国際通貨基金(IMF)が出てきているアルゼンチンだが、何とか救済されたようだ。
アルゼンチン外貨準備が改善へ、75億ドル金融支援で=IMF
2023年08月28日(月)09時47分
国際通貨基金(IMF)は25日、アルゼンチン向け金融支援を承認したことを受け、短期的に外貨準備の状況が改善するとの見方を示した。
IMFは23日に開いた理事会で、同国向けに借り換え融資の75億ドルの払い込みを正式に承認した。440億ドルの拡大信用供与措置(EFF)の5回目と6回目のレビューが完了したことを受けた動き。
Newsweekより
このブログでアルゼンチンネタは初なんじゃないかな。日本のメディアもあまりアルゼンチンの記事は書かないような気がする。
経済危機は何度でも
デフォルト再来か
物価上昇が止まらないアルゼンチン。
デフォルト再来に警戒 物価1年で2倍、通貨急落―アルゼンチン
2023年06月02日07時13分
南米アルゼンチンの経済が危機的状況に陥っている。物価が1年で2倍に高騰し、自国通貨ペソの急落と合わせ庶民の生活を直撃。国民の4割が貧困にあえぐ中、政府のデフォルト(債務不履行)という悪夢が再び迫りつつある。
時事通信より
日本もジワジワとインフレが進んでいるが、アルゼンチンの比ではないんだよね。

対ドルのペソ相場だが、2010年頃は1ドル3.8ペソくらいだったのだが、今や1ドル250ペソである。
インフレ率、31年ぶりに100%超 アルゼンチン、1年で物価倍に
2023年03月15日14時33分
アルゼンチン国家統計局は14日、2月の消費者物価指数上昇率が前年同月比102.5%になったと発表した。1年間で物価が倍になったことを意味する。同国でインフレ率が100%を超えたのは1991年10月以来、約31年ぶり。1カ月間では6.6%上昇した。
時事通信より
物価上昇率は100%を越えたと騒ぎになっていたが、外貨不足がペソ安がインフレを加速すると懸念されていた。
追加融資
というわけで、IMFから75億ドルの追加融資が得られている。とはいえ、今年は干魃の影響で経済がかなり怪しい。
アルゼンチンでは干ばつや通貨安で経済情勢が悪化している。
IMFは、干ばつの状況緩和は国内経済の成長を支えるが、「経済の不均衡に対処するための政策がもたらす逆風」で回復は緩やかになるとの見通しを示した。
Newsweekより
IMFが追加融資を決めたのも、この干魃の影響を評価した結果だとされている。
IMF、アルゼンチン成長予想を下方修正 干ばつで23年-2.5%
2023年7月26日10:39 午前
国際通貨基金(IMF)は25日、今年のアルゼンチン経済が2.5%のマイナス成長になると予想し、4月に示した0.2%のプラス成長から大幅に下方修正した。干ばつによる農業生産減少が主因という。
ロイターより
この干魃の理由は、「気候変動が-」と騒ぐ人がいると思うのだが、そんな簡単な話でもないようだ。
確かに、今年の3月辺りは毎晩の熱波で酷暑に苦しんでいるという報道が出ていた。
「延々と続く酷暑」、アルゼンチン襲う晩夏の熱波 「歴史上類を見ず」
2023.03.16 Thu posted at 14:30 JST
南米アルゼンチンが、前例のない晩夏の熱波に苦しんでいる。過去最高水準に跳ね上がった気温の影響で農作物はしおれ、山火事の被害も拡大。ただでさえ経済危機に直面する同国に、一段の圧力が加わる事態となっている。
CNNより
原因はラニーニャ現象だと言われているので、アルゼンチン政府の責任だけというわけでは無いのだけれど。
ラニーニャは環境破壊のせいなのか
まず、ラニーニャがなんなのかということなんだけど、簡単に言うと地球規模で東風(貿易風)が強くなる現象である。エルニーニョが東風が弱くなった結果に対して、ラニーニャは強くなることで、南米大陸に雨をもたらしにくくなったということだね。

その影響を受けたアルゼンチンは、元々経済的にかなり不味いことになっていただけに、危なくなってしまったと。
で、このエルニーニョやラニーニャの原因は、よく分かっていない。太陽の活動の活性化などが影響だとも言われているが、ハッキリ特定できていないんだよね。
国債の格付けは
ともあれ、アルゼンチン経済はかなり悲惨なことに。
状況の悪化を受けてS&Pグローバル・レーティングは3月、既に投機的水準としていたアルゼンチンの格付けを「CCCマイナス」と2段階引き下げた。「外貨建て債務の返済を巡るリスクが高まっている」と警告し、追加格下げも示唆した。政府が2001年、1300億ドルを超える公的債務の返済を停止してデフォルト状態に陥った記憶がよみがえる。
