世も末だな。
アデン湾 タンカー乗っ取り 海自護衛艦の周辺に弾道ミサイル
2023年11月28日 16時08分
中東イエメン沖のアデン湾で日本時間の26日、イギリスの会社が運航するタンカーが何者かに乗っ取られ、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が、アメリカ軍とともに現場で情報収集などをした際、周辺の海域に弾道ミサイルが発射されていたとみられることがわかりました。ミサイルは護衛艦から18キロ以上離れた海域に落下したとみられていて、海上自衛隊は「安全上の懸念を生じさせることはなかった」としています。
NHKニュースより
先日もタンカー乗っ取り事案が発生したと思うんだけど、ソレとは別なのか?
日本のシーレーンが脅かされる
アデン湾で
中東イエメン沖のアデン湾で発生した事案なんだけど、イギリスの会社なのか?
拿捕タンカー解放、海自も協力 中東アデン湾派遣の護衛艦
2023年11月28日15時44分
中東イエメン沖のアデン湾でイスラエル系企業所有のタンカーが武装グループに一時拿捕された事案で、海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は28日の定例記者会見で、アデン湾の海賊対処行動に派遣中の海自護衛艦と哨戒機が、タンカーを解放した米軍艦を支援していたと明らかにした。情報提供が主で武力行使はなかった。
時事通信より
コチラの記事ではイスラエル系企業所有のタンカーってことになっているんだけど、関わっている海自護衛艦は同一の「あけぼの」なんだよな。
会見によると、26日にタンカーが救難信号を出したことを受け、周辺に展開していた護衛艦「あけぼの」とP3C哨戒機が現場へ向かい情報を収集。その後、米海軍の駆逐艦「メイソン」なども到着し、海自は情報を提供したという。海自は周辺警戒に移り、タンカーは米海軍の介入で解放された。
時事通信より
米海軍の駆逐艦は「メイソン」である。
乗っ取られたイスラエル系タンカーの解放、米駆逐艦を海自が支援か
2023年11月27日 21時45分
中東イエメン沖で26日、イスラエルに関係するタンカーが武装勢力に一時、乗っ取られ、米海軍の駆逐艦が介入し、タンカーは解放された。米中央軍が発表した。27日未明には、この駆逐艦から10カイリ(約18・5キロ)のアデン湾に弾道ミサイル2発が着弾したが、被害はなかったという。
朝日新聞より
コチラの記事もイスラエル系タンカーということになっている。情報の混乱があったということなのかも知れないが。
自衛隊艦と米海軍艦が合同で作戦にあたる時代
ともあれ、このニュースで「時代」を感じたのは、これまで海外で日本の海上自衛隊艦が合同作戦にあたるというケースはあまり想定されなかったのだけれど、今回のケースでは、米海軍と一緒に作戦展開をしている。

むらさめ型護衛艦の8番艦で、C4ISTARを搭載した護衛艦であり、兵装にはVLSも備えている。イージス艦ではないが、イージス艦と共に作戦を行う事を前提にした情報処理装置OYQ-9を搭載している。
ミサイル駆逐艦「メイソン」も、C4ISTARを搭載した駆逐艦であるので、護衛艦「あけぼの」と密に情報を取り合いながら作戦を遂行したのだろうと予想される。
ただ、これは偶々そうなった、というケースであろう。
海上自衛隊によりますと、日本時間の26日、イエメン沖のアデン湾で乗っ取られたタンカーに対応した護衛艦の「あけぼの」とアメリカ海軍の駆逐艦「メイソン」は、その前日に訓練を行っていて、写真をSNSで公開しています。
訓練は海賊への対処を想定したもので、写真の手前に写っている「あけぼの」の左斜め後方を「メイソン」が航行しています。
NHKニュースより
実はその前日に、護衛艦「あけぼの」と駆逐艦「メイソン」は当該海域で合同訓練を行っていた。
したがって、この2隻が偶々近海にいたので、合同で対応したのだろう。
弾道ミサイル
そして、現場には弾道ミサイルが使われていたということで、日本国内での騒ぎが大きくなった。
タンカー救援の米軍艦付近に弾道ミサイル、イエメンから
2023.11.28 Tue posted at 12:07 JST
米軍によると、イエメン沖のアデン湾で26日、武装集団に襲撃されたタンカーの救援に駆け付けた米海軍の誘導ミサイル駆逐艦「メイソン」に向かって、イエメンの反政府武装組織フーシの支配地域からミサイルが発射された。
CNNより
そりゃまあ、メディアは騒ぎますわな。
アメリカ軍は、イエメンの反政府勢力フーシ派が支配する地域から、アメリカ海軍の駆逐艦がいる海域に2発の弾道ミサイルが発射されたものの、被害はなかったことを明らかにしています。
NHKニュースより
アメリカ軍は、弾道ミサイルはフーシ派支配地域から発射され、アメリカ海軍駆逐艦を狙ったと推定しているようだ。尤も、かなり離れた位置に着弾(駆逐艦から10マイル、およそ18キロ離れた地点に落下)して、被害はなかったようだ。
