アメリカで建設中のサムスン電子の工場、完成が遅れる

んー、未だあの工場は完成していなかったんだっけ。

着工2年経ったが完成はいつ…サムスン電子の米工場「二重の悪材料」

登録 2024.09.03 11:10:27修正 2024.09.03 14:31:43

サムスン電子が米国テーラー工場を2年前に着工したが、様々な変数に遭遇して完成が遅れている。米国政府の補助金支給がまだ行われていない状況で工事費の上昇に直面しているほか、最近では工場建設に参加した労働者が100万ドルの損害賠償訴訟を起こしたこともある。

NEWSISより

一時期、飛ぶ鳥を落とす勢いだったサムスン電子で、韓国の屋台骨だったサムスンだが、最近あまり「好調だ」という話は聞かないね。

工事遅れて大丈夫？

稼働開始予定は2026年だった

企業の好不調は定期的に訪れるので、不調な時があるのはおかしなことではない。ただ、満を持して建設開始したハズのアメリカ工場は、未だ完成していないとは思わなかった。

3日、業界によると、一部の米国メディアは、サムスン電子のテイラー工場が当初稼働時期として予定していた2026年まで先端半導体の量産に着手するのは難しいと伝えた。

NEWSIS「着工2年経ったが完成はいつ」より

ふーん。

半導体産業は、移り変わりが激しいので、さっさと完成させないと不味いのでは？

440億ドルの資金を突っ込んで、半導体工場の建設に着手したのが2022年のことで、バイデン政権の方針で半導体産業にもそれなりに補助金を出す話だったんだよね。

サムスン電子は440億ドル(約60兆ウォン)を投資し、テキサス州テイラー市周辺に半導体工場2ヵ所と先端パッケージング研究開発(R&D)センターを構築する計画だ。米国政府からこれらの事業に64億ドル(8兆8000億ウォン)の補助金を受けることにした。

NEWSIS「着工2年経ったが完成はいつ」より

確か、今年4月にもそんな話があったような……。

米バイデン政権 半導体大手に最大1兆円近い補助金を支給と発表

2024年4月25日 18時00分

アメリカのバイデン政権は半導体大手マイクロンテクノロジーに対し、日本円にして最大1兆円近い補助金を支給すると発表しました。

アメリカのバイデン政権は25日、半導体大手マイクロンテクノロジーに対し最大61億ドル余り、日本円にしておよそ9500億円の補助金を支給する覚書に署名したと発表しました。

NHKニュースより

この話は、2022年に成立した法律に基づいた話なんだよね。CHIPS and Science Act（CHIPS法）って、一時期かなり話題になっていたアレだね。

米、半導体拡大へ補助金　経済安保強化へ「脱中国」

2024年01月07日07時11分配信

バイデン米政権は、米国内の半導体生産を拡大するため補助金支給に乗り出した。これまでに米英２企業に計約２億ドル（約２９０億円）の助成を決定。「年内に十数件」（レモンド商務長官）が対象となる見込み。戦略物資である半導体の中国依存を脱し、経済安全保障を強化する狙いだ。

助成制度は２０２２年に成立した半導体補助金法に基づく。半導体の国内生産や研究開発の支援に５００億ドル超の財政支援を盛り込んだ。そのうち３９０億ドルを国内生産の拡大に充てる。

時事通信より

サムスンもこの補助金目当てで工場の建設を始めたんだ。

未だ貰えない

ただ、問題の補助金は貰えていない模様。

しかし、昨年4月に米国政府が補助金を確定発表したが、実際の支給はまだ行われていない。台湾TSMCの場合、補助金の一部が支給されたと伝えられているが、サムスン電子は米国政府から補助金を受け取らなかったという。