時事通信より
格付けで、B以下になるとかなりリスクのある銘柄だと言うことになるんだけど、「CCCマイナス」という状況なので、BBやBa等級(ジャンク級)から更に格が落ちる感じなのだ。えーと、例えば戦争中のウクライナだが格付けは「CCC」である。それより下だと言えば、かなり酷いことが分かって頂けると思う。
もはやアルゼンチンは、デフォルト寸前といったところだね。
武漢ウイルス感染症対策の失敗
とまあ、今回はエルニーニョ・ラニーニャの影響が大きかったという話にはなると思うんだけど、しかし、エルニーニョやラニーニャは最近始まった気象現象というわけでは無い。
研究によれば、数千年にわたって周期的に発生している気象現象で、程度の差こそあれ、繰り返される。

これはWikipediaで紹介されているエルニーニョ発生の時系列表で、規則性は感じられないが、周期的に訪れていることが分かる。
つまり、アルゼンチンとしてもこうした減少が発生することを経済的に織り込む必要性があり、デフォルト危機の原因を気象現象だけに求めるのは誤りだろう。
アルゼンチンにはパンパスと呼ばれる肥沃で広大な大地に恵まれており、農業においては比較的優位性を備えている。実際に20世紀前半にはそうした地理的条件のお陰で、世界でも有数の裕福な国家となっていた。
ところが、政治的な理由によって何度も不安定な状況に陥り、2020年までに9度のデフォルト状態を経験している。今回をカウントすると10度目と言うことになるだろう。
ただ、現状において経済的に苦しんでいる理由は、武漢ウイルス感染症の対策を失敗したことだろう。
アルゼンチン 一日の感染者10万人超 オミクロン株が感染拡大か
2022年1月7日 10時42分
南米のアルゼンチンで新型コロナウイルスの感染が急速に拡大して6日、一日の新たな感染者が10万人を超えました。 変異ウイルスのオミクロン株の感染が広がっているためと見られ、政府はワクチンの接種や検査の拡充に重点的に取り組む考えを示しました。
NHKニュースより
アルゼンチンは何度もロックダウンを繰り返して感染拡大を抑制しようと試みていたが、南米でトップの感染者数、死者数を記録している。

アルゼンチンの統計データが信用出来るか?と言う観点を含めると、実際には感染者や死者はもっといた可能性がある。
アルゼンチンのロックダウン、6カ月超えるも10月11日まで再延長
2020年09月24日
アルゼンチン政府は9月20日付の必要緊急大統領令(DNU)に基づき、新型コロナウイルス感染拡大の影響により3月20日に発令された外出禁止措置を、さらに10月11日まで再度延長すると発表した。非居住者外国人の入国禁止措置も10月11日まで延長される。同措置は、発令から6カ月が経過し、「世界最長のロックダウン」と現地メディアは報じている。
JETROより
こういった政策によってアルゼンチン経済は大きく傷つき、経済的な混乱を引き起こした。

結果的には世界一長いロックダウンと言われる状態になって、2020年の7ヶ月にわたるロックダウンと、2021年にも長期間のロックダウンを行っている。残念なことに、爆発的に感染者が増えたのは2022年1月頃なのだが。
大統領は「次は出馬せずと明言」
こうした経済政策を選択したのは、中道左派志向大統領、アルベルト・フェルナンデス氏である。
アルゼンチン大統領、23年大統領選に不出馬
2023年4月22日1:35 午前
アルゼンチンのフェルナンデス大統領は21日、10月の大統領選に出馬しないと表明した。深刻な経済危機に直面している中、中道左派のフェルナンデス氏が出馬を見送ることで与党正義党(ペロン党)内の主導権争いが激しくなりそうだ。
~~略~~
アルゼンチンは物価高騰で貧困率が40%近くまで上昇し、有権者の収入や消費力に打撃を与えている深刻な経済危機に陥っているにもかかわらず、世論調査によると今回の動きは正義党の勝利の確率を高める可能性がある。
ロイターより
フェルナンデス氏は正義党というペロン主義を掲げる政党に所属する人物で、アルゼンチンではかなりの支持を集めている政党らしい。
インフレ率100%を越え、貧困率が40%近くまで上昇している状況にも関わらず、相変わらず左派政党が有力らしい。左派政策で経済的失敗が明らかになったにも関わらず、だ。
武漢ウイルス感染症拡大や、ラニーニャの影響で干魃が発生したにせよ、経済政策的な手当はほとんど為されていない。
