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「ロシア経済好調」と報じる日テレ

ロシアニュース
この記事は約10分で読めます。

ふむ。日テレ、情弱だなぁと思って記事を読んでいたが、これ、多分、「案件」だね。

経済制裁続くも“好景気”消費欲に沸くロシア 賃金アップで高級和食や高級車が人気

2024年9月9日 19:43

ウクライナ侵攻で欧米などの経済制裁が続くロシアですが、いま、制裁をものともせず、好景気に沸いています。人々の購買意欲も旺盛になっていて、高級な日本のグルメも人気となっています。好景気の背景に、何があるのでしょうか。

日テレNEWSより

まず、「好景気」を疑わないの?と、出だしから突っ込みの入る記事なんだが。

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戦時経済だからこそ「好調」

記事の中で既に内容が矛盾

この記事を書いている記者は、経済のことを本当にわかっているのか極めて怪しいんだけど、プロパガンダに加担しろという司令でも来たのだろうか?

ウクライナ侵攻から約2年半。欧米諸国や日本からの経済制裁は続いていますが、景気は落ち込むどころか、むしろ盛り上がっているというのです。

その成長をもたらしたのは、ウクライナ侵攻後、フル稼働を続ける軍需産業です。さらに、スターバックスやマクドナルドなど欧米企業が撤退した店を活用し、ロシア企業が相次いで参入。その結果、雇用が拡大し、賃金も上昇。人々の消費欲が高まっているのです。

日テレNEWS「経済制裁続くも“好景気”消費欲に沸くロシア」より

軍需産業に全精力を傾けているロシアにとって、その分野が儲かっているという理屈はわかる。そこはおそらく正しいのだ。

しかし、「スターバックスやマクドナルドなど欧米企業が撤退した店を活用し、ロシア企業が相次いで参入。その結果、雇用が拡大し、賃金も上昇」というのは、明らかに矛盾しているぞ。

だって、スターバックスやマクドナルドなどの欧米企業だって、現地の人間を雇っていたはずなのだから、ロシア企業が入れ替わりに経営を始めたからといって、雇用が増えるはずがない。

失業率の低下と賃金上昇のカラクリ

何度か別の記事内でも告白しているが、正直、僕自身はあまり経済に詳しくない。だから、記事の中に矛盾が含まれている場合にも数字に騙されることもママあるわけなのだけれど、流石に単純な経済理論くらいは知っている。

労働と賃金の関係で言えば、古典派の方が理論が分かりやすいので、古典派のAD曲線を紹介しておくと、こんな風になる。

img

労働需要曲線と労働供給曲線は反比例の関係にあって、労働者が足りない状況だと名目賃金が上昇、そして、実質賃金も上昇する。で、労働市場において需要は均衡するわけだ。ただ、「完全雇用状態」という仮定の上に成り立つ話なので、本来は修正が必要だけど大雑把には「こんな風だよ」の理解で良い。

だから単純に言えば、ロシアでは人手が足りないので賃金が上昇しているという構図になる。

ロシアの失業率、4月は過去最低 賃金大幅上昇で労働市場逼迫

2024年6月6日午前 11:14

ロシア連邦統計局が5日発表したデータによると、4月の失業率は過去最低の2.6%だった。3月の実質賃金は前年比12.9%上昇し、アナリスト予想を上回った。ロシアの労働市場の逼迫が浮き彫りになった。

ロシア経済は2022年の不況から回復したが、経済成長は国費による武器と弾薬の生産に依存しており、国民の生活水準引き上げを妨げる問題が隠れているとエコノミストは指摘する。

ロイターより

6月の記事では、実質賃金が上昇していることから、ロイターは労働市場が逼迫している(人手が足りない)と解説している。

そりゃ、ウクライナ戦線でロシア兵が消耗しているわけだから、人手が足りるわけがない。

ロシア兵の死者、5万人以上に BBCなどの調査で明らかに - BBCニュース
ウクライナにおけるロシア兵の死者数が5万人を突破したことを、BBCが確認した。これは、2022年9月にロシア政府が公式に発表した死者数の8倍に当たる。しかし、実際のロシア兵の死者数はもっと多いとみられている。

