リクエストを受けてマリ共和国の話を調べてみた。正直、馴染みのない国の話だけに、お断りするつもりだった。何しろ情報が出てこない……と思っていたのだけれど、思ったよりも厄介なのが出てきた。
Mali-Ukraine row: Kyiv’s interference reckless –Prof Sesay
2024-09-06
Bamako had alleged that Kyiv gave support to the Tuareg rebels who ambushed and killed dozens of Malian soldiers, including some Russian Wagner mercenaries in the northern Kidal region in late July, this year.
~~対訳~~
バマコは、キエフが今年7月下旬、北部キダル地方でロシア人ワグネル傭兵を含む数十人のマリ軍兵士を待ち伏せして殺害したトゥアレグ反乱軍を支援したと主張していた。
The Sunより
ソースが、「ザ・サン」(イギリスの日刊タブロイド紙)って、信用できるのかよ……。はい、解散。
ロシアの情報戦の一環では
渡航禁止
まあいいや。


取り敢えず、地理的条件から。マリ共和国はアフリカ大陸の西側に位置するそれなりに大きな国家で、首都はバマコである。なお、外務省は渡航禁止勧告を出している危険地域だ。
危険レベル・ポイント
【危険レベル】 ●全土(首都バマコを除く) レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(継続)●首都バマコ レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)(継続)
【ポイント】 ●マリでは、2020年8月及び2021年5月、マリ国軍の一部兵員による2度の武力政変が発生するなど、政治社会情勢が不安定となっています。 ●首都バマコにおいて、イスラム過激派組織によるテロの脅威の南下・拡大に伴う治安情勢の急速な悪化の兆候が見られます。 ●首都バマコを含むマリ全土において、テロ・誘拐事件等の不測の事態に巻き込まれる高い脅威があります。どのような目的であれ渡航は止めてください。また、レベル4の地域に既に滞在されている方は、直ちにこれらの地域の外(安全な場所)に退避してください。
外務省サイトより
マリ北部・中部で活躍しているのはISIL関連組織である「ISILサヘル州」(旧称「大サハラのイスラム国」(ISGS))をはじめとするイスラム過激派組織。これにテロ攻撃や部族間抗争が頻発している状況。
一時期は、国連PKOが介入していたけれども、2023年12月末までに完全撤退。マリ国軍・トゥアレグ武装勢力・イスラム過激派の三つ巴の激しい戦闘が連日のように繰り広げられているとか。そりゃ渡航禁止になるよ。
軍事政権はマリの掌握ができない
マリ国軍がクーデターによって軍事政権を発足させたのが2020年8月。
さようならフランス、こんにちはロシア
複数のクーデターは、フランス語圏の国々でフランスに対する一般的な反感が高まる中で起きた。フランス語圏の国々では、フランス企業が広く進出していることや、共通通貨CFAフランがフランスのユーロに固定され続けていることなどを指摘し、多くの人がフランスを新植民地主義的傾向にあると非難している。
マリ、ブルキナファソ、ニジェールの政権奪取以来、軍政はこうした大衆感情を煽り、パリを悪く見せ、関係を断絶してきた。
Aljazeeraより
で、フランス軍が撤退したあとに入ってきたのが、ロシア。ワグネルがロシア政府からの依頼を受けてマリの最前線に。
ワグネルはアフリカ軍団と名を変えて、マリを中心とした地域に居座って犯罪の限りを尽くしているとかなんとか…。でも、テロ組織ISILがこれに輪をかけて酷いので、現地では歓迎されている側面もあるとか。
マリの隣国ブルキナファソでは、テロ組織ISILが領土を掌握したのでこれを奪還するために当局が総動員令を利用して弾圧紛いのことをやっているらしく。
4月中、ブルキナファソ当局は暴力の拡大を抑制し、イスラム武装集団に奪われた領土を奪還するためと称して「総動員」令を延長した。過去数カ月間、ブルキナファソ当局はこの法律を濫用し、反乱鎮圧作戦で批判者、人権擁護者、治安判事とみなされる数十人を強制的に徴兵、恣意的に逮捕、誘拐しており、強制失踪に相当する可能性が高い。
https://www.globalr2p.org/countries/mali
当然ながら、マリの情勢も不安定化に拍車をかけている模様。
7月下旬、マリ北東部のティンザワテンで、FAMa、ロシアの準軍事組織、分離主義トゥアレグ運動連合の間で暴力行為が発生した。この攻撃を受けて、マリはブルキナファソ空軍の支援を受けて空爆を開始し、民間人が死亡したと報じられている。8月の空爆では、11人の子供を含む21人の民間人が死亡したとされている。
https://www.globalr2p.org/countries/mali
文脈から分かりにくいが、2024年7月には暴力行為が発生し、マリ国軍はブルキナファソ空軍の支援を受けて空爆を開始。自国民を虐殺するに至ったと言うから、目も当てられない。
荒唐無稽な主張?
