今回、おそらく初の試みだったと思うのだけれども、政府が側の情報の出し方について初動に失敗し、徒に騒ぎを大きくした印象はある。
南海トラフ巨大地震臨時情報、82%が肯定的 期間1週間は「妥当」69% 共同世論調査
2024/8/19 18:26
共同通信社が17~19日に実施した全国緊急電話世論調査によると、南海トラフ巨大地震の発生可能性が通常より高まったことを知らせる南海トラフ地震臨時情報について、「可能性が少しでも高まったなら、出してほしい」と回答した人が82・1%に上った。「可能性が低いなら、出さないでほしい」の16・1%、「分からない・無回答」の1・8%を大幅に上回り、発表を肯定的に受け止める人が多いことを示した。
産経新聞より
一方、この記事、報道としては割と珍しいタイプの内容だと思う。要は政策評価であり、この手の評価的な記事は余り見かけない気がする。
情報周知が徹底できていない
注意期間は終了
8月8日16時43分頃に日向灘を震源とするマグニチュード7.1(モーメントマグニチュード7.0)の地震が発生し、ひずみ観測点で大きな歪みを観測したことから、気象庁が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。
当初から、1週間程度注意して欲しいと期間を区切っていたが、これは「文脈的に読み取って下さい」という言い回しであったために、分かりにくかった。
- 南海トラフ地震臨時情報(調査中) 令和6年08月08日17時00分
- 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意) 令和6年08月08日19時15分
- 南海トラフ地震関連解説情報(第1号) 令和6年08月09日15時30分
15日の第7報まで出ているのだが、初動の3回を紹介していく。
南海トラフ地震臨時情報(調査中)
** 見出し **
8月8日16時43分頃に発生した地震と南海トラフ地震との関連性についての調査を開始しました。南海トラフ地震で被害が想定される地域の方は、個々の状況に応じて、身の安全を守る行動を取ってください。
~~略~~
1カ所以上のひずみ計での有意な変化と共に、他の複数の観測点でもそれに関係すると思われる変化が観測され、想定震源域内のプレート境界で通常と異なるゆっくりすべりが発生している可能性がある場合など、ひずみ計で南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる変化を観測
初動で出した情報はこれ。すでにひずみ計での情報が出ている。この話が中学生の理科レベルの話なのだけれど、正確に伝わっていない印象である。

こんな感じの事を中学校の理科の授業で習ったと思うのだが、このプレート境界を観測しているひずみ計で優位な変化を観測したというのである。


……気象庁さぁ、こんな詳細な情報を出して、誰が注目するのよ。僕は注目したけれども(不本意ながら、お盆期間中に気がついたのだが)。
まあいいや。
で、こうした変化を見つけた気象庁が、過去の巨大地震の統計データに基づいて、「リスクが高まっているよ」と情報を出したのが、今回の話の経緯なのだ。
過去の世界の大規模地震の統計データでは、1904年から2014年に発生したモーメントマグニチュード7.0以上の地震1,437事例のうち、その後同じ領域でモーメントマグニチュード8クラス以上の地震が発生した事例は、最初の地震の発生から7日以内に6事例であり、その後の発生頻度は時間とともに減少します。このデータには、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(モーメントマグニチュード9.0)が発生した2日前に、モーメントマグニチュード7クラスの地震が発生していた事例が含まれます。世界の事例ではモーメントマグニチュード7.0以上の地震発生後に同じ領域で、モーメントマグニチュード8クラス以上の地震が7日以内に発生する頻度は数百回に1回程度となります。
これらのことから、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられます。
気象庁のサイトより
これ、ウチの子供達にも説明したのだけれど、理解していないんだよねぇ。現役学生達よ!頑張れよ!