NEWSIS「着工2年経ったが完成はいつ」より

補助金が足りないから、工事が遅れているという話ではないと思うんだけど、どうにも韓国メディアは関連づけたいらしい。

ただ、懐事情が厳しいのは事実みたいだね。

2022年上半期に着工したテイラー1工場は昨年末現在、工事進行率は59.7%だ。当初、今年下半期に稼働するのが目標だったが、完成時期は引き続き遅れている。これには現地工事の原材料費の上昇と人件費の増加などの影響もあったとみられる。

NEWSIS「着工2年経ったが完成はいつ」より

うんうん、金利差とかウォン安とか色々あったもんねぇ。ただ、今年は黒字だったんじゃないのかな？

サムスン半導体部門が営業黒字　1~3月、5四半期ぶり

2024年4月30日 9:27

韓国サムスン電子が30日発表した2024年1〜3月期の事業別業績で、半導体部門の営業損益は1兆9100億ウォン（約2100億円）の黒字（前年同期は4兆5800億ウォンの赤字）だった。同部門の黒字は5四半期ぶり。大手各社の減産や、生成AI（人工知能）用向けの需要の増加で、半導体価格が上昇している。

日本経済新聞より

ここ最近は半導体業界の売り上げが低迷していたので、サムスンも苦戦をしていた。

だが、今年に入って復調したので、少し資金的にも余裕が生まれてきているはず。ハズ、というか半導体業界は定期的に巨額投資を繰り返していかないと、競争相手に勝てないので、開発にも製造にも力を入れるしかないのだ。

TSMCは順調のようだ

補助金を貰った

一方、サムスンがライバル視しているTSMCの方がかなり順調のようだ。

米国がTSMCアリゾナ工場に約1兆円、2nm世代より先を狙う第3工場も

2024.04.10

米商務省は2024年4月8日（米国時間、以下同）、台湾積体電路製造（TSMC）が米国アリゾナ州フェニックスに建設中の先端半導体工場に対し、66億米ドル（1ドル＝152円換算で約1兆円）の財政支援を実施すると発表した。さらに、建設中の2つの同工場に加え、TSMCが新たに2nm世代以降の半導体を量産する第3工場を、同州フェニックスに建設することも明かした。「現状、米国は最先端半導体を生産できていない。2030年までに世界の最先端半導体の20%を生産する想定だ」（米商務省）とする。

日経XTECHより

もともと、TSMCの工場建設の話があって、CHIPS法は後から出てきた話ではあるんだけど、政治的には何らかの話が建設前にあっても不思議ではない。

TSMCが先端半導体を量産する第1工場を建設することを発表したのは2020年のこと。FinFET構造による4nm世代プロセスの半導体を量産する。2024年4月8日のTSMCによる発表では「2025年前半までに大量生産を始める」としている。

日経XTECH「米国がTSMCアリゾナ工場に約1兆円」より

工場の稼働は来年に実現ということらしいので、恐らくは最終段階に至っているのだと思われる。

そういえば熊本工場も

アメリカの話とは直接関係ないが、TSMCといえば熊本工場が年末くらいには稼働するという話になっていたと思う。

ＴＳＭＣ　熊本の半導体工場４月着工、来年９月までに完成

2022/03/01 07:15

台湾積体電路製造（ＴＳＭＣ）とソニーグループの合弁会社は２８日、熊本県に建設する半導体工場について、今年４月に着工し、２０２３年９月までに完成させる計画を明らかにした。台湾から技術者約３００人を受け入れる方針も示し、２４年１２月の出荷開始を見込んでいる。

讀賣新聞より

TSMC半導体工場完成 第2工場建設も決定 政府最大1.2兆円余補助

2024年2月24日 19時11分

半導体の受託生産で世界最大手、台湾のTSMCが熊本県に建設した日本で初めての工場が完成し、24日に開所式が行われました。 会社は先端半導体を生産する第2工場の建設も決めていて、政府は総額で最大1兆2000億円余りを補助します。