うーん、ザ・サンの記事をこれ以上翻訳して読む意味がよくわからないので、各自で読んで欲しい。主張の骨子としてはマリ国軍による告発で、ウクライナがマリの反政府勢力に加担していたのだ、ということらしい。
しかし、ウクライナはどうやら情報を流したことは認めている模様。
マリがウクライナと断交、ワグネル襲撃で反体制派に情報提供
2024.08.05 Mon posted at 11:51 JST
西アフリカのマリは4日、ウクライナとの国交を断絶すると発表した。7月にロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員が襲撃された事件に関連して、ウクライナがマリの反政府武装勢力に情報を提供したことを受けた措置。
マリ暫定政権の報道官は、ウクライナの敵対的姿勢を非難すると発表した。マリが一貫してロシアとウクライナの間の危機の平和的な解決を呼びかけてきたにもかかわらず、ウクライナがそれをないがしろにしたとしている。
ウクライナ保安局(SBU)は先に、ワグネル襲撃に関してウクライナ政府がマリの反体制派に情報を提供していたことを確認。ウクライナのテレビを通じて7月下旬、「反体制派は必要な情報を入手し、それによってロシアの戦争犯罪集団に対する軍事作戦を成功させることができた」と発表していた。
CNNより
ふーん、西アフリカのワグネル残党を駆逐する為に、ウクライナ保安局から情報が流されたということか。
ええと、この時期のウクライナ関連の記事というと、こんなのを紹介しているね。
時期的にはウクライナがロシアへの越境攻撃を実施する直前辺りの時期で、ワグネル襲撃の情報を流したのもこの時期だとすると、おそらくはウクライナがロシアの軍部の情報アクセスできたタイミングだとも言える。
当然ながら、ウクライナ側も開戦時から情報収集には努めていたと思うのだが、ワグネルの影響力を削ぐ必要があって、アフリカ軍団への打撃を考えた可能性は、アリといえばありだ。
状況証拠に過ぎないけれどね。
ウクライナ・ヘイト
ただ、直接的な証拠はともかくとして、間接的な関与はあったような事が書かれている。まあ、でもサンだから割り引いて話を読んでいこう。
It is worthy of note that after its independence from the Soviet Union in 1991, Ukraine was in dare need of money, and as a result, it became a ‘rogue state’ of sorts, because it did not have any scruples selling arms to any buyers-State and Non-state actors, in the developing countries, but most especially in Africa, South of the Sahara.
As a result, the region became a dumping ground of Russian weapons.
~~対訳~~
1991年のソビエト連邦からの独立後、ウクライナは資金に困窮し、その結果、発展途上国、とりわけサハラ砂漠以南のアフリカで、国家や非国家主体といったいかなる買い手にも武器を売ることに何のためらいも持たなかったため、一種の「ならず者国家」となったことは注目に値する。
その結果、この地域はロシア兵器の捨て場となった。
The Sunより
ここの下りは、確かにそういう歴史はあったと思う。ウクライナ政府は独立後に腐敗しきっていて、ロシアから受け継いだ兵器を世界にばら撒いた。その一例が、韓国のロケットエンジンであり、支那の空母「遼寧」である。
実例があるだけに、否定しようもない話だよね。おそらくはアフリカへの介入はロシアと肩を並べて一緒にやっていたのだろう。独立後も継続していたとしても何の不思議もない。
A clear example was the involvement of Ukrainian mercenaries in the civil war in Sierra especially in the early 1990s on side of the rebel Revolutionary United Front, RUF, which was fighting the government of Sierra Leone, although they were also involved in the diamond business.
