昨日取り上げようと思ったちょっと興味を引いたニュースに、こんなのがあった。
農地法違反で太陽光事業者20社の交付金停止 経産省、不適切行為の早期是正促す
2024/8/5 15:15
経済産業省は5日、農地を利用した太陽光発電事業者20社に対し、農地法違反などがあったとして国からの交付金を一時停止したと発表した。固定価格買い取り制度(FIT)の交付金などが停止の対象で、不適切な行為の早期是正を促す。
産経新聞より
この話は結構酷い話で、前々から懸念を持っていたのだが。
農地で太陽光発電はアリかナシか
農林水産省で推奨されている?!
そもそも、「営農型太陽発電」というのは、なかなか厄介な態様の発電手法である。
だが、農林水産省でも「新たなスタイル」などと言いながら推奨するようなスタンスになっている。
営農型太陽光発電とは
営農型太陽光発電とは、一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立てて、上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う取組です。
作物の販売収入に加え、発電電力の自家利用等による農業経営の更なる改善が期待できます。
農林水産省のサイトより
確か、菅直人あたりも随分と推していた気がするんだが、「発電と農業を両立させる」という発想が、僕には理解できない。


「理解できないから否定する」という積もりはないんだけど、マトモな結果にはならないような気がするんだよね。
農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置し、発電と農業を両立させる「営農型太陽光発電事業」で計342件の違反を確認した。農地の一時転用許可が必要だが許可を取得しなかったり、パネル下部の農地で適切に農作物を育てていなかったりしていた。事業者名は公表していない。
産経新聞「農地法違反で太陽光事業者20社の交付金停止」より
で、実際に問題が発生したというのが冒頭のニュースなのだ。
制度見直し
冒頭のニュースに繋がるような制度見直しの動きは、年明けにもあった。
営農型太陽光発電の関連制度が見直しへ、省令改正と新ガイドラインの内容とは?
2024年01月15日 07時00分
2023年12月に、農林水産省から営農型太陽光発電に関する制度見直しについて、2つの意見公募手続き(パブリックコメント)が出されました。一つは省令(農地法施行規則)への営農型太陽光発電に関する条項の追加に関する改正案、もう一つは農地の一時転用許可において、新たなガイドラインを設けるという案です。営農型太陽光発電の制度化10年となるこのタイミングで行われた制度改正について、その背景と内容を見ていきます
スマートジャパンのサイトより
実は、こういった農業の在り方には支援金が付けられていた。
営農型太陽光発電独自の補助金が使える
補助金を使ってお得に導入できる点も、営農型太陽光発電の大きなメリットの1つでしょう。 現在、一般的な太陽光発電に国からの補助金はなく、公募している自治体も一部です。 一方の営農型は、環境省から公募されている「地域における太陽光発電の新たな設置場所(営農地・ため池・廃棄物処分場)活用事業補助金」が使えます。 補助率も設置費用の2分の1(上限3億円)と高いため、ぜひとも上手に活用していきたいです。
営農型太陽光情報提供システムcomより
しかし、そもそも競争力のある発電手法であれば、補助金など付ける必要はないわけで、そこから歪な話であることは容易に想像が付く。
実際にこんな推進の仕方をやった結果、計画では太陽光発電と農業の両立を謳っていたのにもかかわらず、実際には農業の方は放棄してしまったという事例が散見された。
営農が適切に継続されない事例を排除し、農業生産と発電を両立するという営農型太陽光発電の本来あるべき姿とするため、農地法関係法令に定められた内容その他営農型太陽光発電の実施に係る具体的な考え方や取扱いについて「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」を定めた。
スマートジャパンのサイトより
で、ガイドラインの修正が行われたというわけだ。

