イギリスの暴動は、一部で「テロ」ではないかという話も出てきた。
ロンドン警視庁の元テロ対策トップ、英暴動の一部は「テロの領域」と
2024年8月6日
イギリス各地で1週間近く続く騒乱について、 かつてロンドン警視庁でイギリスのテロ対策を統括したニール・バス元副総監は5日、一部の暴力行為は「一線を越えてテロリズムの領域に達した」とBBCに話した。
BBCより
この話は別の記事の追記で紹介させてもらったし、確証のある話というわけでもない。だが、リスクはしっかりと考えるべきだ。
ネットリテラシーが問われる話
極右勢力の投稿が影響したか
このBBCの話、ロンドン警視庁のテロ対策本部長経験者の談話として出ているだけで、イギリス当局が認定した話ではない。
つまり、現時点では「可能性」の段階である。
話の要旨は、極右活動家の扇動によって暴動が起こった可能性がある、と、そんな話だ。
現在の一連の暴力行為についてバス氏は、「ソーシャルメディアを通じて拡散されたうそ」がきっかけになったと指摘。「そのことについて、何かしら対応が必要だ」と述べた。
~~略~~
ソーシャルメディア「X」(旧ツイッター)上では、極右活動家のトミー・ロビンソン(本名スティーヴン・ヤクスリー=レノン)元受刑者が週末の間、何千人ものフォロワーに対して扇動的なメッセージを投稿していた。ロビンソン元受刑者は現在、キプロス滞在中で、プールでのんびり寝そべる姿が報道されている。支持者への扇動メッセージはすべて、キプロスから発信されたもよう。
ロビンソン元受刑者のXのアカウントは凍結されていたが、Xを所有するイーロン・マスク氏が昨年11月に復活させていた。
BBC「ロンドン警視庁の元テロ対策トップ、英暴動の一部は「テロの領域」と」より
現時点で、煽ったポストと実際の暴動との因果関係は証明されていないらしい。ただ、トミー・ロビンソンことスティーヴン・ヤクスリー=レノンには前科がある。
ただ、「単なるデマ」で片付けるにはちょっと問題が大きく、対処が必要だと、バス氏は訴えている。
ソーシャルメディア大手が責任ある行動をとらないのなら、各社の資金源を断つよう、広告主に広告出稿の中止を「働きかけるべき」だとバス氏は述べた。
また、憎悪に満ちた過激主義に関連する法律には、埋めるべき溝があるとバス氏は指摘した。それによって、特にロビンソン元受刑者が「地中海のサンベッドから暴力行為を美化し、作り出す」のを、阻止する必要があるからだという。
BBC「ロンドン警視庁の元テロ対策トップ、英暴動の一部は「テロの領域」と」より
SNSのプラットフォームに「責任を果たせ」と、バス氏は訴えているわけだ。ただ、プラットフォーム側としては、全ての言論に干渉することは不可能だし、AIで特定の単語を弾くだけならばともかく、文脈から判断して言論を止めさせるというのも難しい。
つまり、打つ手はさほど多くないということになる。
デマ製造機の人気
一般的な傾向として、派手なデマを振りまくアカウントのほうが人気が高い。トミー・ロビンソンがどうかは知らないが、そういった派手なパフォーマンスこそがウケるというのが、匿名SNSの風潮となっている。
そういえばこの人、有罪判決受けているってな話なんだけど、一体何の罪で?
イギリスの極右著名人、法廷侮辱罪で有罪 ムスリムやアジア人を標的に
2019年7月12日
英ロンドンの中央刑事裁判所(刑事法院)は11日、極右政治団体「イングランド防衛同盟(EDL)」の元リーダー、トミー・ロビンソン(本名スティーヴン・ヤクスリー=レノン)被告に対し、法廷侮辱罪で禁錮9カ月の実刑判決を言い渡した。
BBCより
ん?法廷侮辱罪?