~~対訳~~
特に1990年代初頭、シエラレオネ政府と戦っていた反政府武装勢力「革命統一戦線」(RUF)の側で、ウクライナの傭兵がシエラの内戦に関与したのは、その明確な例である。
The Sunより
ふーん。記事を読む限り、この教授の主張には何ら裏付けらしき話は出てこない。ただ、過去にウクライナは悪いことをやっていたのだということのようだ。だから今回もウクライナが悪いと。
ただ、直接、武力行使に至ったという話にするには少々無理があるように思われる。そんな余裕があるかどうか。
ロシアの分断工作
それどころか、この情報はロシアの工作の可能性も高そうだ。
ロシア語のテレグラム非公式チャンネルによると、ロシア側の死者は80人に上ったとの情報もある。アフリカで活動するワグネルにとっては最悪の損失だった。ロシア政府はサヘル地域とアフリカ中部で代理勢力を利用して、西側の影響力に対抗しようとしている。
CNNより
この話、実はロシア側はかなり腹を立てていた模様。
The potential scenarios moving forward
Several important factors need be considered when analyzing the potential evolution of the conflict in Mali.
The northern part of Mali possesses vast resources of oil and gas, and the country is also rich in gold, uranium, and other natural resources. Abundant resources have made Mali an attractive target for foreign intervention. As the country is trying to bump up its infrastructure for the development of the lithium, gold, and uranium extraction facilities, the intervention of the Russian military group has been justified by the need to provide protection against the militant and jihadist groups willing to claim the resource-rich regions of the country.
~~対訳~~
今後起こりうるシナリオ
マリにおける紛争の潜在的な展開を分析する際には、いくつかの重要な要素を考慮する必要がある。
マリ北部には膨大な石油・ガス資源があり、金やウランなどの天然資源も豊富である。豊富な資源は、マリを海外からの魅力的な介入の対象にしてきた。同国はリチウム、金、ウランの採掘施設開発のためにインフラを増強しようとしており、ロシア軍グループの介入は、同国の資源豊富な地域を狙う過激派やジハード主義グループから保護する必要性によって正当化されている。
IARIより
ここ最近、ロシアの製油所がかなりウクライナ軍によって破壊されているニュースはいくつか紹介したが、マリ共和国の豊富な天然資源もロシアにとっては資金源になっていたのではないだろうか。
まあ、ワグネルを派遣して地域軍化するくらいだから、よほどの権益があるのだろうことは予想される。ワグネルだって慈善団体というわけではないのだ。商売になるからこそ、そこにいるのである。
そして支那も関与
ノンリコがマリ共和国と軍事協定
そして、ちょっと厄介なニュースも引っ掛けた。
Mali signs substantial military agreement with Chinese firm
3 Sep 2024 21:40
Mali has signed a contract with a Chinese firm for military equipment, training, and technology transfer.
The agreement was signed on Monday by Mali’s Defense Minister Sadio Camara and the head of the Chinese firm Norinco in Beijing.
~~対訳~~
マリ、中国企業と実質的な軍事協定に調印
マリは中国企業と軍事装備、訓練、技術移転に関する契約を締結した。
この契約は月曜日、マリのサディオ・カマラ国防相と中国企業ノリンコの代表が北京で署名した。
english.almayadeenより
うーん、このタイミングでねぇ。
確かに支那がアフリカ開発に力を入れていたのは事実で、何年も前から様々な投資をやってきているのだが、このタイミングでマリとの関係強化とは。
Xi reaffirmed China’s support for Mali’s economic development and encouraged Chinese investments in various sectors. Colonel Goita expressed gratitude for China’s assistance and reiterated Mali’s commitment to the one-China principle while seeking to deepen cooperation across multiple fields.
