近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。
スポンサーリンク

人の脳が戦場になる、認知戦の現実

報道
この記事は約9分で読めます。

東京新聞が扱っているだけに、随分と胡散臭い感じになっているね。

軍事研究家・小泉悠氏が「人の脳が戦場になる」解説 「信じない人」が狙われる<認知戦インタビュー詳報>

2024年7月16日 06時00分

交流サイト(SNS)の浸透を背景に、戦争は、人々の考え方の主体となる「脳」を巡る争い「認知戦」に発展しつつある。「人の脳が戦場になる」とは、どういうことなのか。ロシア・旧ソ連諸国を専門とする軍事研究家で、安全保障問題に詳しい小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター准教授(42)に聞いた。

東京新聞より

まあ、胡散臭くないとは言わないが。

スポンサーリンク

戦争は始まっている

認知領域での戦い

この記事を見かけた切っ掛けは、JSF氏が弄ったポストをしていたからだ。

JSF氏の軍事考察は参考にはなるけど、レスバトルも好んでやられる方なので、好意的なポストなのかそうではないのかは判断しかねる。

時々、小泉氏を弄っているようだしね。なお、「全裸先生」というのは、小泉氏自身が「全裸中年男性」というSNSアカウントを使っていたことがあるからだ。

1 「全裸中年男性」が出てきちゃった。 | この戦争は、私たちの日常とつながっていて。小泉悠×糸井重里 | 小泉悠 | ほぼ日刊イトイ新聞
1「全裸中年男性」が出てきちゃった。【この戦争は、私たちの日常とつながっていて。小泉悠×糸井重里 対談】(ほぼ日刊イトイ新聞)

さておき、引用記事が一体どんな話なのかを整理していきたいと思う。

―脳が標的となる認知戦では、何が起きるのか。

「人は簡単には洗脳されない。例えば、日本人の頭の中が、ロシアや中国の思い通りに何かを信じ込まされてしまう、というのは難しい。ただ、交流サイト(SNS)は人がもともと持っている偏見や思想を先鋭化させることはできる。右寄りの人はより右に、左寄りの人はより左に。差別的な人はより差別的に。アナキスト的な人はよりアナキスト的に。それぞれの世界観を持つ人たちに、あなたが言っている通りですと、その証拠とされるものをたくさん突きつければいい。考えを先鋭化させるのは簡単。そうなると、社会の中で対話ができなくなってしまう。認知領域戦の一番のキモは、話を通じなくさせることだと思う

「(ラジオやテレビ、インターネット、SNSなどコミュニケーション手段の発達など)情報戦の破壊力を引き上げるような出来事が、20世紀の終わりから相次いでいる」

東京新聞「軍事研究家・小泉悠氏が「人の脳が戦場になる」解説」より

この下りで出てくる「認知領域戦」って一体何なのだろうか。

実は、防衛省もこの点に関して言及している。

認知領域を含む情報戦への対応

近年、国際社会では、他国国内の混乱を生起することや、自国の評判を高め、他国の評判を貶めることなどを目的として、偽情報の拡散をはじめとする情報戦に重点が置かれています。

わが国として、世論操作や偽情報の拡散を行うことは決してありませんが、他国による偽情報への対策など、情報戦対応を万全にする必要があります。

防衛省のサイトより

情報戦に関しては20世紀の戦争においても重視されていて、敵の情報及び情報システムを攻撃・攪乱・妨害する工作活動は過去の戦いでも行われていた。

例えば、ナチス・ドイツは煽動をしながら国内政治を掌握し、対外戦でもフランス侵攻の際にはフランス側に偽電話をかけて情報を攪乱するなどの情報戦を展開したとされている。

いや、20世紀より前に遡っても、ナポレオン戦争や南北戦争などでも情報戦は行われてきたわけで、日本国内でも忍者は主に情報戦を担う存在だったと言われているから、古今東西で情報戦は行われてきていると考えた方が良いだろう。

