これは面白い。あまり盛り上がっていないニュースらしいんだけど、目にとまったので紹介しておきたい。
防衛省 広島 呉の製鉄所跡地 “複合防衛拠点に” 市と協議へ
2024年3月5日 12時24分
広島県呉市にある日本製鉄の製鉄所の跡地利用をめぐり、防衛省の関係者が4日、呉市役所を訪れ「複合防衛拠点」を整備したいと説明しました。防衛省は跡地の一括購入に向け、日本製鉄と交渉を進めていて、市は跡地利用の選択肢のひとつとして協議することにしています。
NHKニュースより
イマイチ「複合防衛拠点」の意味が良く分からないのだが、前向きに話を進めて欲しいものである。
呉市の地域活性化の為にも推進すべき
工廠を作るべきだ
タイトルに「工廠を作れ」と書いたのだけれど、そもそも工廠というものが何かという話を少し説明しておきたい。
大日本帝国時代には、工廠と呼ばれる陸軍と海軍で直轄の軍需工場を持っていて、呉には呉海軍工廠があった。呉海軍工廠といえば、戦艦大和を作った事でも有名である。
工廠を軍が持つことのメリットは、経済性に関わらず必要な武器の製造を行うことが出来る点である。なお、アメリカやイギリスは工廠にあたるものを保有している。まあ、軍隊を持っている国であれば、当然に保有を検討する施設ではあるよね。
では、自衛隊は?というと、建前的に軍隊ではないことになっているので、工廠の保有にも二の足を踏んでいる。
今回の「複合防衛拠点」も、なんとなく工廠っぽい雰囲気はあるが……。
具体的には、民間企業の誘致を含む装備品などの維持整備や製造基盤、ヘリポートや物資の集積場などの防災拠点と艦艇の配備や訓練場などの自衛隊の活動基盤、それに、岸壁などを活用した港湾の3つの機能を備えたいということです。
NHKニュース「防衛省 広島 呉の製鉄所跡地 “複合防衛拠点に” 市と協議へ」より
装備品を作るのは民間企業と言うことのようだ。
メディアも態度を決めかねている
「複合防衛拠点」の評価は難しいので、左右のメディアを参考にしておこう。
防衛省、呉市の日本製鉄跡地に「多機能複合拠点」 県に意向伝える
2024/3/4 19:19(最終更新 3/4 19:19)
防衛省は4日、呉市に新たな「多機能な複合防衛拠点」を設ける意向を県に伝えた。
~~略~~
呉市には海上自衛隊の呉基地があり、日鉄跡地もほど近い。国は南西諸島に部隊などを速やかに展開するため、陸海空の共同部隊「自衛隊海上輸送群」を呉基地に新編する予定で、県関係者は「海上輸送群の関連施設になる可能性があるが、敷地の広さからして他の用途にも使われるのでは」と推測した。
毎日新聞より
日本製鉄跡地を複合防衛拠点に…防衛省が広島県と呉市に意向伝える
2024/03/05 14:53
昨年9月末に事実上の閉鎖となった広島県呉市の日本製鉄(日鉄)瀬戸内製鉄所呉地区の跡地活用を巡り、防衛省の担当者が4日、県庁と呉市役所を訪れ、「多機能的な複合防衛拠点」として整備したいとの意向を伝えた。
~~略~~
21年9月に高炉が休止し、昨年9月、全ての製品出荷を終えた。日鉄は、設備の解体には10年程度必要との見通しを示し、跡地の活用が課題となっている。
讀賣新聞より
色々と見て回ったが、取り敢えず大手は軒並み良いとも悪いとも判断しかねているようで、事実を伝えるのみに留めているようだ。
広島市としても特に批判的に捉えている感じではなく、寧ろ呉市が日本製鉄の工場が去年9月に事業停止してしまったことで、経済や雇用に影響が出て困っているため、歓迎したい意向もあるようだ。
反対派は動き始める
ただまあ、何事にも反対する人々はいるようで。
日鉄呉地区跡地に防衛拠点整備で抗議活動、市民団体 広島県呉市
2024/3/5(最終更新: 2024/3/5)
広島県呉市の日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区の跡地について、防衛省が県と市に「多機能な複合防衛拠点」を整備したい意向を申し入れたことを受け、市民団体が5日夕、JR呉駅前で抗議活動をした。
中国新聞デジタルより

……3人だけ?