~~対訳~~
習近平国家主席は、マリの経済発展に対する中国の支援を再確認し、様々な分野への中国の投資を奨励した。ゴイタ大佐は、中国の援助に謝意を表明するとともに、マリが一帯一路の原則を堅持し、多方面にわたる協力の深化を目指すことを改めて表明した。
english.almayadeenより
この話、習近平氏が出てきた時点で、ああ、支那・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)サミットの関連だろうなと。

当然ながら、支那としても引っ掻き回すチャンスではあるのだが。
支那に狙われるアフリカ大陸の資源
もちろん、チャンスを見逃さすに行動できるのは、国家としては素晴らしいことだとは思う。が、敵側に回る存在だから、結構厄介なんだよね。
SA, DRC again back China’s claim over Taiwan
03 Sep
South Africa, the Democratic Republic of Congo (DRC), Mali and numerous other African countries reiterated their support for China’s claim on Taiwan ahead of the Forum on China-Africa Cooperation (FOCAC), which gets under way on Wednesday.
Under the One-China policy, China considers Taiwan to be an inalienable part of the Republic of China.
~~対訳~~
SAとコンゴ民主共和国、中国の台湾領有権主張を再び支持
南アフリカ共和国、コンゴ民主共和国(DRC)、マリ共和国をはじめとするアフリカ諸国は、水曜日に開催される中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)を前に、中国が主張する台湾への支持を改めて表明した。
一帯一路の方針の下、中国は台湾を中華民国の不可侵の一部とみなしている。
news24より
これ、思ったよりも大きな構図が見えてきて嫌な感じだな。ここで台湾の話が出てくるとなると、日本も無関係とは言えないわけで。
お題として頂いた、ウクライナがマリ共和国への「兵器横流し」という話があるかないか?ということで言うのであれば、おそらく現状出回っている情報を統合して考えると、無い。ただ、ワグネルの情報を流して、反政府組織を焚き付けた可能性は高そうだ。
そして、過去にはウクライナからマリ共和国にロシアの老朽化兵器を横流ししていた可能性はあるので、マリ共和国で逆恨みを買っている可能性はあるだろう。その兵器はおそらく反体制派に渡っているだろうが…、それはロシアから直接流れたパターンと支那経由で流れたパターンとかもあるので、ウクライナだけを悪者にするのは無理があるように思う。
情報提供がテロ支援であるというのであれば……、まあ、軍事政権側から見たらそうなんだろう。ただ、今回のはロシアの情報工作の可能性のほうが高そうなんだよね。マリ共和国の軍事政権は完全にロシア側だしね。
追記
コメントを頂いて、探せなかった記事も紹介して頂いた。その中で興味を覚えたのがこちら。
ワグナー大敗におけるウクライナの役割は、アフリカでのオウンゴールだったのか?