～～略～～

新工場は、ことしの年末までに本格的な稼働を開始し、自動車や産業用の機器など幅広い用途向けに半導体を生産します。

NHKニュースより

えらく急ピッチで建設が行われて工場の稼働は年末に迫っている。まあ、ローテクで既に生産方法が確立されたものを製造するのであり、自動車メーカーを始めとして納入先もほぼ決まっている話である。

決まれば早いのはある意味当然ではあるのだが、経済的にはかなり大きいな。

訴訟も足を引っ張る

建設現場でのトラブル

そんなわけで、ライバルの方は順調みたいだけれども、サムスン電子はやや苦戦しているようだ。

そして、工事現場でのトラブルも。

追い打ちをかけるように、最近、地元の工場建設労働者が工事現場で負傷し、サムスン電子を相手に100万ドルの損害賠償請求訴訟を提起した。

テーラー工場で板金作業をしていたこの労働者は先月、フォークリフトに積まれていたダクト構造物が落下する事故で頭と肋骨、脚の骨折など大きな負傷を負ったという。

この労働者は「サムスン電子が施設の問題と危険性を知っていたが、きちんと教育もせず、管理もしなかった」とし、サムスン電子を相手に精神的苦痛および治療費名目で100万ドルを請求した。

日経XTECH「米国がTSMCアリゾナ工場に約1兆円」より

工事現場の安全に関わる事故と、管理不十分が原因ということになると、工事が止まっちゃう可能性もあるね。

ただ、アメリカの場合は好景気で人手不足というところもあって、この話は容易に解決できないんだよね。

このほか、専門人材の需給懸念もサムスン電子のテーラー工場のもう一つの難題として挙げられる。先に米国アリゾナ工場の建設が遅れたTSMCの場合、最も大きな理由として「熟練労働者不足」を挙げたことがある。

半導体業界では、米国内の半導体専門人材が限られた状況で多数の企業が工場を建設しているため、サムスン電子とTSMC、インテルなどグローバル企業の人材確保競争がより激しくなると見ている。

日経XTECH「米国がTSMCアリゾナ工場に約1兆円」より

この話は、今に始まったことではないんだ。実は、東芝が原発を建設しようとして巨額の赤字を出したり、日本車輌が鉄道製造をしようとして巨額の赤字を出したり、トヨタのアメリカ工場で訴訟に発展したりと、アメリカの人材というのは割と教育不足の面が目立つのである。

慢性的な人手不足というのはアメリカ的に悪いことではないのだが、出資している企業にとっては困った問題ではある。

まあ、それを含めて考えていくしかないんだけど。

先行きは不安

ただ、こんなニュースがあっただけに「大丈夫？」と心配にはなる。

米、量子・次世代半導体の輸出管理推進…韓国、「許可免除」から除外

入力2024.09.06. 午前 5:39 修正2024.09.06. 午前 5:47

米国政府が量子コンピューティングや次世代半導体など、国家安全保障に重要な最先端技術に対する新たな輸出規制に乗り出した。

この過程で、米国は自国に準ずるレベルの輸出管理体制を備えた国には、このような技術を米国政府の許可なしに輸出できる制度を新設した。しかし、その対象に韓国はすぐには含まれなかった。

NAVERより

そういうことだぞ。

ただ、米国は韓国への輸出は許可を申請すれば承認するという方針を立てたとされ、韓国企業に与える影響は限定的なものと予想される。

～～略～～

韓国がIECの許可免除対象に含まれないため、韓国企業はこれに含まれる国の企業に比べ、相対的に不利になったり、不利益を受けるのではないかという懸念を生み出している。

NAVERより

このニュースも懸念材料ではあるんだけど、とはいえ、韓国は既に半導体一本足打法に移ってしまっているので、今さら、「半導体もちょっと不調」とは言えない雰囲気である。応援するしかないところだけど、生暖かい視線を送っておこう。