旨みがあったので、それなりに設置件数は増加傾向にあったが、それに伴ってトラブルも増えてきたので、規制する必要性が出てきたというのが、これまでの流れだ。
太陽光発電を巡ってはパネルの設置場所など地域でトラブルが相次いでおり、経産省は悪質な事業者に国の交付金の停止処分を適用できるようにした改正再生可能エネルギー特別措置法を4月に施行した。今後も違反行為に厳格に対応し、地域と共生した再エネの導入促進を図ると説明している。
産経新聞「農地法違反で太陽光事業者20社の交付金停止」より
で、悪質な業者を取り締まりましょうという話に繋がったわけだ。
そもそもが脱法的な発想
さて、僕自身が「営農型太陽発電」を嫌っている理由は、そもそも太陽光発電が嫌いだからとか、そういう話ではない。
そうではなくて、日本の農地は農業以外の目的で使用することが禁じられていて、その代わりに税金設定が安くなっている。農業以外で使いたければ農地転用をして、土地の地目を変更する必要があるのだ。
ところがそこを乗り越えて、「太陽光発電も出来るようにしよう」という話になっているんだけど、これってそもそも脱法行為的な発想なんだよね。いや、「脱法行為的」と書いたけれども、法律がある以上は合法なんだけれども。
こういったサイトにもメリット、デメリットが丁寧に書かれているので参考にして欲しい。

メリットを掲げて、農地を太陽光発電用に切り替えるのではなく、農業をやりながら発電もやって欲しいというのが農林水産省の狙いなんだろう。その狙いは分かる。
分かるんだけど、業者としては放棄耕作地に農地登録したままで太陽光発電して利益を得たいという発想になるよね。
そして、その分は電力会社が電線を引かなければならないし、その費用は電力需要者が負担するってな事に。
やっぱ、ナシじゃない?こんなのは。
農業従事者が減っている現状があって、何とかしたいという気持ちがあるのは分かるんだけど……、農業を企業がやる途をもっと整備した方が……。
あ、もうやってる?
いや、大企業が参入して利益ができるような構造にしようよ。会社員が農業をやる時代が来るところに忌避感を感じる人もいるかも知れないのだけれど、後継者不足で農業が先細りになっているのだから、しっかり手を入れないと。
コメント
ま、農業サボって国から助成金だけ貰う
ヤカラを増やすだけですな。
大企業が参入すりゃ変わる。
お前は農園の者だろ?
そーですが、ブランド野菜してますから、量産品とは別に料亭とかのルート商売してるし。無菌野菜工場にしても、中小がやるより大企業の方が収益性高くなるの判ってるし。工場野菜やってたのはあくまで余技てすからねぇ。
自分の所だけの何か、土壌や栽培法(韓国がすぐパクって失敗するのは主にココ)などで独自のスタイルとユーザーがいる農家は困りませんよ。大企業が参入してきてもです。
農業に関わりのある河太郎さんの怒りを買いそうなネタではあるんですが、今の日本の農業は老人ばかりで後継者がいません。
地域性もあるのでしょうが……。手を挙げてくれる大企業が居て、上手く運用してくれるのであればソレもありかと思うほど酷いところもありますよ。
農協でも支那人(或いは台湾人)が随分と幅を利かせる事態になっているところもあって、嘆かわしい状況を見るにつけ、少しでも変わって欲しいという気持ちになっている農林水産省の狙いは何となく理解できるんですよね。とはいえ、太陽光発電、アレはダメですが。
ノウハウのある農家さんは大企業が入ってきたところで、歯牙にもかけない状況かもしれませんが……。
なにか構造的に不味い気がするんですよね、今の日本の農業は。組織力のあるところは違うのかもしれませんけども。
旨いこと言語化出来ていない部分もあるので、ちょっとヤブヘビなコメントになってしまうかもしれません。その時はご容赦を。
いやいや、食糧問題として考え出し時に、木霊様の御指摘はもっともですよ。
実際、家内の弟の農園主は、某企業系(何故かテック企業)の提携でアレコレ模索しとるようですし。農協はアレでさしね。気候変動がco2原因とは思ってないですが、全地球的な周期説を取るならば、冷えようが温めようが異常気象は今後も連発する。大きな資本を導入して、