2024年8月12日
ウクライナ外相が最近のアフリカ歴訪を終える中、同国は先月末にマリ北部の分離独立派反乱軍がロシア軍のワグナー部隊に大敗を喫するのを支援したことで、外交上重大な代償を払う危険にさらされている。
7月27日のティンザウテンでの待ち伏せ攻撃では、ワグナー戦闘員84名とマリ軍兵士47名が死亡したと伝えられている。
これは、かつて故エフゲニー・プリゴジン氏が率いていたが、現在はロシアの公式防衛司令部によって管理されている傭兵部隊にとって、痛烈な軍事的打撃となった。
わずか2日後、キエフの軍事情報局(GUR)の報道官アンドリー・ユソフ氏は、マリのトゥアレグ族反乱軍が「ロシアの戦争犯罪者に対する軍事作戦を成功させるために必要な情報だけでなく、それを入手した」と述べた。
その後の報道では、ウクライナの特殊部隊が分離主義者に攻撃用ドローンの使用を訓練していたことが示唆された。
しかし、多くのアフリカ人にとって、これは、外部勢力がアフリカ大陸を自らの対立のための血みどろの競技場として利用したもう一つの事例だった。
BBCより
ウクライナとロシアとがアフリカ大陸で場外乱闘をやっているという話で、その事を指摘されてウクライナのオウンゴールじゃないの?というような内容である。
ウクライナのドミトロ・クレーバ外相は先週、マラウイ、ザンビア、モーリシャスを歴訪した。しかし、ECOWASとセネガルからの厳しい言葉を受けて、外相は西アフリカで本格的な和解交渉に取り組まなければならないかもしれない。
サハラ以南のアフリカ諸国の多くの政府(モスクワを個人的には信用していない政府も含む)は、おそらくキエフの役に立たない外部軍事冒険主義と見なすだろうが、これは過去2年間の平和的なウクライナ外交を通じて苦労して培われた善意を消し去る可能性がある。
BBCより
コレに先だって、ウクライナはアフリカ諸国に働きかけを行っている。
ウクライナ、ロシアに対抗するためアフリカ全土に大使館を開設
2024年4月12日午前8時50分
ウクライナは、モスクワの影響に対抗するためアフリカでの存在感を高めようとしており、コンゴ民主共和国に大使館を開設した翌日、木曜日にコートジボワールに大使館を開設した。
マクシム・スブフ外務次官は、ウクライナ語での演説のフランス語訳によると、「ウクライナとアフリカ、ウクライナとコートジボワールの関係の新たな歴史に、輝かしい新たなページが記されつつある」と述べた。
同氏はさらに、新たな大使館の設置は「ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の、アフリカにおけるウクライナの外交的プレゼンスを拡大するという指示」の結果であると述べた。
kyivposより
日本政府がやっていたとしたら「自国が大変な時に、アフリカに支援なんて何を考えているんだ」という風に怒る人が出てきそうな話だが、ロシアの活動を抑える上でアフリカに外交的な楔を打ち込むことは有用である。
ディキイ氏は、キエフにはアフリカ政策はないが、ロシア、特にワグナーとは決着をつけなければならない問題があると主張している。
しかし、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の政権は、物事をそれほど単純に捉えていないかもしれない。
なぜなら、ロシアはモスクワに対する反撃が戦場だけで行われるのではないことを知っているからだ。外交と貿易も重要だ。
そして2022年の侵攻直後、キエフは特にアフリカに関してこの真実を痛感した。
その年の3月2日の国連総会では、アフリカ加盟国54か国のうち侵攻を非難する投票を行ったのはわずか28か国だった。
BBCより
国際社会を動かすためにも、アフリカの存在が無視できないものであったからだ。更に、ロシアの資金源ということにもなっているため、そのルートを遮断することはウクライナにとっては戦略的に重要だと、そう判断下のだろう。
とはいえ、ウクライナの判断、マリ共和国の反政府勢力への資金提供がどんな結果をもたらすのか?というと、ウクライナ支援国に対して「自分たちの行動は間違いだったのか」という疑念を生み出すことである。
そんなリスクを承知の上で判断したという可能性は否定できないが、ウクライナはアプローチを少々間違えた可能性は否定できない。
そしてキエフは外交協力以上のものを提案している。
サハラ以南の8カ国はすでに「ウクライナからの穀物」食糧援助計画の恩恵を受けている。
また、開発援助を強化し、双方向貿易を強化し、アフリカの学生により多くの大学の入学枠を提供することも計画している。
ロシアの傭兵を標的とした物議を醸す軍事冒険は、ウクライナがサハラ以南アフリカでの幅広い前向きな戦略から得ることを期待している外交上の好意と経済的利益のすべてを危険にさらす可能性がある、判断を誤ったリスクのように思われる。
BBCより
ただ、長期的に見てこの選択が正しかったか否かという視点はまた別にあると思う。その結果は、将来明らかにされるのだろう。
コメント
木霊様ありがとうございます。
いや、よく要約されてわかりやすかったですよ。ウクライナからの兵器は、まぁ冷戦終結後の混乱期の事で、そりゃぁロシアもかなり大々的にやってましたし。(兵器を輸送するロシアンパイロットへのインタビューをヒストリーチャンネルか何かで観た記憶かある)そこはどっちもどっち。
嫌な話が出てきたのは中国のノリンコ。
純然たる兵器産業ですね。1990年代に、ノリンコの射撃場で射撃した事がある。金を払えば対空機関砲から重機や無反動砲まで撃たせてましたよ。
チェコのスコーピオンみたいな旧東欧兵器から、M16A2のコピーまであった。当時のパチモン中国の最たるものでしたが、ソ連崩壊後の東欧からの余剰兵器流出とは別に、当時からコピー兵器を作りまくり、親西側の途上国まで売っていたはず。東南アジアで射撃場に紹介してくれたノリンコのセールスに再会した事があるもの。
だとすると、想像以上に古くから、中国のアフリカへの兵器売却は進んでいたと考えられるですね。
これはワグネルのアフリカ軍団の武器兵站が、本国いがいの何処の関与かを裏付けしているのでは?