要は、変化があったので、注意喚起週間にしようという程度の話なのである。
適当だったのか
で、冒頭のニュースなのだが、共同通信社の調査では「妥当だった」と。
巨大地震への注意を呼びかける1週間という期間についても69・4%が「妥当だ」と答えた。
産経新聞「南海トラフ巨大地震臨時情報、82%が肯定的」より
あくまで、「地震発生の確率が高くなった」、パチンコ風にいうのであれば「確変中だよ!」という訳だ。発生確率は高まったけれども、確実に地震が起こるわけではないということになる。
本日(8日)16時43分頃に日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。この地震と南海トラフ地震との関連性について検討した結果、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられます。今後の政府や自治体などからの呼びかけ等に応じた防災対応をとってください。
気象庁のサイトより
そのことは、気象庁から出る情報としてはしっかり説明されている。これを理解できない老人達が騒いだということになる。
誰とは言わないけれど、デマ情報流して平気だというのはちょっとね。
ともあれ、「地震活動が活発化」「情報に注意してね」としか言っていないので、この情報が出たからといって慌てた人達に対しては、呆れるしかない。
キャンセルで観光業に打撃
いや、情報収集をしっかりしろよといっただけなのに、何故、みんな慌ててしまうのか。
松山 道後温泉 キャンセル数千人の見込み 南海トラフ情報受け
2024年8月13日 10時48分
南海トラフ地震への注意を呼びかける臨時情報を受けて、松山市の観光地、道後温泉では、宿泊のキャンセルが数千人規模にのぼる見込みで、観光シーズンを迎えたホテル業界に影響が広がっています。
「道後温泉旅館協同組合」によりますと、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の発表を受けて宿泊のキャンセルが相次ぎ、組合に加盟するおよそ30のホテルや旅館で数千人規模にのぼる見込みだということです。
NHKニュースより
旅行控え「予想以上」 キャンセル相次ぎ打撃 巨大地震注意1週間
2024年8月15日 17時14分
初めての南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)による呼びかけが15日に終了した。政府は1週間、「地震発生に注意しつつ日常生活を」と求めたが、各地で「旅行控え」がみられた。補償はなく、地元経済への打撃が懸念される。
朝日新聞より
8日の地震以降 県内宿泊施設キャンセル約2万4000人分
08月19日 15時13分
今月8日に宮崎県日南市で震度6弱の揺れを観測する地震が起きて以降、宮崎県内の宿泊施設で予約をキャンセルされた件数は、先週の段階からさらに増えて、およそ2万4000人分に上ることがわかりました。 県は、宿泊客の呼び込みに力を入れることにしています。
NHKニュースより
気持ちは分かるのだけれども、そういうことじゃなかったんだよね。しかし、こういった点に関して、日本政府もキチンと説明をしたわけではなかった。
情報の出し方に問題がなかったかといえば、少々疑問の残る話ではある。
尤も、日本政府に責任がとれるのか?といえば、情報を出さなかったことの方が問題なので、情報を出すしかないのだが。
情報を出すに至った経緯について
何事にも最初はある
ただ、こういった話は今後、留意するということで対応するしかない。
南海トラフ地震の予測可能性の現状と「南海トラフ地震に関連する情報」の運用開始に至る経緯
政府は、南海トラフ地震が発生した際に想定される被害を少しでも軽減する観点から、平成28年6月に、中央防災会議防災対策実行会議の下に「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」(以下、「ワーキンググループ」という)を設置し、地震発生予測の現状を踏まえた防災対応の検討を開始しました。
~~略~~
以上を踏まえ、気象庁では、新たな防災対応が定められるまでの当面の対応として、平成29年11月1日から以下の対応を実施しています。
- 「南海トラフ地震に関連する情報」の発表・・・南海トラフ全域を対象として、異常な現象を観測した場合や地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価した場合等に「南海トラフ地震に関連する情報」の発表を行う。なお、これに伴い、東海地震のみに着目した従来の「東海地震に関連する情報」の発表は行わない。
- 「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の開催・・・南海トラフ全域を対象として地震発生の可能性を評価するにあたって、有識者から助言いただくために、「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催する。
