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ウクライナ軍の新兵器「ドラゴンドローン」の説明がヤバイ

報道
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産経新聞、ヤバイな。落ち着いて報道しようぜ。そんな大した話じゃないだろう?

ウクライナ新兵器「ドラゴンドローン」公表 2200度の溶解鉄降らせる 対露戦投入か

2024/9/11 10:51

ロシアと戦うウクライナ軍が、火炎をドローン(無人機)で上空から噴射する新兵器を開発したと明らかにした。火を吹く竜になぞらえて「ドラゴンドローン」と呼ばれる。米CNNは、火炎について摂氏2200度の溶解金属だと報じた。

産経新聞より

ちゃんと調べた?調べたの?これはCNNがヤバイのだろうけれど、それにしたって独自でチェックくらいしようよ。1時間もかからんだろう……。

というわけで、軽めの話題を1つ。

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ちょっと調べれば分かるのに

テルミットは特殊金属ではない

さて、何に突っ込みを入れるべきか?というような話なんだけど。

CNNによると、溶解金属は、アルミニウム粉と酸化鉄を混合した特殊金属テルミットとみられる。テルミットは高温で燃えあがり、第二次大戦では焼夷弾として使われた。

産経新聞「ウクライナ新兵器「ドラゴンドローン」公表」より

「CNNによると」と前置きをするのは「調べてません」と公表するような話ではあるが、それにしたって調べないのは不味いのでは。

先ず、テルミットなんだけど、これはテルミット反応、或いはテルミット法のことだよ。酸化しやすい金属粉末と、還元しやすい金属酸化物粉末とを混合したものがテルミットと呼ばれる物質である。このテルミットに着火すると、金属粉末は酸化物の酸素を奪って燃焼し、この反応をテルミット反応と呼ぶ。

アルミニウム粉末はお手軽なので使われることが多いけれども、酸化しやすい金属粉末であれば使えるので、アンチモンとかチタンとかも使われることがあるようだ。

古くから粉末冶金の分野で用いられる手法なので、「特殊金属」というわけではない。

そして、焼夷弾に用いられるのは、テルミットに火工品(火薬または爆薬を利用した調整品)を混ぜたサーメートと呼ばれるシロモノであって、テルミットが焼夷弾に用いられたなら分かるが、テルミットを焼夷弾として使ったというと間違いである。

それと、「溶解金属」という表現の意味が良く分からない。

「溶解」とは金属に使う場合には、液状にすることを意味するが、金属が火の熱で溶けて液状になることを指すので、正しくは「溶融金属」だろう。というか、テルミット反応を引き起こしている状態なので、金属が酸化還元状態にあるというのがより正確なのではないか。

水に溶けた状態でも溶解と言うため、発熱を伴う激しい酸化還元反応が起きていることを想起できないんだよね、溶解だと。

テルミットはナパーム弾や白リン弾として使われない

更にここ。

テルミットは、ナパーム弾や白リン弾としても使われる。

産経新聞「ウクライナ新兵器「ドラゴンドローン」公表」より

えーと、これはCNNに書いてあったの?

ナパーム弾は、ナフサにナパーム剤と呼ばれる増粘剤(パーム油から抽出したパルミチン酸アルミニウム塩と、乳化剤として石油精製時に抽出されるナフテン酸アルミニウム塩を粉末化し混合したもの)を添加してゼリー状にしたものを充填した油脂焼夷弾のこと。

白リン弾は、白リンを詰めた爆弾で、充填された白リンが大気中で自然燃焼すると吸湿して、透過性の悪い五酸化二リンの煙を発生させる発煙弾の仲間である。限定的な照明効果および焼夷効果を期待するケースもある。

つまり、ナパーム弾や白リン弾にテルミットは使われていない。ナパーム弾も、白リン弾も、テルミットも焼夷弾としての利用例はあるんだけど、もしかして誤記なのかな?

国際法で禁止されるか

更に、この辺り。

これらの焼夷兵器は国際法上、軍事標的への使用は禁じられていないが、重度の火傷や呼吸器障害に加え、長期的に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を残すとして、人道団体は規制を求めている。

産経新聞「ウクライナ新兵器「ドラゴンドローン」公表」より

うーん、焼夷兵器に関しては「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)」の附属議定書3に言及があるんだけど、原則は兵器そのものの使用が国際法上禁止というわけではない。訳ではないんだけど、ちょっと語弊がある気はする。

CCW附属議定書3には、民間人や民間施設、および、人口密集地域にある軍事基地を焼夷弾で攻撃することは禁止している。本体条約と附属議定書の締約国総数は109か国で、ロシアとウクライナはしっかり締約国に入っている。

UNTC
Ceci est la page d'accueil de la Collection des traités des Nations Unies.

つまり、特定条件下での使用は禁じられているんだよね。

民間攻撃NG

そして最後。

ウクライナはこれまで、ロシアの焼夷兵器で民間人の犠牲が出たとして非難してきた。

産経新聞「ウクライナ新兵器「ドラゴンドローン」公表」より

ウクライナが批難してきたのは、ロシアの民間人攻撃なんだが。国際法上、民間人への兵器による攻撃は禁じられている

もちろん、民間建造物への攻撃もアウトだ。これは、ウクライナであろうとイスラエルであろうと事情は変わらない。ロシア軍もイスラエル軍も民間攻撃をやらかしているのだから、国際法条NG。

焼夷兵器を用いたことが直接の問題ではないんだよね。

というわけで、報道として急いでしまったのか、内容をチェックしていないことが丸わかりのニュースなのだけれど、理解していないからなのかな。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >「溶解金属」という表現の意味

    「早く固体になりた~い」でしょうか?(違

    テルミットなんか、線路繋ぐ現場でも多用しているありふれた技術なんだから、何を今更としか思えませんが……

    産経は、ちょいちょいこういう馬鹿丸出しをやらかしますよね。
    やっぱ、フジサンケイグループはダメか……

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      正直に告白すると「妖怪金属」……「溶解金属」に引っかかって、調べたんですよね。そんな言い方するのか?と。
      調査すれば直ぐに分かる話を、どうして調べないのかと。

      • 七面鳥 より:

        >どうして調べない

        1.記者は調べたがデスクが朱を入れた
        2.記者が間違え、デスクは見落とした
        3.記者もデスクもザル

        正解はCMの後で!
        ※CMに入るとチャンネル変えられちゃうので、正解は永遠に分かりません。