ここはさすがは木霊様と思いました。
ノリンコがワグネルに弾薬や武器を供与しているとなると、かなり厄介な話ですね。
因みに情報提供が国際法的にテロ支援になるのかは微妙なところでは。だって「それ」を違法としちゃうと、第三国が停戦交渉にもちかける事に枷をはめてしまうと想うんですよ。現実的に。
その程度は交渉のテーブルにつける段階で、信用を得る為にどこの国も裏でやってますよ。相手が反政府組織というのは瑕疵がつきますけれど。でも英国とIRAとアルスター義勇軍をデーブルにつける時に、米仏も似たような事をやってたと想うんですね。
ましてやウクライナは戦争当事国です。敵国の勢力が資源貿易するのを断つ為に、情報工作したのならば、誰も罪を問えない気がする。
それと、やはりロシアの情報工作の疑いは記事を読んで濃厚に感じました。
ただ中国の大手兵器産業が、そこに1枚噛んでるのが、非常に嫌味ですね。
という事で、今回は掘り出してくださったネタを含めて有益な記事を読ませて頂きました。重ねて御礼申し上げます。m(_ _)m
一言。月給100万円弱につられて行かないで良かった(笑)逃げ足の速さだけが取り柄なので(笑)
今回のお題は、力及ばすでした。
やはり、日本語で情報が出ていないと調べるのは中々苦労しますね。
そして、情報の精度という意味でも少々問題はあり、という感じですかね。
ただ、マリ共和国に関して非常に勉強になりました。
また、渡航されなくてよかったなぁと。
意図せずして支那の関与まで臭う記事が出てきたわけですが、相変わらず手広くやっていますね、あの国は。
追記)1980年代初頭でしたかね、コンゴ動乱時のワイルド・ギースを率いていたマイク・ホア大佐が、セイシャルでのクーデター請負で失敗して、傭兵隊長を引退したのは。1970年代あたりまでの白人傭兵は、コンゴでもアンゴラでも、基本的には違法でした。私兵として他国で武力介入するのは違法でした。だから米国のソルジャー・オブ・フォーチュン誌(傭兵御用達雑誌)とかには「鉱山の警備」とか「武装警備員の訓練教官」などのグレーな用向きで傭兵募集広告を載せてました。
そこが変わったのがイラクてのPMCで。
あそこから合法的に軍事支援の民間企業が市場から資金調達する流れが出てきたと。
んで、その為に後方支援や兵站線の護衛などの「セット・ビジネス」が普通になった。そこがレットチーム側にも引き継がれ、米国のブラックウォーター社とかと遜色ない企業活動をしていると言う事で、とても厄介な火種だと思います。
いや、色々詳しいですね。
コンゴ動乱の話も調べてみましたが、実に意味不明な展開というか。
何故、西側諸国はアフリカの問題を簡単に解決可能だと思うんでしょうかね。
ウクライナ戦争勃発後、西アフリカで一連の動きが活発化したのは事実です。
7月に発生したマリ共和国でのワグナー傭兵殺害は、全体のほんの一部でしょう。
サンはソースとして厳しいので、現地に近い記事から。
https://www.africanews.com/2024/07/30/mali-nearly-50-wagner-fighters-killed-in-an-ambush/
昨今の西アフリカでの紛争拡大は、大まかにはフランス、フランス寄りの西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、ウクライナ(NEW!) vs.マリ、ブルキナ・ファソ、ニジェールの各国軍事政権、ワグナー(ロシア)という構図で進んでいて、フランスを追い出したマリ、ブルキナ・ファソ、ニジェールの反フランス3か国は、いまはロシアを後ろ盾にしているようです。現在のアフリカ・ワグナー(いまの正式名称は’アフリカ集団’)はロシアの先兵です。