その後、平成30年12月に中央防災会議の有識者会議において「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応のあり方について」がとりまとめられ、平成31年3月には、内閣府が「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン(第1版)」を公表し、防災対応をとるべき3つのケースごとの具体的な防災対応が整理されました。
気象庁のサイトより
情報を出すに至った経緯に関してはこの通りで、この情報は以前から出ていたので、国民が理解しておくべき話である。
その上で、今回はこういった対応を決めて、情報を出した初めての事案ということで、混乱を招いた部分はあるだろう。
影響範囲に関する混乱
そして、問題なのはこういった情報提供に関して、国民の理解が十分に得られなかった点である。
地震の影響があるのはこの範囲だよという情報が出たのだが、政府からは「旅行を止める必要はない」というメッセージは出ていた。
林官房長官「旅行・帰省含め日常生活を継続しつ地震への備え再確認を」南海トラフ注意情報から一夜明け呼びかけ 迷惑サイト誘導注意も
2024年8月9日 金曜 午前11:27
林官房長官は9日午前の記者会見で、前日の宮崎県沖を震源とする地震を受け気象庁が南海トラフ地震に関する「巨大地震注意」の臨時情報を発出したことについて、「この情報は事前避難を求めるものではなく、特定の期間に地震が発生するということを具体的に知らせるものでもないが、大きな地震の発生が続く可能性に備えて、日頃からの地震への備えの再確認や、地震が発生したらすぐに避難するための準備を対象地域の皆様に呼び掛けるものだ」と述べた。
その上で「夏休みに伴う旅行・帰省なども含めて、日常の生活における社会経済活動を継続しつつも、家具等の転倒防止対策、安全な避難場所・避難経路等の確認、家族との連絡手段の確認など、地震への備えを再確認し、地震発生時に直ちに避難できる態勢をとっていただくようお願いする」と呼びかけた。
FNNプライムオンラインより
しかし、地方自治体はそういう風には理解しかなったようだ。
ビーチ閉鎖&花火大会中止”南海トラフ臨時情報”夏休み直撃
2024/08/09 19:59
南海トラフ地震臨時情報が夏休みの観光地を直撃しています。ビーチの閉鎖や花火大会中止を決める自治体も。
TV-asahiより
もはや訳が分からない。国民も良い迷惑なのだが、地方自治体としては過剰に反応する理由がある。何かあった場合に責任を問われるのが嫌だからである。
地方自治体の首長が如何にアホかという話なんだけれども、ただ、マンパワーが足らない地方自治体にとって、トラブルを見越して対応人員を増やすということもできないわけで。
デマを報じる
更に酷いのがメディアで、このブログでは偶に引用するダイヤモンド・オンラインが特に酷かった。
「南海トラフ巨大地震」の恐怖を煽る政府、絶対に“口に出せない”本当の狙いとは?
2024.8.15 9:30
「地震、地震って煽りすぎ」
「コロナの時と同じで恐怖を煽り過ぎて経済が冷え込んでしまう」
宮崎県沖の日向灘を震源とする震度6弱の地震を受けて初めて発出された「南海トラフ地震臨時情報」が批判を受けている。
Diamond Onlineより
引用するのばからしい内容なのだけれど、こんなデマに振り回されるのは勘弁願いたい。実際にこの他にも様々な怪しい情報が飛び交ったが、実に酷かった。その話は既に別の記事でやったのだが。
民間のテレビも色々やっていたらしいが、見ていないので知らない。
ただ、水や米などの流通に混乱が生じたようで、お米の入手がしにくくなった背景には別の理由もあるのだとされているけれども、困った話である。
国民の受け取るべき情報
そんなわけで、日本各地に混乱を招いてしまった結果にはなったために、今回の情報発信に問題が残ったのは事実だが、日本政府はある程度できることはやっていたのも事実である。
では、今回の政府側の情報発信が間違っていたのか?といえば、そうではないだろう。
「地震発生のリスクが高まった」という情報を出して、国民に何を期待したかが問題なのだけれども、これが分からない。
気象庁は「危ないかもよ」という情報は出したのだけれど、日本政府としては「日頃から地震への備えをしておいてね」というアナウンスはしていても、今回のような気象庁から出す情報に関して「特別になにかやってね」という事にはしていない。

結局のところ、「自主避難するときの参考にしてね」ということのようだね。
分かりにくいメッセージの出し方が問題ではあるんだけど、「警戒を高めてね」以上の話をしようがないのも事実である。前にも書いたが、地震発生を予知することは現代の技術では未だ不可能である。そして、ピンポイントで情報を出せない以上は、広域に警戒情報を出すしかない。
つまり、日頃の準備が大切だということなんだ。国民としては、賢く情報を受け取る必要があるのだけれど、普段触れていない情報にいきなり触れると、混乱する人が多いのも事実だよね。リスクコミュニケーションというのは難しいものである。
コメント
木霊様のお子様たちも説明がよく理解てきてない……そか、私だけじゃないんだ。
良かった(よくない!)