まず、為替政策、金融政策について、双方は、輸出を刺激し、輸入を抑制する措置を継続することや、通貨ペソの需要を高め、高インフレに対処するために実質金利をプラスに維持することに引き続き取り組むこと、並行為替市場の無秩序な動きへの対処に重点を置いた為替介入を行うことで合意した。
財政政策については、2023年の基礎的財政赤字目標は従来どおり対GDP比1.9%で変更せず、目標達成のために年後半の財政支出を引き締める。具体的には、公務員の賃金の伸びを抑制するとともに、電気などエネルギーへの補助金の累進性を改善、的を絞った社会支援と公営企業への支出の合理化を進める。また、中銀による財政ファイナンスへの追加的な依存を想定せず、従来どおりの目標の対GDP比0.6%を維持する。
JETROより
IMFとは金融政策で手当てする約束をしてお金を引き出すことに成功したんだけど、抜本的な対策が打ち出された形跡は無い。つまり、当面はアルゼンチンの経済リスクは高いままだということを意味する。
2018年頃にはかなりヤバかった経済状況だが、2023年で再び溺れかけている。5年周期くらいで危機に陥っているので、次の大統領になったところで「良くなる」可能性は低そうだね。
日本から遠い国の話のように思えるけれども、こういった動向も偶には追いかけておかなければならない。アルゼンチンも支那に付け狙われているからね。
追記
コメントも頂いていたし、そういえばリチウムの話も書かなかったなと反省したので、追記を。
アルゼンチン外相 岸田首相と面会 処理水対応で理解と支持
2023年8月29日 20時04分
岸田総理大臣は、日本を訪れているアルゼンチンのカフィエロ外相と面会し、東京電力福島第一原発にたまる処理水の海洋放出について、科学的根拠に基づく安全性などを説明したのに対し、カフィエロ外相からは、理解と支持が示されました。
NHKニュースより
おそらく、コメント頂いたのはこの件だと思う。昨日、僕も突っ込みを入れている。
ちょっと心ない突っ込みだったと反省はしているが、間違ってはいないだろう。
そして、岸田政権の対応としても正しいと思う。支那に何か直接言ったところで、何の意味も無い。それよりも理解を示してくれる仲間を増やすことが大切で、窮状にあるアルゼンチンへの支援は意味のあることだ。
リチウム開発に沸くアルゼンチン 電池の需要増で現場は
22.09.15(木)
電気自動車(EV)やスマートフォンの蓄電池などの原料になる「リチウム」。
推定埋蔵量世界2位のアルゼンチンには炭酸リチウムの生産拠点として世界各国から企業が進出しています。開発に沸く地元では歓迎の声が上がる一方で、環境への懸念も出ています。
NHKニュースより
というのも、アルゼンチンには炭酸リチウムの生産拠点として注目が集まっているからである。そして乱開発による環境破壊という懸念が出ている。
そして、こうした開発に最も力を発揮するのが日本だ。環境への配慮も得意だし、特殊環境での開発も得意だ。序でに支援もね。
当然、リチウムに関しては支那も目を付けているわけで、ここでも開発競争が勃発するわけだが、こういう分野で日本は手を抜くべきではない。

多角的な開発支援をしっかりやるべき時なのだ。その結果、アルゼンチンの経済の一助になればそれに越したことはないのだ。共に繁栄する、それは日本がかつても口に出した言葉で、あの時は正しい選択を出来なかったが、今度こそ、と頑張って欲しい。
コメント
アルゼンチンは支那と仲良くしているので、支那製の抗武漢ウィルスワクチンを入手して国民に接種した。後年明らかになったことだが、アルゼンチンに送られた支那製ワクチン(プラスミド型)には抗ウィルス効果がなかった、らしい。
元東京新聞記者の長谷川幸弘氏は、支那は開発された国産ワクチンを人体実験目的で南米諸国に提供した。そして、その見返りにデータを要求した、と批判していた。貧乏していたアルゼンチンは、支那のオファーに飛びついたんだろうね。これは一昨年か昨年に聞いた話です。
そんな話もありましたね。
大統領はロシアのスプートニクを使って見事に感染したみたいな話も。
自国民を使った実験データで得た金をどの様に使ったのかは知りませんが、国のための必要な犠牲でしたと割り切れるのでしょうかね。
こんばんは。砂漠の男様のコメントも読みました。酷い話だなぁ。
そんなもんだろうとも思いますが。
アルゼンチンは牛肉が美味いらしいとかしか知らないんです。
19世紀後半には米国と共に、次世紀に成功するだろう言われた豊かな国だったとは地理で習いましたが。
ずうっとデフォルトしてる国のイメージしか有りません。
中南米は米国の庭ですが、南米もその延長線でしょうから、米国が指を咥えて観ているのかなぁ?