地元呉市「寝耳に水」、防衛省と日鉄は水面下で交渉 近くに海自と陸自あり好立地
2024/3/5(最終更新: 2024/3/5)
昨年9月末に事実上閉鎖した広島県呉市の日本製鉄(日鉄、東京)瀬戸内製鉄所呉地区の跡地について、防衛省が広島県や市に対し「多機能な複合防衛拠点」を整備したい意向を伝えた。約130ヘクタールと広大な跡地の活用策にめどが立たない状況が続いていた中で、呉の姿を変える可能性のある案が浮上した。跡地を巡る動きを追った。
中国新聞デジタルより
何れも会員向けの記事で、読める部分しか引用できない。中身についても言及は控えておきたい。
が、反対する人は蠢きだしているようで、おそらくは活動をして見せて、資金が集まるのを待っているのだろう。資金を出してくれる工作員がいれば、活動を拡大していくということなんだろう。
ただ、経済活動のことを考えると反対運動は微妙かなぁ。
経済活性化に期待が高い
何故ならば、こんな話が。
日本製鉄呉の解体進む 市人口の1割占める従業員は… 跡地どうなる
2023年10月27日 10時30分
戦艦大和を建造した呉海軍工廠(こうしょう)があった日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区(日鉄呉)が9月末に事業停止した。現地では秋風が吹くなか、設備の解体が進む。人口減が進む地方都市の経済や雇用はどうなるのか。日本の高度成長を支えた製鉄所の跡地をいかに活用するのか課題が残る。
~~略~~
帝国データバンクの2020年の調べでは、旧日鉄日新製鋼などグループ6社の取引先は広島県内に117社あり、その従業員は約1万8千人にのぼった。呉市の人口の1割弱に相当する。
朝日新聞より
実際に日本製鉄で働いていた人々は、呉市の人口の1割弱になるという。それが失業してしまったのだから、雇用問題にはかなり大きな影響がある。
跡地には電気や水などのインフラが整い、海に面しているという利点がある。地元には海上自衛隊の誘致を求める声もあるが、ある企業のトップは「自衛隊施設より工場誘致のほうが地域の経済活性化につながる」と指摘する。ただ、日鉄の規模に匹敵する大企業や団体を誘致できるかは未知数だ。活用策が決まるまでは時間がかかりそうだ。
朝日新聞「日本製鉄呉の解体進む」より
そして、地元からの声として、「海上自衛隊の誘致」と「工場誘致」の2案があって、今回の「複合防衛拠点」の話は両方の条件を満足するからである。
攻撃される可能性
なお、パヨクの良く使うロジックとして、基地を作ったら攻撃されやすくなるというものがある。
確かに、呉海軍工廠はB-29爆撃機の攻撃の的になった。

ただ、呉海軍工廠があったから攻撃されたというよりは、呉港や市街地など含めて攻撃されていたので、呉海軍工廠がなくても攻撃された可能性は高い。
おそらく、日本製鉄の工場がそのまま残っていたとしても、日本の製鉄能力を奪うために攻撃目標になった可能性が高い。「基地があるから攻撃される」=「基地がなければ攻撃されない」という話にはならないのである。
装備品の維持、整備、製造、訓練、補給の一体化
ということで、心配には及ばない。
林官房長官は、5日の閣議のあとの記者会見で「防衛力の抜本的強化のためには、装備品の維持、整備、製造、訓練、補給などを一体的に機能させて部隊運用の持続性を高めることが重要だ。具体的には、民間企業の誘致を含む装備品などの維持・整備・製造基盤、防災拠点および部隊の活動基盤、そして岸壁などを活用した港湾機能の3つの機能を同一の地域に一体的に整備し、部隊運用の持続性などを高めていくことを検討していると承知している」と述べました。
NHKニュース「防衛省 広島 呉の製鉄所跡地 “複合防衛拠点に” 市と協議へ」より
機能を集中させることのリスクとリターンを考えると、集中させた方がメリットが高いと判断し、これが地域の活性化にも繋がると言うことなので、かなり政策としては素晴らしいと思う。
良くも悪くも民間企業に頼らざるを得ないのであれば、この地域のセキュリティを高めて高機能化を図ることも悪くないように思う。ただ、本来の工廠の機能としては技術継承、技術開発などの金にならなくても育てていく必要のある部分の維持という部分もあるので、半官半民くらいの組織にした方が良いかも知れない。
ともあれ、日本にいきなり工廠を作るのは現実的とは言えないが、それに近い拠点を作ることを決めたことは、歓迎すべき話ではないだろうか。
コメント
呉の日本製鉄跡地は江田島の対岸で、海自には運用しやすいですし、今回は自衛隊の組織的再設計の延長線上にある用地取得なんでしょう。
どんな用途かわかりませんが。
外国籍による土地買収に制度的な歯止めができれば、安全保障観点からの自衛隊の用地取得が増えていくはずです。
立地条件としては、かなり優秀ですよね。
流石に呉海軍工廠だっただけはあります。
しっかりした施設にして欲しいものですね。
こんにちは。
工廠≒現代風に「工業団地の経済特区」とすれば角が立たない?
ユーザーの目と鼻の先で、輸送にも適していて、メリットだらけの立地ですからね。
有事に攻撃される?んなもん「誰が攻撃するのか」「有事とはどのような事態か」「御攻撃されて黙っているのか」等々、色々「彼ら」に聞いてみたいものです。
※詰まるところ、彼らも「仮想敵」を設定しているという証左。
※蹂躙されて黙っているのか?今だ出撃(以下略)
こんばんは。
そうですね。この辺りは言葉の使い方1つでなんとかなりそうですね。
有事になって、日本が制空権を失ってしまえば、基地があろうが無かろうがあまり関係ありません。時間の問題だと思いますよ。そういう意味で、おかしなロジックなんですよね、「基地があると攻撃される」って。