以前にもこんな話が出ていたな。
「病院船」の早期運用目指し、政府が推進本部初会合
2024/7/9 11:29
政府は9日、大規模災害時にけが人を海上で治療できる「病院船」の活用に向けた推進本部の初会合を開いた。船内で活動する医療関係者らの育成や、船に積み込む資機材の確保などについて検討を加速させ、早期の運用開始を目指す。
産経新聞より
アメリカ軍がマーシー級病院船を運用していて、これを真似したいという意向はあるようだ。
病院船に使える船舶を増やす必要はあるだろう
巨大な医療船は足が遅い
そりゃまあ、あれば便利なんだろうけどさぁ。実際使えるシーンというのはかなり限定的なんでは?
初会合には岸田文雄首相や松村祥史防災担当相らが出席。岸田首相は、船上の医療活動に必要な取り組みを盛り込んだ整備推進計画案を年内をめどに策定するよう関係閣僚に指示した。
産経新聞より
先ずは、マーシー級病院船の紹介をしておこうか。

この船、タンカーを改修して、1,000床の病床、手術室12室やコンピュータ断層撮影(CT)装置などを備える大型船である。運用は、少数の民間時スタッフで維持され、有事の際には別途医療スタッフや支援スタッフを招集して乗船させる仕組みになっている。
ただ、元々タンカーであったこともあって、最大船速は17ノット程度と遅く、そして軍事作戦に使う為には小回りが効かずに防御力がなく脆弱。更に、元が石油タンカーで隔壁などがそのまま残った形で改修されているので、患者の移送などにもいちいち甲板まで移動させなければならないなど、利便性の面でも色々難のある船のようだ。
日本の現状は
なお、日本はどうかというと、現状ではおおすみ型護衛艦などが有事の病院船として運用出来る状況にしてあるようだ。
大規模災害時など「医療拠点になれる自衛艦」3選 「病院船」への変身は可能か否か
2020.03.26
2020年3月現在、いまだ収束しそうにない新型コロナウイルスの大流行ですが、そのようななかで病院船の保有議論が起きています。
~~略~~
2020年3月現在、海上自衛隊の艦船で最も大きいのが、2隻建造されたいずも型護衛艦です。全長248m、基準排水量は1万9500トンあります。艦内の医療設備は、前述のましゅう型補給艦に次いで充実しており、手術室や歯科治療室、集中治療室のほか、隔離病棟まで備え、病床数は集中治療室や隔離病棟のものを含めて35床あります。
乗り物ニュースより
実は陸上自衛隊と航空自衛隊は、それぞれ医療用の設備を持っている。

コンテナを改造して医療行為ができるようにしてあるユニットを複数保有していて、陸上自衛隊ならば野外手術システム、航空自衛隊ならば機動衛生ユニットというアイテムがあって、これを船に搭載していけば、病院船として機能するというような使い方ができるのだと言うことのようだ。
ただ、この運用は平時は問題ないのだけれど、有事になるとちょっと困る。
しかし、おおすみ型、ましゅう型、いずも型のいずれも、おもな用途がそれぞれあるため、長期にわたって病院船に転用していると、自衛隊の主たる任務である国防に支障が生じます。
そもそも戦闘を主目的にしているので、これら3タイプには船体側面に窓がありません。医療支援も、傷病者の短期収容を想定したものであるため、たとえば感染症患者の長期収容や大規模隔離などには向いていないといえるでしょう。
乗り物ニュースより
おおすみ型輸送艦が一番使い勝手が良さそうだが、それでも3隻しかないんだよね。そう考えると、輸送艦を増やして病院船対応し易いタイプを作っても良いような気はしている。
将来的には
そして、方向性としては作っていく方向のようなんだが。
病院船は、道路寸断などでアクセスできない地域や離島の周辺海上で医療を提供し、被災地の病院機能を補完する。政府は当面、新たな病院船を建造するのではなく、自衛隊の艦船や民間のカーフェリー活用を想定。災害のほか、感染症の流行時にも派遣する方針だ。
今年6月、病院船の活用を促す法律が施行された。
産経新聞「「病院船」の早期運用目指し、政府が推進本部初会合」より