正しい数字は不明だが、累積死者数は5万人を突破していると見込まれている。労働力は確実に消耗していて、つまり労働力が足りないのだ。そこへ来て軍需工場に人手が取られているのだから、賃金が大幅上昇という結果が出る。コレが慢性化しているので、人々の生活は賃金が上がっても苦しいままという風な話に繋がるわけだ。

もう、この時点でバラ色の記事を書く神経が良くわからない。

GDPはそりゃ上昇するさ

ちなみに、日テレNEWSでは「直近のGDPは前年比プラス4%」と好調ぶりをアピールしている。

ロシアの経済発展を強気でアピール。実際に、直近のGDP(=国内総生産)は前年比プラス4%(今年4ー6月期)。これは、どの先進国をもしのぐ数字となっています。

日テレNEWS「経済制裁続くも“好景気”消費欲に沸くロシア」より

この辺りはBBCも似たような記事を報じているし、GDPが伸びているのは嘘ではない。

ロシアの経済、今年は先進国で最も伸びる見通し=IMF

2024年4月17日

国際通貨基金(IMF)は16日、ロシアの経済成長率が今年、アメリカを含む世界の先進国を上回るとの予測を発表した。

最新の世界経済見通しの中でIMFは、ロシア経済が今年3.2%成長すると予測。伸び幅がイギリスやフランス、ドイツを大きく上回るとみている。

BBCより

相変わらずGDPという比較の指標にならない、意味不明な指標をありがたがっているのだけれど、数字を評価するためには前提条件を揃えなければ意味がない。

ロシアでは今、戦場で武器弾薬を恐ろしい勢いで浪費している。ウクライナの領土を削っているという意味で「浪費」という表現はもしかしたら正しくないかもしれないが、しかし、国際ルール上は「他国を侵略してはならない」ということになっているので、公式に自国の領土とする事はできない。そうすると、この行為にお金を費やす意味がどの程度あるのか?という話になっている。正に無駄金である。

しかし、GDPにはそういった事情は加味されず、消費行動が数字に現れるので、戦争で経済が膨らんでいるように見えているだけで、このGDPの数値はロシア経済の成長を意味しない。

その車、何処から輸入しているの?

記事では車を買いに来た女性の発言を引用して、好景気をアピールしているのだけれど、これまた酷い。

経済制裁が生んだ“好景気”。その“恩恵”は、自動車販売店でも。店内には周辺国を経由し“非正規ルート”で仕入れたという日本の高級車がずらり。購入した車を引き取りに来た女性は…

車の購入者 「収入は増えました」

──どれくらい増えた?

車の購入者 「20%くらいです」

ここ3年で収入がアップしたため、車の買い替えを決めたといいます。新車価格は約1500万円。価格は以前より6割ほど高くなったといいますが…

日テレNEWS「経済制裁続くも“好景気”消費欲に沸くロシア」より

恩恵か?

img

背景に写っている車は、日本の高級車レクサスである。当然ながら、経済制裁をしている日本から車を輸入する事はできないロシア、記事にあるように「非正規ルートからの入荷」しているようだ。

当然、特殊なルートを通ってくる為に新車の価格も高騰する。

で、収入が2割増えて、新車価格は6割増えたという内容になっているよね。え?「好景気」ですか?内容に説得力を感じないのだけれど。

いや、物価が高騰して賃金も上昇しているのだから、確かに好景気とは呼べるんだろうけれど、物価上昇のスピードに対して賃金の上昇は追いついていないよね。

ロシアの物価状況(24年6月)-前年比伸び率は8%台で推移

2024年07月11日

7月10日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。

ニッセイ基礎研究所のサイトより

ええと、一時期よりはちょっとマシになりました、ね?

6月のロシアのインフレ率は前年比で8.6%となった。23年4月(2.31%)をボトムにした上昇が続いたあと、23年11月以降は6か月連続で7%台となっていたが、5・6月は8%台で推移している。なお、ロシア中銀のインフレ目標(4%)を12か月連続で上回っている。

インフレ率を大分類別に見ると、6月の前年比伸び率は食料品が9.81%、財(非食料品)が7.01%、サービスが8.79%となり、5月に続き6月も食料品の上昇幅が大きかった。

ニッセイ基礎研究所のサイトより

特に食料品の価格上昇が激しいようだが、インフレ率を見る限り、実質賃金が2割上がっているのであれば、生活がそれほど苦しい感じはしないのだが……。輸入するルートが厳しいので、本当に「いつまで続くの」という点は非常に気になるところ。

だって、日本製の自動車買って、壊れたら直せるの?とか、そういう話を考えると、長続きできるような状況だとは思えない。

継続性の不透明さ

ロシア産業は不思議な構造で、工業生産力はほぼない状況なのに、兵器を作る能力はあるという不思議な話になっている。あれ、どうなっているんだろうね?

