業界にとっても望ましくないことで、差別化を図るという戦略もなにかチグハグだ。
また、運営は市の外郭団体が市の車両を使って行い、利用料はタクシーの運賃の8割以下に抑えることを検討しているということです。
NHKニュース「デマンド型ライドシェア」より
これで、ライドシェアの方が人気になったらどうする積もりなのかと。
トラック業界は工夫が進む
待機時間を短く
なお、ドライバー問題が深刻なトラック業界は、色々工夫がなされているようだ。
トラック滞在時間半減、花王が見据える2024年問題の先
2024.03.25
トラック運転手不足などのいわゆる「2024年問題」や超人手不足に備え、トラックの工場内滞在時間の半減と、倉庫内物流の完全自動化を実現した工場がある。花王の豊橋工場だ。
~~略~~
豊橋工場は他の工場と大きく違う点がある。それは製品の入出庫に際して、運送トラックが入場する際に一時的に停車したり、運転手がトラックから降りて守衛室で受付作業をしたりする必要がないこと。入退場ゲートにあるカメラがトラックのナンバープレートを撮影し、認証システムが車両ナンバーを認識。入場するトラックの予約システムと照合して、予約システムにそのナンバーがあれば素通りできるからだ。
日経XTECHより
工場の敷地内に車で進入する場合、受付で結構面倒な手続きがある。ご存じの方はあまり多くはないかも知れないが、受付で渋滞すると入場ゲートで待たされる時間が発生するのだ。
滞留時間が減るというのは、大きな意味があると思う。
似たような視点で、輸送の効率化を図るために混載トラックを増やしていく感じの話がある。
混載トラック運賃2%上昇 荷動き回復でコスト高転嫁
2024年6月13日 19:13
複数の荷主の貨物を集めて運ぶ混載トラック(特積み)運賃が上昇している。主要路線である東京ー大阪間は2024年度に入り2%程度上がった。荷動きが回復しつつあり、運送会社と荷主との交渉で燃料費や人件費といったコスト高の転嫁が認められた。安定的な物流網の維持のためにも、荷主は値上げを受け入れるようになってきた。
日本経済新聞より
この辺りは、果たして混載が効率化に結びつくか?という疑問点はあるのだが、やってみる価値はあるのだろうと思う。
自動運転と鉄道輸送
更に自動運転などの話も、一般車両への自動運転活用よりは進んでいるようだ。
日本通運が2030年に〝無人倉庫〟を実現へ
2020.02.27
日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は倉庫、トラック分野での自動化・省力化を加速する。倉庫関連では、2030年頃をメドに、一部の倉庫での完全無人化を実現。併せて省力化により庫内作業負担を大幅に軽減し、女性や高齢者が働きやすい倉庫の労働環境を整備していく。トラック関連では点呼業務のデジタル化を目指す。
~~略~~
トラックの分野では自動運転や隊列走行の実用化に取り組む。昨年8月にはUDトラックス、ホクレン農業協同組合連合会と連携し、レベル4技術(特定条件下における完全自動運転)を用いた大型トラックによる自動運転の実証実験を実施。その際には実際運搬に近い環境を再現するため、北海道庁などの協力を得て、国内初となる公道を一部含むルートでの試験走行を行った。
そのほか、点呼業務の効率化と精度向上を目指し、自動点呼機の実用化にも取り組む。
自動運転LABより
自動運転は、高速道路内で自動運転するよという話が進んでいる。

特に運送業界はこの話に真剣に取り組んでいるんだが……、正直、国交省が本気になって取り組めば、巨額の投資は必要だが実現は可能だ。車線を1つ増やす事ができれば、トラック専用レーンの中は完全自動運転をやるのに技術的課題は相当ハードルが下がる。
あとは、隊列走行といって、先頭車両に金魚の糞みたいに(失礼)くっついて走るタイプのトラックは、高速道路の出入り口付近に積み卸し基地を作ることで実現可能だ。一般道路を隊列走行させるには無理があるので、信号のない道路限定ではあるんだけど。
日本貨物鉄道、トラックと鉄道の円滑な連携目指す
2023.12.26
トラックと鉄道を組み合わせる「モーダルコンビネーション」で「2024年問題」の解決を急ぐ。貨物船の保有や代替輸送の拠点整備により、非常時に向けた物流能力の強化も進める。
日経ESGより
あとは、鉄道輸送との組み合わせなんだけど……。コレもコストはかかるけども、本気で考えればアリかなと。JR貨物も乗り気みたいだしね。
百済貨物ターミナルに積み替え場を設置
2024年6月14日 (金)
日本貨物鉄道(JR貨物)関西支社は14日、積替ステーションを百済貨物ターミナル駅(大阪市東住吉区)に開設すると発表した