合理化を果たさないと、運輸より先に農業の方がやばいかも。これは害獣駆除などにも言える事で、産業として効率化しないとダメな分岐にいると思います。
農協もしっかりしたところはちゃんとしてくれるんですが、本当に属人的な話でありまして。
大抵の農協は縁故採用するダメな組織になっちゃっていますね。
アレは競争がない社会だからダメなので、やはり競合する民間組織の存在は必要だと思います。大資本が良いとも言えませんが、適度な緊張を作れる程度の存在は必要かと。
そして、食料生産を担う上では、民間組織に頑張ってほしいところですが…。カゴメみたいにトマトに全力を注ぐような企業もありますが、割と単一品種を求める傾向にありますから、困ったものですね。
こんにちは。
七面鳥は、今のままの「農業」はいずれ立ち行かなくなる(少子高齢化で、第一次産業が不人気の日本においては)と思っているので、「農業の工場化」に活路を見いだすべき論者であります。
農業を「農作物を作る工業的プロセス」とみなして、現場作業から何から工場と同じように管理し、「社員」を投入し、夜勤手当や休日出勤手当を付ければ、そいう発想ですね。
コスト的に見合うかどうかは、試算したことないからわからないですが……
で、その場合に、露地はともかくハウスの上にパネル載っける、のは有効活用だと思います。
ですが、畑に普通にパネル置くのは……どうなんでしょうね?明らかに日照は減るけど、それで充分って検証結果が出てるんでしょうか?リンク先見てないので……
あと、パネルのメンテもいずれ必要で、まあ、まともに発電するのは最初の5年でしょうね。
太陽電池は、「他に手段がない(人工衛星とか)時の最後の手段」だと思ってます。
※衛星だって、可能なら、太陽側と影側の温度差でスターリングエンジンでも回した方が良いんじゃないかと。
こんにちは。
農業の工業化とはなんともモヤモヤする言葉ではありますが、実際にプラント工場はいくつかありますし、成功している分野もあるにはあります。
ただ、工業製品と違って植物は結構リスキーらしく、なかなか製造方法の確立というところまでは漕ぎ着けられない模様。
畜産業もそういう意味では、前途多難ですね。
僕も太陽光発電を否定するつもりはありませんが、営農型はダメだと思います。
農林水産省も「相性が良い農作物」に関して例示していましたが、なんの情報もないところからスタートさせられるほど簡単な途ではなさそうですね。
>なんともモヤモヤする
個人あるいは零細の自営農から、ある程度の規模の会社経営化、と言う方が、七面鳥の脳内のイメージに近いかもです。
要は、きちんと固定給で雇える人事体制と、残業や夜勤、休出で作物の面倒見れる作業体制、それが出来れば、と言う話で。
高齢化した自作農から農地を借りて作業を請け負うベンチャーの話しは、WBSで見たのだったか、どこだったか……その形の発展型ですかね。
農林水産省とか農協とか、既得権益にしがみつかんと、もっときちんと未来を見て欲しいものです。
※七面鳥のアイデアがどうこう、という話は余禄なので、農家が安泰ならそれで良し。
※コメの値段も「今が高いのではない、今までが安すぎ」とも聞きますし、全国民レベルの意識改革が必要かもですね。そのために台湾海峡の戦争を利用して価格調整と統制を……いやいや(笑)<笑い事ではない。
はい七面鳥様の仰る事は事実です。
「百姓貴族」を荒川弘先生が描いてますが、とんでもない過重労働の中でデビュー前の先生がマンガ描いてたのが解る。
(あの先生のハガレンの生命感は、陳腐な言葉だが、大地に生きてきた畜産農民だからこそ描き得たと感じ)
会社化してゆかないと、農業のようなリスク(自然)と生きる職業は継続してゆけませんよ。その点においては賛成です。
たまたまですが、私の家内の一族農園は、環境条件が良く風力をかなり使えたり(太陽光などいらない)、土壌と水源の性質が作物に合うなど恵まれてます。故に
特別な作物を高価格で販売できるのですが、それでもこの異常気象や燃料高騰はキッい。このままいけば、資本力やルートの無い農家から消えてゆくのは免れません。そこを変えるには食糧戦略として国が法改正し、統合して合理化してゆくしかないのだと想うです。人はガラスやゴム食って生きられないのですから。