が、どちらかというと、問題は護衛艦「あけぼの」の方である。
「あけぼの」は弾道ミサイルを追尾するレーダーがないため探知していないということですが、駆逐艦との位置関係をもとに計算すると、「あけぼの」から18キロ以上離れた海域に落下したとみられるということです。
酒井海上幕僚長は「安全上の懸念を生じさせることはなかった」としたうえで、「『あけぼの』には弾道ミサイルに対応できる装備がなく、直接弾道ミサイルが命中するおそれがあるときには対応は不可能だと思っている。イエメンが保有する弾道ミサイルの性能などをトータルで分析すると、直接命中させる性能はないとみられ、警戒をしながら現在の任務を継続する方針だ」と述べました。
NHKニュースより
イエメンのフーシ派が発射したと思われる弾道ミサイルは、命中させる性能がなかったようだが、該当地域に飽和攻撃が加えられた場合にはその限りではない(やらないと思うが)。
一方の護衛艦「あけぼの」は弾道ミサイルを追尾するためのレーダーを搭載しておらず、迎撃することも不可能だ。「直接弾道ミサイルが命中するおそれがあるときには対応は不可能」とは、そういう意味だ。
シーレーン防衛の問題
多分、またぞろ紅い新聞が社説なんかで「軍靴の音が聞こえる」とか「日本が巻き込まれる」とか言い出すんだろうけれど、もう、とっくに日本自身が危うい状況にあるんだよね。
危うい状況にある日本の海運−中東におけるタンカー襲撃事件が示すもの(1)−【実業之日本フォーラム】
2021年8月16日10:20 午前
2021年7月31日付米海軍協会(USNI)紙は、7月29日から30日にかけて、オマーン沖を航行中であったリベリア船籍、イスラエルの会社が運航するタンカー「マーサー・ストリート」が3回にわたるUAV(無人航空機)攻撃を受けたことを、米海軍第5艦隊司令部が明らかにしたと報じた。当該タンカーはタンザニアのダルエスサラームからUAEに向け、オマーン沿岸から21海里の海域を航行中であった。この攻撃で、ルーマニア人船長と英国籍の保安関係者1名が死亡している。
~~略~~
国際政治上の影響は、イランの核問題をどう扱うかに帰着する。2019年6月13日にホルムズ海峡付近で、日本とノルウェーの海運会社が運航するタンカー2隻がリムペットマイン(吸着型爆弾)または飛来物による攻撃を受け、火災を起こすという事件が発生した。
ロイターより
ホルムズ海峡で日本の船舶が襲撃された事案からこっち、日本の企業が所有する船が攻撃されるという事案も発生している。
そして、当時から何か状況が改善していない。
あ、何故触れないのか?と思われる方もいると思うので、日本郵船の輸送船の件も触れておく。
日本郵船運航の船拿捕、4分間の動画公開…ヘリで乗り込み「イスラエルに死を」と叫ぶ
2023/11/21 13:12
イエメンの反政府武装勢力フーシは20日、イエメン沖の紅海で日本郵船が運航する輸送船を 拿捕した際の様子とする動画をSNSで公開した。
讀賣新聞より
実はこのニュース、日本郵船もプレスリリースを出しているんだけど。

続報がないのだよね。実際にこの後どうなったのか、良く分からない。
日本政府関係者によると日本郵船が国土交通省に「運航していた船が拿捕された」と連絡。日本郵船によると、貨物船に日本人は乗っていない。船は英国の会社が所有し、郵船がチャーターして自動車運搬船「ギャラクシー・リーダー」として運航。イスラエルメディアによると、イスラエルの実業家が船の所有に関係している。
フーシ派は声明で、イスラエルによる「おぞましい虐殺」を受けるパレスチナ人のための行動だと主張した。イスラエルと関係する全ての船が攻撃対象になるとし、各国に対し、紅海でイスラエルの船と関わらないよう警告した。イスラエル軍は自国の船ではなく、イスラエル人は乗っていないとしている。
産経新聞より
実行犯は、どうやらイスラエル絡みの話にしたいようなんだけど、こんなことを続けると、世界的にどうなるのかという事態に発展しかねない。
いずれにせよ、イスラエルでの戦争が中東戦争に発展し、日本のシーレーンに大きく影響するといった事態になりつつあるのだが、じゃあ、どうすればいいかというと、これがまた対策が思いつかない。
護衛艦「あけぼの」は現場を離脱したようだけれど、危機対処のステージが1つ上がってしまったことは間違いなさそうである。
コメント
こんばんわ。深刻な問題。米海軍と共同歩調でミッションしなければならないシリアスな場面だった訳でないですか。
もうとっくに巻き込まれてるんですね。
日本が巻き込まれてるぅ〜とか騒ぐ段階じゃない。シーレーンを考えると、ここで毅然とした対処しておかんと、イランが調子こいてペルシャ湾封鎖とかに出てくるととんでもない事になる。
んで、毅然たる態度をとか書いた後で間抜けな質問ですが、そもそも弾道ミサイルって、対艦攻撃に使うものなのすか?