同施設の設置は、JR貨物グループ長期ビジョン2030に掲げた「物流生産性の向上」に向けた取り組みの一環であり、SDGsの実現や物流を取り巻く諸課題の解決に貢献するものだ。
logi-todayのサイトより
ただ、日本の鉄道網は人を乗せる前提で設計されているので、鉄道輸送はあまり効率的じゃないんだよねぇ。
この辺りは都市デザインの問題でもあるから、なかなか難しい。そういった分野に明るい人材が行政にいてくれると、もう少し話は単純になるんだけれども。
ともあれ、こうした話は国交省がもっと積極的に乗り出さねばならない課題なんだけど、国交省ってほんとにやる気がないんだよね。あ、公明党のせいか、そうかそうか。
工夫次第で省人化は可能
実際のところ、ドライバー不足の話は工夫次第である程度は解消することが可能であると思う。
再配達ゼロへ 宮城県と宅配事業者が協定締結へ
09月11日 15時14分
宅配便のドライバー不足が深刻さを増すなか、宮城県はドライバーの負担となっている再配達をゼロにすることを目指し、宅配事業者などと協定を結んで、連携して取り組んでいくことになりました。
宅配業界では、ネット通販の需要の高まりなどで配達件数が増え続ける一方、ドライバー不足が年々深刻さを増していて、1回の配達で届けられない再配達が、ドライバーの負担だとして課題となっています。
国土交通省は、再配達の割合を今年度中に6%とする目標を掲げていますが、ことし4月時点では10.4%と、依然10個に1個以上が再配達となっています。
NHKニュースより
良くいわれる問題が、再配達の削減である。再配達がゼロになれば、効率は1割アップってことになる。再配達問題はそんなに簡単に解消する話ではないのだが、配達ボックス拠点を各地のスーパーやコンビニなどに設置して配送する場合には少しお値段を下げますよという戦略をとるか、個別配送の料金を上げますよという戦略をあわせるか、或いは、再配達の場合には料金を取りますよという戦略をとるか、とにかく料金に差をつければ良いと思う。
「宅配便」などという名前にするから、色々と不都合なのだ。
郵便配達だって、各地の郵便局留め、窓口受け取りをスタンダードにすれば良い。
外国人ドライバーを増やすと、コミュニケーションの問題からかなりのトラブルが発生すると予想されて、効率化という面でプラスにはなるまい。何より、運転技術程度しかない「高度人材」を受け入れたとして、職が無くなったら「国にお帰り下さい」とでも言うのだろうか?それで帰国されない在日外国人の方々は結構な数いるんだが。
どうにも、ズレているような気がしてならないんだよね。
無責任に外国人労働力を増やそうという発想には、どうしても賛同しかねるのである。それこそ、技術力で解決すべき問題ではないのだろうか。
国交省は鉄道から道路、果ては航空・港湾施設まで管轄しているのだから、国家の移動網に関するプランに口出しできる立場にある。それこそグランドデザインを描いた上で、しっかりとした拠点づくりや交通網の整備にどうして手を付けないのか。民間の発想に野放図に従ってしまうのやら。巨大権益の無為・無策というのは、本当に質の悪い話である。
コメント
こんにちは。
基本、七面鳥は、白タクと外国人ドラと若年ドラは反対です。
七面鳥は都心生まれ都心育ちなのですが、最近は本当に、タクシーの運ちゃんがヘタクソになった事と言ったら……キムチEV大量買いしているKMも、何とかしたいところ。
さて、トラック業界ですが、そもそもは、1990年の「物流2法」による規制緩和で、運送業が免許制から許可制になって不良業者が爆増した事が原因です。
で、色々あって、国交省・農水省・経産省も流石にまずいと思ったのか、2010年代から色々再規制の方向に動き始めて、今年に「新物流2法」の改正が行われました。
これによる労働時間規制その他がいわゆる「2024年問題」ですが、記事にもあるとおり色々と対策は考えられてはいます。
ですが、一番大事なのは、荷主が運賃値上げを呑むことと、「水屋」と言うそうですが車を持たずにオーダーだけ取って下請けに投げる不良業者が中抜きすること、荷役作業や荷待ち時間が運賃に計上されてないこと、この三つが大体柱になっているようで、このあたりの改革が「マスコミが報じない」改正の肝になってます。
まあ、報じたところでお茶の間に分かってもらえる話しでも無いんですが……
とにかく、この件は、少なくともトラック業界の現場はちゃんと動いているので、そうではない旅客業界の方を絞めておきたいですね。
※あと、電動キックボードとかに認可出した馬鹿共も。警察が「利権が云々」言ったらしいですが、それに従うお前らがダメなんだよ。あんなの、裏に利権があるのは猿でも分かる。