うーん、確かに能登半島の事態なんかを見ると、病院船があっても良いような気はするんだよね。あとは、東日本大震災の時にも「あった方がイインジャナイの」とは思ったわけさ。
でも、病院船って普段は殆ど役に立たないわけで。やはり、輸送艦にユニットを積んで病院船にする方向で考えた方が良いのでは?専用設計しても良いのだけれど、別の用途にも使える艦にした方が良いのでは?というようにも思う。
実は、マーシー級の運用についても武漢ウイルス感染症蔓延の時に、「使えない」ってなことになったんだよね。その時は船内でウイルスが蔓延するリスクが高いから、という話ではあったんだけど。
それ以外にも、マーシー級の運用には悩むシーンが多いらしい。
そうすると、自衛隊が病院船を獲得した時に、どういうシーンでどのように使うか?ということは、意外に難しいハードルがある。例えば、病人を乗船させるところからなかなかハードルが高い。船をデカくすると、港が損傷してしまった被災地で使えなくなるという話になりがちだし、沖に停泊させて小舟を使って輸送するというのもそれなりに難しい。
そういうわけで、意外に使いにくい面はあるんだよね、病院船って。
コメント
いきなりこういう話が出てくると、「戦争対策では?」と勘ぐってしまいますよ。
日本の場合、病院船は巨大地震対策等でも有効であるとは思いますけど、
実際は、木霊さんが指摘する通り、病院船が必要とされるような緊急時には、
現役の貨客船や輸送艦を、レンタルあるいは徴用するほうが楽でしょうし、
大型の医療ユニットを開発して、それを艦船の空きスペースに載せて運用するほうが、
柔軟な対処が出来そうです。雷鳥2号のように、モジュール化されたユニットを
状況毎に組み合わせて使うという発想ですね。
以前からずっと病院船の議論はありましたが、政府として検討を始めるということです。
「なぜいまなのか」というと、やはり不安感はありますよね。
岸田氏は一体「何を知っている」のか、と、陰謀論を掲げたくなる気持ちもわかります。
居住型コンテナを積み込む方が簡易で手早いとは想うです。緊急時には巧緻より拙速ですから。コンテナは家屋に利用されるのを観ても、繋げて独自のデザインで拡張も出来る。いざとなればコンテナごとヘリでも運べる。
ただ、大型船に積み込むとなるとガンクレーンが必要ですね。自衛隊の施設科はラフターくらいは持ってるたわろうけど、数が足りてもラフターで大型船に積み込むのは手間がかかる。
で、その大型ガンクレーンの設備が整っているのって、品川港とか大阪港とか、
大型コンテナ船での荷揚げが出来る港に限られており、その手の港は幾つもない。果たしてそれで迅速な処理ができるかと言うと、それも疑問がある。
常設の医療船の船足が遅いと言っても、
じゃあコンテナを積み込む港湾施設が遠かったり、手間取るなら変わらない気がしますけれど。
コンテナ型の手術室についてもメンテナンスは必要なので、何が効率が良いかを考えて欲しいものですよね。
専用の病院船を建造したほうが有利なケースも、もちろんありそうですし。
何がベストか?という話をするのだと理解はしていますが、どうなることやら。
こんにちは。
有事はともかく、平時に遊ばせない方法、これが難しいのですよね……
ジャストアイデアですが、
「平時は離島を巡回(小笠原方面と西南方面に各1?)させておき、有事には、収容している民間傷病者は航路途中の大規模病院に収容(場合によってはそのまま)、身軽になったら全力で目的に地向かう」
なんて運用だと無駄が少ない……かな?
※離島と船を結ぶため、専用のヘリとヘリパッドは必要。何なら全通甲板でヘリパッドでもよい。
※救援物資も運べると良いので、LoLo船規格のランプも欲しい。全通甲板にトラック並べても良い。
……なんだ、「白いおおすみ級」じゃないですかヤダー。
こんにちは。
病院船を使った離島巡回ですか。
アイデアとしてはアリと思いますが、利益は出ませんし、そもそも有事になると平時業務が行えなくなってしまうと言う点がちょっと困るかも知れません。即応性が求められますので、その辺りとの整合性をクリアする必要がありますよね。なかなか難しいものですね。