巡航ミサイルでなく?
弾道って、亜宇宙に打ち上げて、そこから自由落下させるタイプですよね?
港に停泊した状態つまり静止目標になら狙えると想うですが、移動してる船舶に当たるものなのですかね?
フーシ派も当たると思って撃ってるとも思えないのですが。
日本には牙があるぞ、とアピールすることはとても大切だと思います。
やられてもやられっぱなしというのは、どう考えても悪手ですからね。
なお、記事に「弾道ミサイル」と書かれていますが、どの程度のミサイルなのかさっぱりです。ブルカーンH2だと言われていますが……。
イエメンの武装組織フーシが弾道ミサイルを撃った目的は、アデン湾は自分たちの庭先であるとその影響力をアピールするためでしょう。ほかにもあるでしょうけど。
中東は米軍の主要な守備範囲なので、弾道ミサイルの種類や発射地点は割り出されているはずです。ではあるものの、日本は日本で対処法をアップデートしていかないといけない。そのための駐留部隊だし、スエズを行き交う船舶は多いからね。
そういえば、つい最近もフーシはイスラエルにも弾道ミサイルを発射していたね。米艦に迎撃されたけど。
ボス山のサルじゃないですかー。
まあ、動いている目標に弾道ミサイルを発射するというのは、ミサイルの無駄遣いでしかないのですが、撃たれたことを察知できないのはちょっと困りますよね。
相手側にしてみたら嫌がらせをした程度の話なんでしょうけれど、日本側は対処できる態勢にしたいですね。
こんにちは。
>ただ、これは偶々そうなった、というケースであろう。
たまたまであっても、否、たまたまであるからこそ、必要に応じいつでも「日米は一つの軍団」として統合して動ける事を示した例の一つとして、軍事的なプレゼンスは重いと感じます。
※東日本震災当時、自衛隊のデッキに米軍ヘリがポンポン降りた(逆も)事なんか、大陸の専門家には脅威だったのでは、と思ってます。咄嗟に完璧に連携して見せるところが。
「弾道弾」はスカッドか何かでしょうかね?近距離用だとしたら。
「むらさめ」級はもうロートルと言っていい世代ですから、BMDを求めるのは酷でしょうね。
そのためのイージスが隣に居るのですし。
※とはいえ、「むらさめ」級は他国から見ればまだまだ充分戦闘力のあるレベルかと。日米と、日本を取り巻く環境がおかしい。まるで先の大戦の独ソ戦車の恐竜的進化のようだ。
※ワークホース全部がイージスのバーク級という米海軍は、おかしいにも程がある。
イエメンとかあのあたり、うっかり米軍が被弾しちゃって、薮突いてメデューサが出てくる可能性は考えてないのかな?って心配もしてたりします。
口実手に入れたアメリカは容赦ないぞ、と。
こんにちは。
いやー、ほんとに。今回のコレは合同訓練していたからこそだと思いますよ。
そして、状況からして自衛隊側が力不足だった感じは否めませんが、それでも有事においてしっかりと連携が出来たというのは、経験として貴重であったと思います。
莫大な予算がかかるとはいえ、どうしても軍事的プレゼンスの維持というのは国家において非常に大切です。
特に、世界最強・最怖の軍隊との連携がとれるというのは、実に意義深いことなのだと思います。