被告は2018年5月、未成年に性的加害行為を行った集団に対する北部リーズでの公判で、被告の様子などをフェイスブックで配信した。刑事法院はこれが「自警団的な行為」を助長し、公判を妨害したとして、5日に有罪を言い渡していた。
ロビンソン被告名義のSNSアカウントは、今回の判決を「ひどい茶番」だと批判し、抗議の時だと述べている。裁判所の前では支持者たちが警察に、缶やびんを投げつけて抗議した。
BBC「イギリスの極右著名人、法廷侮辱罪で有罪」より
また、微妙な罪で有罪になっているね。
記事によるとこのトミー・ロビンソンを名乗る人物は、結構厄介な活動家のようで、デモを主導する立場にあった時代もあったようだけれど、いつの頃からかネットで扇動することを主な活動とするようになっているのだとか。

ヘイトスピーチを繰り返して、色々なネットコミュニティから追放されているらしいのだけれど、人気はすごいらしいね。ちなみにエックス(旧Twitter時代だと思われる)も一時期アカウント凍結されていたらしい。
で、2019年の判決は、未成年に集団で性的加害行為を行ったうちの1人として起訴されて、その審理に関して報道規制がなされていたにも関わらず、裁判所の外から動画をストリーミング配信したらしい。
判事のデイム・ヴィクトリア・シャープは判決文の中で、ロビンソン被告は「メディアの行いを糾弾」するために配信を行ったと主張していると説明した。
しかし、実際には「被告を探し出し、家に押しかけ、付きまとい、監視する」よう人々をたきつけたと述べ、被告の行いによって「司法が妨害されかねない現実のリスクが生まれた」と結論付けた。
BBC「イギリスの極右著名人、法廷侮辱罪で有罪」より
なかなか悪どいが、法廷侮辱罪の適用というのは、なかなか司法も苦労した感じだ。何しろ、適用要件のハードルはかなり高いので、容易には適用されない罪だからである。
ともあれ、このストリーミング配信を25万人が視聴したらしいのだが、それだけの視聴者を稼げる程度の有名人であるとも言える。そうした、ネットで人気の活動家が、今回の暴動にも関わっていたということだ。
極右活動家と言えるのかどうかは良くわからないが、ネットの利用には長けているのだろうね。
日本国内でもデマには注意したい
で、こうした事例を見ると、日本国内でもネットで結構な影響力を持つ人物はいるわけで。
構図としては国会議員が、人気Youtuber(笑)にデマを拡散されて怒っているような感じの話だが、この件に関しては裏を取っていないので、これでどうだという話は、ここでするつもりはない。
ただ、全体的な傾向としてこの人気Youtuberは某党の党首でもあるので、彼の言葉を無条件に褒め称える層もいるようだ。だから、嘘を吹聴されたら踊ってしまう人もいるかもしれない。
似たような事例として、別な方のポストが面白かったのでこちらも紹介しておこう。
こちらは現役国会議員で、かつコミュニティノートの日本国内のタイトルホルダーでもある人物のポスト。何を言っているのやら。
こちらも現役国会議員なのだけれど、まあ妄想がたくましいというか。
ネットで著名な方が、本当のことを言っているとは限らない。ところが、インフルエンサーの影響力は大きくって、何となく「本当のことを言っているのでは?」と勘違いしがちである。
おっと、重ねて言うが、これら例示した方々がデマのインフルエンサーだということが言いたいわけではないのでご注意を。あくまで、インフルエンサーとして立ち回った時にデマを拡散しやすい立場にあるという意味だ。
そして、そうした戦い方に定評があるのがロシアなんだよねぇ。
ロシアで「ユーチューブ」の通信速度大幅ダウン、言論の自由に影
2024年8月9日午前 2:21
ロシアのインターネット監視サービスは8日、米アルファベット傘下のグーグルが運営する動画共有サイト「ユーチューブ」の通信速度が大幅に低下したと発表した。
ロシアの複数の議員らは、2022年のウクライナ侵攻以来、グーグルがロシア国内の設備をアップグレードしなかったことが、7月中旬から始まった速度低下の原因だと主張。一方、グーグルと技術専門家らは、これが事実ではないと反論している。
ロシア政府がロシア語の独立系メディアに対する弾圧を強める中、ユーチューブはオンライン上の表現の自由の場とされてきた。メディアスコープによると、ロシアでは5000万人以上が毎日ユーチューブにアクセスする。そのためユーチューブをブロックすることは、オンライン上の言論の自由に悪影響を及ぼすだけでなく、ロシアの全体的なインターネット接続や何千人ものコンテンツ制作者の生活を脅かす可能性があると専門家らは指摘する。
ロイターより
やられて嫌なことは、ロシアが独自に対処、というのがこのニュースなのだが……。まあ、この手のロシアのこういった対策は今に始まったことではない。
そして、ロシアがインフルエンサーに働きかけて色々な扇動工作をやったとしたら、なかなかに笑えない。実際に、アメリカ大統領選挙なんかは狙われがちだし、過去にそうだと思われる事例もあったんだよね。
情報の拡散が容易になって、戦争のやり方も随分と様変わりしたということなんだろう。くれぐれも、情報ソース1つだけから出ている情報を鵜呑みにするということは無いようにお気をつけ願いたい。
コメント
なんかガチでやばいオーラが……
ネットでフェイクニュースで扇動して云々は、2000年代のデスノートにも出てきたし、同じ集英社で煽ってどうにかさせるマンガもあったと思うですが、本当になっちまってる。
実際、ウクライナの映像だとしてゲームの映像を加工して投稿したら、軍が認めてしまった事件おきてます。その時はたまたま制作チームのクリエイターが気づいて申し出たので発覚したが。ISISもウエブでローンウルフ・テロリストを募っていたし。さらに言うとプラットフォームじたいがアルゴリズムを弄り扇動している可能性がある。あのカマラ・ハリスがいきなり(毀誉褒貶あるといえ)暗殺未遂事件直後のトランプとタイになるなんて。実際、トランプを画面に出にくくして、ハリスを冒頭に持ってくる操作を糾弾された直後に(少しだけど)修正した。そもそものプラットフォームじたいが信用しかねるプロパガンダ媒体化してますからねぇ。最近のUBIソフトのアサシンクリードでの「戦国日本は黒人奴隷8000人を買っていた」→「奴隷貿易は日本人に売るために始まった」→日本こそ奴隷貿易の源……みたいなデマを広めた日大准教授事件といい。
ガチで座標軸が無い(信用できない)時代に突入かと。
マンガじゃなくて現実の話なんですよね。
それも特別なスキルを持った人ではなく、一般人でも大きな影響を与える可能性のリスクがあるという。
プラットフォーム規制という方向に動き出すかもしれませんね。
それが良い未来かどうかはさっぱりわかりませんが。