「認知領域戦」とは、こうした情報戦の一態様であると言える。

情報戦と認知領域戦の違い

では、情報戦と認知領域戦と何が違うのか?というと、これに関して統一的な定義は良く分からない。

が、防衛白書にはこんな下りがある。

認知領域を含む情報戦

国際社会において、紛争が生起していない段階から、偽情報や戦略的な情報発信などを用いて他国の世論・意思決定に影響を及ぼすとともに、自らの意思決定への影響を局限することで、自らに有利な安全保障環境の構築を企図する情報戦に重点が置かれている状況を踏まえ、わが国として認知領域を含む情報戦に確実に対処できる体制・態勢を構築することとしている。

令和5年版防衛白書より

情報戦というのは、情報を用いた相手側の攪乱を行うものだが、認知戦は世論誘導などを含めて相手の認識に対して働きかける行為である。

NATOにおいても認知戦(Cognitive Warfare)は、深刻な問題であると理解されていて、サイバー空間を使った情報戦を含み、相手の精神状態や行動をコントロールすることを目的とした活動であるとされている。

そして、これを得意としているのが共産主義なのである。特にロシアはその手法が洗練されていると言われている。

つまり、情報戦というのは誤った情報を敵側(場合によっては味方にも)に与えることで相手を攪乱することだが、認知戦というのは情報を操作することで相手をコントロールすることを主眼に置いているという風に考えると良いだろう。

よって、情報戦に認知戦は含まれるし、認知戦は情報戦が前提であると言って良い。

認知戦は人間の脳の脆弱性を利用する

もう少し整理しておこう。皆さんは確証バイアスという言葉を故存知だろうか。

確証バイアスとは、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことである。

また、その結果として、稀な事象の起こる確率を過大評価しがち(認知バイアス)になることも知られている。

人は見たい物を見る」という言葉があるが、まさにそう言うことである。

人は自分の認識を補強するのに都合の良い情報を集めがちというわけだ。

これを「人間の脳の脆弱性」として整理すると以下のようになるそうな。

  • 特定の情報が正しいか間違っているかを区別できない
  • メッセージの信頼性を判断する際、情報過多であると近道をとるように導かれる
  • たとえこれが間違っているかもしれないとしても、すでに真実であるとして聞いた声明やメッセージを信じるように導かれる
  • 証拠に裏付けられている場合、その信憑性に関係なく、そのストーリーを真実として受け入れる

こうした「脳の特性」を利用して行われるのが洗脳とよばれる行為で、それを利用して敵方に仕掛ける戦争が認知戦というわけだ。

ハイブリッド戦争に移行

この話はなかなか恐ろしいことで、意識して情報の偏りが生じないように情報処理しないと、敵方の策略に嵌まりがちである。

そのことに危機感を感じたアメリカは、この認知戦を含めた対策に乗り出した。

◆戦争は物理的な戦いと認知戦などを組み合わせた「ハイブリッド」に

「そうした多くの事例や理論を基礎に、米国は対策を練ってきた。情報の力が強まった世界でいかに非難を受けずに戦うのか。情報戦やテロ、誘拐など、普通ではない手を使ってくるであろう敵にいかに対処するのか。そして2000年代に、認知戦の考え方も取り入れ、海兵隊出身のフランク・ホフマンらが、全海兵隊員が参照できるようまとめたドクトリン(教書)の名前が『ハイブリッド戦争(hybrid warfare)』だった」

東京新聞「軍事研究家・小泉悠氏が「人の脳が戦場になる」解説」より

軍部でもハイブリッド戦争に対応すべくドクトリンをまとめたのだが、当然ながら情報を専門に扱うCIAも似たようなことをやっていた。

CIAとアメリカ軍とがどのような連携をとっているのかは不明だが、エドワード・スノーデン氏の登場によって、こうした話は明るみに出ることに。

テレビで室内の会話を盗聴――ウィキリークスが米CIA技術を暴露

2017年3月8日

内部告発サイト「ウィキリークス」は7日、米中央情報局(CIA)によるハッキング技術に関する内部資料の公開を始めたと発表した。

文書によるとCIAは、基本ソフトのウィンドウズやアンドロイド、iOS、OSX、リナックスを使うコンピューターやルーターに侵入するマルウェア(悪意のあるソフト)を武器化している。