冗談はさておき、「確率が高まってる」って言ってるじゃん。的中じゃねえっての。
私しゃとりあえず農園の畑の真ん中に、浄水器や医療品やサバイバルキット詰めた箱を埋めて、神棚に御神酒して寝ました。
防災バックとか巨大地震きたら家中がワチャワチャになるので取り出せない。(神戸震災の経験者が言ってた)んで、来る時はもう運なので仕方ない。運がつきてなければ来ても死ぬことはない。なので、そうそう、とりあえず休耕地にトイレを幾つか掘りましたね。慌てて用意でけんものすから。
なので最低限の事をして居直るのがよいと思いますね。そのほうが腹が据わる。
いえ、気象庁の出している文章にきちんと目を通すと、しっかり書かれてはいます。
書かれてはいますが、政府がしっかりしたメッセージを出して、報道がそれを国民に伝えていないというのが問題だと思います。
もはや、民間に頼ってもダメなので、政府広報は情報伝達手段の一環として専属の報道官を置いて、政府からのメッセージを届ける努力をすべきではありませんかね。
官房長官がその役目を果たしていますが、あれは政治的に過ぎて、いまいち情報拡散に役立っていないように思えます。
大切なことは首相が前に出てきて喋るか、専属の報道官を立ててその人に正確に喋らせるべきなんではと。アメリカはホワイトハウス報道官を置いていて、アレも形骸化している部分はありますが、学ぶべき部分もあるように思えます。
こんにちは。
やってはいけない事。
警報等を出す担当者を、誤報等で過度に叱ること。
誤認誤報は常にある、一度失敗を恐れてしまうと、次から「正しい状況」でも報告を躊躇うか、少なくとも遅くなる弊害が必ず発生する。
今回の件は、まさにこれだと。
ミサイル警報と同じ流れですよね。
狼少年は困るけど、警報出ないのはもっと困る。
地震もミサイルも「臆病なくらいでちょうどいい」(byカイ・シデン@ア・バオア・クー)
日本は、災害も戦争も今やホットポイントである事を、国民に周知徹底する、というか、国民がもっと知るべきですよね。
七面鳥は、ソロキャン道具もサバゲ参戦も、生き残るための訓練と準備と言い訳してやってますが、平和ボケが本当に多すぎる……
※だからといって、積極的に戦闘に参加する気はないです。それは、本職の足を引っ張るから絶対にやっちゃいけない。
※緊急持ち出しは、玄関と、車の中にそれぞれ置いてあります。車は最後の砦になりますから(雨風しのげるし、Hevなら電源取れてなんなら炊飯器も使える)。
こんにちは。
そうですよね、担当者を攻撃してはダメだと思います。
誤情報だって出すことはありますが、直ぐに訂正してくれれば良い話で。
左派は「事態が緊張している」という事実を報じると文句を言い出しますが、それに押し負けてメディアも声が大きい方に流されるという風潮なんですよね。