「危ない」と言われていた航空機だが、今のところは未だ飛行出来る状況のようだ。

ロシアの「飛行機借りパク」その後どうなった? 前代未聞の返還拒否から2年半 リース500機のゆくえ

2024.09.02

2022年に始まったロシアによるウクライナへの大規模な軍事侵攻は、世界に多大な影響を与えましたが、とりわけ航空業界における混乱は顕著でした。侵攻直後、欧米諸国による経済制裁の一環として、ロシアの各航空会社はリースされていた515機の旅客機を返還するよう求められました。しかし、プーチン大統領はこれを拒否し、国内法を改正してこれらの航空機を事実上、国有化してしまったのです。この前代未聞のロシアによるリース旅客機の大量盗難は、法秩序を無視した「借りパク」行為として世界中から非難を浴びました。

乗り物ニュースより

記事にある通り、借りパク航空機を飛ばしている状況だが、整備するには部品が必要で、国内で製造できるかは不透明だ。かなり高額で部品を密輸入しているとも言われているが、おそらくは支那から調達しているんだよね。

しかし、実のところ支那でもエンジンは製造できない。エンジン製造の中の人に聞いたのだけれど、国際的なエンジン市場というのは完全に独占状態で、他所から入り込む余地がない状況らしい。そして、部品の流れもコントロールされているのだとか。

なかなかエグい話だけれど、特にエンジン部品などはロシア、共食い整備するしかない状況ってわけだ。むしろ、いつまで航空機を飛ばすことが出来るのかは非常に興味深い。

とまあ、かなりの分野でそういう話があって、加工機なども自作できない、修理できないという状況であるため、国際的な中古市場が高騰しているという話を聞いた。噂では支那もマザーマシン開発に成功したから、ロシアに流せるという話も聞くんだが。なかなか万全というわけにはいかないだろう。半導体関連も厳しい規制がされているようだしね。

ソレを踏まえてか、日テレNEWSは、最後をこんな一文で結んでいる。

経済制裁の裏で高まる人々の“消費欲”。一方、過度な物価上昇や人手不足も深刻化していて、戦時下の中、“好景気”がいつまで続くのか、国内では懸念の声も上がっています。

日テレNEWS「経済制裁続くも“好景気”消費欲に沸くロシア」より

戦時下の中、“好景気”がいつまで続くのか」とは、これって戦時経済だよねという意味である。案件だから「好景気」という言葉は入れなければならないけれど、完全な嘘を書くと信用を失うので、ヤバい部分があるというところを匂わせて文を結んでいる。

なんというか、記事の途中の「伝聞」の部分は一体何の意味がある文章なのかと、問い詰めたくなるレベルだよね。何か、案件の文章で使う必要のあるワードを無理やり埋め込んで、合格をもらった感じがする。

大きく見せたいロシア

さて、不安材料を掘れば色々出てくるロシアではあるが、しかし現時点では深刻な様子が見えないのもまた事実ではある。

それどころかこんな演習も。

プーチン氏、ソ連時代の大演習「復活」 中国含む400隻以上が参加

2024年9月10日 23時14分

ロシアのプーチン大統領は10日、太平洋などで400隻以上の艦船が参加する海軍の大規模軍事演習「オケアン(大洋)2024」にオンラインで参加した。ロシアメディアによると、オケアンは「世界最大」をうたった旧ソ連海軍の演習名で、「復活」により、ウクライナ侵攻で対立する米国を牽制(けんせい)する狙いとみられる。

~~略~~

ウクライナ侵攻後も密接な関係を続ける中国の軍艦や軍用機が参加するほか、15カ国を参観に招待したという。

朝日新聞より

えらく大規模な演習をやったようだが、色々と仲の良い国に声をかけて「見に来て」と招待したようだ。

ある意味、「余裕の現れ」というふうにも言えるとは思うのだけれど、むしろ、そう見せているという側面のほうが強そうである。噂によると、ウクライナに随分な数の艦船を沈められたらしいが、まだ400隻も動かせる船があったのか。まさに「余裕のあるところを見せつける」という趣旨の演習だったようだが。