マルウェアは内部作成のものもあるが、韓国・サムスン製テレビのハッキングに使うマルウェアについては、英国の英情報局保安部(MI5)の手助けも得ていたという。

BBCより

スノーデン氏による暴露は2012年に行われ、その告発が公開される前にスノーデン氏は香港に。2013年6月にガーディアン紙がこの内容をぶちまけ、世間を驚かせた。この時にシギントの存在が明らかにされ、スノーデン氏はロシアに亡命した。

僕自身はこのスノーデン氏の行動に、東側の勢力が関与していた可能性が高いと見ているが、根拠は何もない。

ただ、2014年にNATO戦略的コミュニケーションセンターが設置されたことを考えると、西側諸国はよほど危機感をもって対応したのではないかと。

「(米欧の軍事同盟)北大西洋条約機構(NATO)加盟国や同盟国は、2014年にラトビアの首都リガに『NATO戦略的コミュニケーションセンター』を設置し、偽情報研究の中心になっている。圧倒的に気にしているのは、やはりロシア発の情報だ」

東京新聞「軍事研究家・小泉悠氏が「人の脳が戦場になる」解説」より

偶然に時期が重なったとは思えない。

言ってみれば、これもハイブリッド戦争の1つだったのではないか。

陰謀論を東京新聞が語る

そんなわけで、ハイブリッド戦争は今正に行われているわけだが、主戦場はネット空間であると言われている。

◆陰謀論を信じやすい人は…

―認知戦で狙われる一般市民は、どういう人たちか

認知戦の研究の中で、権威や公的機関が言うことは、無条件で全く信じないという人たちが狙われやすい、陰謀論を信じてしまうという傾向があると思う」

「また、SNSは、極端な考えを持つ人々が出合う場所にもなっている。そういう人たちを組織化して情報戦の道具にしよう、と戦略家は考えると思う」

東京新聞「軍事研究家・小泉悠氏が「人の脳が戦場になる」解説」より

東京新聞では、SNSが情報戦の道具になっているという流れで説明しているのだが、正直、「オマエガイウナ」と言わざるを得ない。

工作員のイソコを放置している辺り、狙ってやっているとしか思えない。が、こんな記事を載せちゃう辺り、自覚はないのだろうね。

―日本政府に求められることは。

「仕掛けてくる側は、われわれが暮らす社会の公正さに疑問を抱かせるような情報を流してくる。一番嫌なところを突いてくる。だから日本の政府や社会が、陰謀論にお墨付きを与えるようなことをやらないことが大事だ」

「日本の政治とカネの問題とか、沖縄の基地負担、日米地位協定の不平等性とか。例えば、ロシアのプーチン大統領は、『沖縄こそアメリカが日本を占領している証拠である、日本がアメリカの従属国である証拠である』と、たびたび言及する。実際に沖縄行ってみたら分かるが、実際に不平等な状態に置かれている」

「こうした問題について、日本政府が自身を正さずにいると、他国が仕掛ける陰謀論やプロパガンダにお墨付きを与えてしまう

東京新聞「軍事研究家・小泉悠氏が「人の脳が戦場になる」解説」より

この辺りの記載が東京新聞の琴線に触れたのかも知れないが、小泉氏はロシアの工作で沖縄の分断がおこなわれているよということを言っているんだけど、大丈夫なのかなぁ。

まあ、面白い記事なので、是非とも引用元の記事を読んでみて欲しい。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ※出張が終わって通常運転に戻りました。

    「認知戦」。
    そんなもん、ベトナム戦争の頃の「ピース」運動やら、安田講堂事件やら、西側は「どっかから」常に情報戦争しかけられてるじゃないですかヤダー。

    お隣の「旭日旗」問題にしたって、アレはまごうことなき「認知戦」だと理解してます。
    昨今は、SNS等の発達により、「読解力がない」「見出しに釣られる」「よりセンセーショナルなものに誘引される」大衆が、自家受粉とエコーチェンバーを繰り返して、「ちょいと刺激すると勝手に発火する」状態になっているようにも思います。

    情報化社会も、考え物ですよね……
    ※だからといって、新聞が情報を支配し、日教組が教育を支配する時代に戻りたくはないですが。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      もはや攻殻機動隊の世界なのかと思いきや、結構古い話なんですよね。「歴史戦」も勿論その一環でありますから、気をつけましょうね、という話でしかありませんが。