グローバルサウスというか、かなり南の途上国では米国に対する怨嗟が満ちているようで。我々の言う「世界」というと、西が先進国なのでさが、そこに反発するアフリカ、中東、南米とキナ臭くなってる気配をなんとなく感じるのですが。
そういう事と中国の進出は関係しているのでしょうか。遠すぎて解らないです。メキシコのカルテル経由で
オピオイドの原料を売り込んでいるのは知ってましたが、その南となると普段、意識に上がらないものですから。やはり少しは気にしてみないといけませんね。
ちょっと切り口を変えてニュースをお送りしました。
こういうのも良いかと。
ここのところ、支那や韓国のバブル構造などの比率が多かったので、世界経済に関係する話を少し増やしてみようかと。
僕の能力ではなかなか難しいんですがね。
追記:アルゼンチンには、支那の大型レーダー基地がある。
https://jp.reuters.com/article/china-space-station-idJPKCN1PT0AL
”衛星追跡レーダーサイト”とどこかで聞いた覚えが。実態は不明ということになっているが、軍事用だろうね。支那とアルゼンチンの関係は不気味だね。
ほほう、このニュースは知りませんでした。
なかなか興味深い。
宇宙開発は軍事とも密接に絡みますから、注意が必要ですね。
追記②:アルゼンチンつながりで。
Saudi Arabia, UAE, Argentina, Egypt, Iran and Ethiopia join BRICS.
https://www.youtube.com/watch?v=sadxbxPEcR8
これは面白い。支那とロシアがグローバルな経済協力機構を組織したのか。
人民元を法定通貨にしたジンバブエが入っていないことが惜しまれる。
差別はいかんよ。
こんにちは。
昨日、仕事から帰宅したら、昼間テレビの報道番組(という名のバラエティ)を見ていたカミサンから、
「処理水放出について、アルゼンチンが日本支持に回ったと言ってた」
との事。
どの番組かは知りませんが……
アルゼンチンは反英、つまり反西側色が強いと思っていたので、これはちょっと驚きましたが、逆に、ここはこっちに付いた方が分が良いと判断したのか。
あるいは、チャイナマネーが底をついたのか。
まあ、どう転んでもあっちには影響の無い(海流的に)話ではありますが。
アルゼンチンの懐具合とか、チャイナマネーの栄枯盛衰とか、想像たくましくなっちゃいますね。
こんにちは。
その件については追記させて頂きました。
NHKもやっていましたね。
南米に対しても色々なところからアプローチがありますが、日本としてもリチウム関連の話もありますから無視できないんですよね。
リチウムは「支那しか産出しない」のではなく、「支那は環境も人的被害も無視して採掘・精製しているから格段に安い」だけなので、鉱床そのものはある所にはあるのですよね、採算ベースに乗るかどうかなだけで。
日本は、多少値が高くても、先を見越してこういうところに手を突っ込んでおくべきだし、もう動いていると思いたいです。
※まあ、海水から精製出来るようになれば、レアアース問題はかなり片付くんですが。結局コストですね。