追記

コメントを頂いたので、少し言及しておきたい。

エヌビディア、サムスン製ＡＩメモリー認証作業進行中－フアンＣＥＯ

2024年6月5日 1:10 JST

米半導体大手エヌビディアは、韓国サムスン電子の高帯域幅メモリー（ＨＢＭ）について引き続き認証プロセスを進めている。人工知能（ＡＩ）プラットフォームの訓練に不可欠なコンポーネントの供給開始が可能になる前に求められる最終ステップだ。

～～略～～

韓国証券取引所からの金融データを提供するコスコムによれば、サムスンの株価はソウルでの通常取引終了後の時間外取引で一時4.1％高。フアン氏の発言に先立ち、ロイター通信はサムスンがＨＢＭの熱と電力消費の問題に取り組んでいると報じていた。同社のＨＢＭはエヌビディアのＡＩアクセラレーターと連動して機能するよう設計されたものだ。

Bloombergより

NVIDIA CEOの一言で株価が動いたSamsung、激震の半導体部門で初のストも

2024.06.17

人工知能（AI）向け半導体の重要部品である広帯域幅メモリー「HBM（High Bandwidth Memory）」に対して、米国政府が中国に対する半導体規制を適用するようだ。米Bloomberg（ブルームバーグ通信）は2024年6月11日（現地時間）、米国政府はAIに使われる半導体技術の中で特に新しいトランジスタ構造であるGAA（Gate All Around）とHBM関連技術が中国に渡らないよう一段と制限することを検討していると報じた^注1）。

米国の追加規制は中国のAIモデル開発を制限するためとみられている。中国が最先端のAI半導体を製造するためには3nm以下の工程が必要である。米国政府は2025年から、米NVIDIA（エヌビディア）、米Intel（インテル）、台湾積体電路製造（TSMC）、韓国Samsung Electronics（サムスン電子）が提携して、米国でGAA技術を用いた半導体の生産を増やすようにするという。

日経XTECHより

３月頃に、NVIDIAがサムスン電子から高帯域幅メモリーを調達するという噂が出て、本格的に採用しようぜ！という話になった。この流れで、サムスン大喜びかと思いきや……。

サムスン電子515人がエヌビディアに移籍

記事入力 : 2024/06/27 11:15

人工知能（AI）半導体市場で主導権を握るための半導体メーカー各社の「人材戦争」もエヌビディアを中心に繰り広げられている。事実上エヌビディアが韓国をはじめ、全世界の半導体中核人材を吸収している状況だ。本紙が18日、人材採用プラットフォーム「リンクトイン」を通じて分析した結果、NVIDIAの社員のうち、サムスン電子出身は515人（リンクトイン登録者で集計）に達した。エヌビディアからサムスンへの移籍者（278人）の2倍近い数字で、サムスンでは人材流出が発生していると分析可能だ。

朝鮮日報より

人材流出した上に、更に株価暴落。

エヌビディア株急落、2789億ドル吹き飛ぶ－米１銘柄として過去最大

2024年9月4日 7:20 JST 更新日時 2024年9月4日 8:22 JST

世界的なリスク資産離れの波に米株価が急落してから約４週間後、半導体メーカー株売却の動きが新たな株安をもたらした。業界アナリスト２人が人工知能（ＡＩ）を取り巻く熱狂は行き過ぎだと懸念を再び提起した。

レーバーデー連休明け３日の米株式市場で、ＡＩ向け半導体メーカー大手エヌビディア株は9.5％下落し、2789億ドル（約40兆5460億円）が吹き飛んだ。米１銘柄として過去最大となる。

Bloombergより

弱り目に祟り目なのかな？

少なくとも資金調達には苦戦するかも知れない。

韓国『サムスン電子』株価ズンズン下がる。時価総額83.5兆が蒸発「役員が自社株買い」の喜劇

韓国『サムスン電子』の株価が絶不調で、ずんずん下がっています。以下は、2024年09月10日が締まった時点での日足チャートです（チャートは『Investing.com』より引用：以下同）。直近は「なんだこりゃ」という下落トレンドですが、09

money1.jp

まあ、大変だよね。