稼働できる船を総動員したのかもしれないね。これで、西側の結束が緩むなら儲けものなのだろう。

追記

政策金利19%か。

ロシア中央銀行 政策金利を1%引き上げ19%に

2024年9月14日 5時32分

ウクライナ侵攻が長期化する中、ロシアの中央銀行は依然としてインフレ圧力が高いとして、政策金利を1%引き上げ、19%にすると発表しました。

ロシア中央銀行は13日、金融政策を決める会合を開き、政策金利を18%から19%に引き上げることを決めました。

利上げは、ことし7月に続くものです。

NHKニュースより

未だ上げるらしい。

インフレ圧力が強いとはいえ、19%のままで大丈夫なのかね?

コメント

  1. さつま無双 より:

    GDP関しては戦時経済下では大きくなるものだけど日テレは専門家が監修しなかったのかな?
    GDPは国内総生産だから戦争で次々消耗される兵器や軍事物資を生産しまくっているので上昇するのは当たり前ですよね。

    実際過去の事例でも第二次大戦が始まり日本でノモンハン事件が起きた1939年から日本のGDPは急激に上昇し太平洋戦争中の1943年にピークを迎え1945年の8月までは高い水準を維持していました、これの傾向は敗戦国のドイツ、イタリアも同様だったし戦勝国のアメリカ、イギリスも同様でした。

    • 木霊 木霊 より:

      いや、戦時経済の話は素人レベル出理解できる話だと思います。
      記事でも突っ込みを入れましたが、違和感しかない記事構成で苦笑い。
      もしも、「案件」記事だとすると、プロパガンダを振りまくように指示が出たってことで、一番最後に紹介したように、大規模軍事演習と同じ話なのかも知れませんよ。ちょっと穿ち過ぎかもしれませんが。

      • さつま無双 より:

        そうなんです、親ロ派のネットでのコメントならともかく日テレのような大手マスコミが素人でもわかるような戦時経済下でのGDPまで取り上げてロシア経済が堅調なんて違和感しかありませんよね。
        「案件」記事でないとしたら、このわざわざ今取り上げる必然性もない「ウクライナと戦争中だけどロシア経済は大丈夫だよ」みたいな内容の企画はどこからどのような意図で挙がってきたのかは気になります。

        • 木霊 木霊 より:

          ロシア上げのコメンテーターは一定の需要があるみたいで、時々見かけますね。
          実は工作活動の一環だった、と分かっても、僕は驚きませんよ。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    テレビなんかで、急にかしましくCM打ち始めた企業があると、「あ、ヤバいんだな」って思うようになりました。
    同じ匂いを、K-POP推し韓タレ推しのテレビ業界にも感じるし(これは面白い事にCM打つ側と電波に載せる側の両方という)、件の番組の内容もそうなのだと感じます。

    というか、今、ロシアの景気が良いからって「だから何?」でしかないのですけれど。
    景気に関係なく、力による国境線変更の暴挙を行う国は許されないし、なんなら占守島その他の恨みもある(終戦時の北方領土の話しは、もっと知られるべきだと思います)。

    テレビの中の人は、いろんな意味で、世論が読めなくなっているのかも知れませんね。

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。

      ああなるほど、そういう見方をしたことがありませんでしたが、そう言われて見るとそんな気はします。
      そういう風潮があるのであれば、ロシアからの申し入れがあれば、抵抗なく案件動画を作ってしまっても不思議はありませんね。韓国ごり押し案件動画はそれこそ、毎週のように出回りますし。

      今のタイミングでロシアの好景気なんていうニュースをやる方が不自然なんですよね。
      占守島の話もそうですが、ロシアに関してはサハリン2事件を絶対許せません。

      • 七面鳥 より:

        露助は、裏切る事に関しては支那と五十歩百歩ですからね。
        ※露助が五十歩。

        CMの件、そう思うようになったのは、ア○ダ設計のCMからですね、美川憲一のやつ。2010年前後の話しだったようです(今ググって確認しました)。