こんにちは。
確かにタクシーの技量は落ちている気はします。
ただ、技量云々という話をなしにして緩和してあげるのも、手かも知れません。技量を求めるならしっかりしたタクシー会社を選べと、完全予約制にして流しのタクシーはお安くする。そんな感じにして欲しいですね。
トラック業界は、色々難しい話があるやに聞きましたが、Amazonが悪さをしたと思いますよ。ただまあ、色々と動いているようで改革がなされそうですから、こちらに関しては差ほど心配をしてはいません。バス業界とタクシー業界はなかなか……。
バス・タクシーの外国人(現行の2種免許すら合格できないレベルの方)の起用増大には私も反対です。
人手不足が問題なので・・・というのはアホすぎる。だったら大人と同じ体格の日本人高校生のアルバイトでもよしとなってしまいます。(現行免許すら取れない年なら、実際には無理だが)
2種免許すらと書いたのは、2種免許は日本人でも難しいでしょうけど、
「外国人が日本語出来ずに2種免許合格できません。だから簡単にします」では話にならんでしょう。
木霊さんが書いているように、私もドライブテクニックだけではなくコミュニケーション能力が大事だと思っているからです。
事故・故障などの対応も含めて。
そして、特に、バス・タクシーでは。
交通事情も言語も他国とは違うんだから、そこは曲げてはいけないと思います。
人手不足を免許の問題にするのは、ほんとに馬鹿な話。
PS
関係ない話ですが、最近の電車内の中国韓国語表示。あれは見づらくて困ったもんです。
使用している国が多い英語は致し方なくても、画面切り替わるまでの時間がかかるので、結果として単位時間内の情報が減っている。
もしかして、鉄道会社は「彼奴等は英語できないバカ民族だから」とバカにしているのか。
それとも、「案内見ないといけないのは、お前がバカだから」とバカにしているのか。
「鉄道運輸規程」(省令)で定めてあるのに、駅に時刻表もないし、国交省なんとかしろ、と言いたい。
タクシーやバスなんかは、運転だけなら自動運転の時代が結構そこまで来ています。
路線バスなんかは、道が整備できれば自動運転でも割といける気がします。ただ、車内のオペレーション、車掌っぽい動きをする人材はどうしても必要で、そういうのはAIに任せるには未だ時間がかかりそうなんですよね。
そして、外国人材を投入するのであれば、観光客相手にその国の言語を話せる方を雇用するというタイプのやり方なんだと思いますけど、日本語も話せる必要がありますし、細やかな対応も求められます。何より日本文化を知らねばならない。よっぽど高級な人材を獲得できれば良いのでしょうが、おそらく業界は、給料はそんなに出したくないんですよね……。
矛盾しております。上手くいくとはとても思えないんですがね。
今考えれば、銀河鉄道999はかなり先行ってましたね。
機関車は自動運転でも、車掌だけは人。
(実際は人の心を持ったまま機械化した機械人間でしたが)
物語的にもそうならざることあったとしても、すごいなと。
なるほど、銀河鉄道999ですか。
物語の合理性を考えると、コミュニケーションとれる相手がいないと話が進まないんで、仕方のない面はあるとは思います。が、現実もそうなってきているというのは面白いですね。
でも、一時期そういうのが流行った気がしますよ、アメリカでも。例えば、ナイトライダーとか、エアーウルフとか。日本でも、サイバーフォーミュラとか乗り物がAIで動かされる系のは割と。鉄道とかバスはあまり見かけませんが、物語の主軸にするのは難しいかも?それこそ、きかんしゃトーマスみたいになっちゃいますからね。
>ナイトライダー
「そのコイン、500円じゃなくて500ウォンですよマイケル」
みたいな。
横合いから失礼しました。
※AIなんて、所詮はビッグデータからそれっぽい回答を検索して来てるだけですしおすし。過去の「人工無能」を知ってる身としては、イマイチ凄いと思えないのです。
AIですが、人間の処理能力だって概ね過去の経験の引き出しから反応の選別しているだけですから、ビックデータにアクセス出来ると言うことは、それなりに人間に近づいているってことですよ。尤も、「何が正しいのか」「正しくないのか」というラインを作るのは結構大変なんでしょうね。
人工無能……、あったなぁ。
あれ、結構面白かった記憶があるんですけれどね。
人工知能そのものより、
「人工知能は、別に完全でも神でも無い」
「しかし、なぜだか知らないけど異様に有り難がる、絶対視する層が一定数居る、『無能な働き者』の層とかぶる領域に」
が、問題なのだと認識してます。