さてウクライナは、アフリカ経営で行き詰まっているフランスを裏から支援するために、フランスの援助で、アフリカ諸国との関係強化に乗り出しました。特に、サハラ以南のアフリカ諸国は、安価なウクライナ産小麦大麦のお得意様なので、関係強化に異論はないでしょう。
https://www.kyivpost.com/post/30995
この記事がAFP(Agence France-Presse)からの転載であることには要注意です。アフリカでの対ロシアが念頭にあることは言わずもがなでしょう。
他方反フランス3か国は、マリ北部でのワグナー傭兵襲撃も含め、反フランス3か国内での反政府ゲリラの活発化が、コート・ジボワールのウクライナ大使館に支援されていると非難声明を発表しており、3か国のうちマリとニジェールはウクライナとの国交を断絶しました。ECOWASも、ウクライナによる西アフリカへのあからさまな軍事介入を非難しています。
https://www.bbc.com/news/articles/c78ld18lgr9o
要するに、ウクライナはフランスと握って、ロシアとアフリカで場外戦をしているわけです。ゲリラに武器と情報を流して、フランスを排除した3か国でのテロを裏で支援しているのです。
日本は、アフリカを引っ掻き回すようなウクライナへの支援から手を引くべきですね。米国の言いなりになっていると、必ずあとで後悔しますよ。
なるほど、興味深い記事をありがとうございました。
特に最期のBBCの記事は面白いですね。
ウクライナへの支援がアメリカの言いなりであるのか?という部分には疑念はあるものの、ウクライナが善なる側であるという認識は確かに危険ですね。
日本政府はどの程度情報収集できているのでしょうか。
日本のメディアがまるで報じないので、日本人にはいまもアフリカは遠い世界ですが、
西アフリカでの紛争は、安保理で審議されているので、日本政府は現地事情を把握しているでしょう。また日本の五大総合商社がアフリカのそこかしこに支店を構えていて、必要な時は情報を提供してもらっているそうです。商社のほうが大使館より現地事情に詳しいですから。
ちなみに、米国務省が紛争調停に乗り込みましたが、悉く失敗していました。いまの米国はアフリカではロシアと中国の攻勢に押されっぱなしです。
EUは状況を静観していますが、イタリアのメローニ首相だけは黒幕のフランスを辛辣に非難しました。曰く「フランスはアフリカを搾取するのをやめろ」と。
これら一連の動きから、東・中央アフリカなどでも紛争が活発化し始めまています。
アフリカも中東も不安定ですよね。
何が起こっても不思議じゃない状況になってきていますね。
EUも各国の情勢が不安定なので、余計なことをしている場合じゃないのですが、フランスなどは宗主国気取りですから無視もできないようですね。
アメリカは中東でも調停に失敗しましたが、アフリカでもやらかしていますね。
押しつけがましいアメリカよりも、武器や金をくれる支那やロシアの方が嬉しいのは間違いないでしょう。ウクライナも食糧を売ってくれるらしいので、アフリカとしてはニッコリですね。
なお、僕が聞いた話では、アフリカの情報は都市部の情報の収集はやれているようですが、地方の部族からの情報は入らないらしく、全体的な構図が見えないとかなんとか。まあ、現地の支社も情報収集専門というわけではありませんから、仕方がない面はあるのでしょうね。