輸出管理(笑)。
中国、半導体材料ガリウムとゲルマニウム製品の輸出管理強化へ 日本政府「不当な措置はWTOなどで適切に対応」
2023年7月4日(火)12時10分
中国商務省は3日、一部のガリウムとゲルマニウム関連製品の輸出管理を強化すると発表した。国家安全保障と利益を守るためとしている。
ガリウムとゲルマニウムは半導体の材料で、中国政府が戦略金属に分類している。
Newsweekより
なるほど、「輸出管理という言葉を覚えた!」という感じ?
ありがちな戦略
輸出管理って何
まず、輸出管理というのは、日本の場合にどのような文脈で使われているのかを少し説明しておきたい。
日本の場合は、輸出管理というのは国際的な枠組みの中で、日本の責務として管理するという形で行われている。
通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント
令和2年11月26日
1 目的
(1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大及びより責任ある管理を実現し、それらの過度の蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与する。
(2)グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止する。
外務省のサイトより
これは外務省のサイトで説明している内容なんだけれども、目的としては兵器に転用されるような事になると、テロリストなどに力を貸すという事にもなりかねない。だから、輸出先はしっかり調べて、横流しなどされないようにしようね、という話である。
当然ながら、恣意的な使い方をすると国際社会から怒られるのだが、管理していなくても怒られるので結構面倒なんだよね。
決まったルールに従ってやれば良いという意味では、難しくはないと思うんだけど、現場を知らないので何とも。それなりに苦労はあるんだろうけどさ。
東芝機械ココム違反事件の悪夢
で、この輸出管理なんだけど、日本は実は過去に東芝機械ココム違反事件(昭和62年)と呼ばれる苦い経験がある。ソ連に工作機械を輸出したら、ソレが兵器製造に使われちゃったとして、アメリカからガッツリ怒られたんだよね。
1994年3月末に、ココムが解消されたことを踏まえ、1995年12月、新たな輸出管理体制の設立について関係国間で政治的な申合せが行われ、1996年7月の設立総会をもって正式に「ワッセナー・アレンジメント(WA)」が発足した。なお、WAの名称は、設立のための協議が行われたオランダのワッセナー市にちなんで名付けられたものである。
外務省のサイトより
それ故、輸出管理に関しては厳格にやっていきたいというのが、日本の本音なのである。
まあ、最近おかしな事をやってしまったので、信頼は薄れている可能性はあるが。
こちらの記事で岸田氏への恨み言は散々書いたので、今更言及するのは止めておくが、おそらくはアメリカの命令に近い話だったのだろう。とはいえ、それに折れるのは違う。
アメリカに何を言われようと厳格に管理すべき内容なのだ。
支那の思惑
さて、その「輸出管理」という言葉の意味を確認した上で、今回、支那は何を言ってきたのかというと、ガリウムとゲルマニウムの輸出規制(支那は輸出管理と表現)をすると発表したのだ。
商務省の声明によると、8月1日以降、8種類のガリウム関連製品(アンチモン化ガリウム、ヒ化ガリウム、金属ガリウム、窒化ガリウム、酸化ガリウム、リン化ガリウム、セレン化ガリウム、ヒ化インジウムガリウム)、6種類のゲルマニウム製品(二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムエピタキシャル成長基板、ゲルマニウムインゴット、ゲルマニウム金属、四塩化ゲルマニウム、リン化ゲルマニウム亜鉛)は輸出許可を得る手続きが必要になる。許可なく輸出したり、許可された量を超えて輸出した場合は処罰される。
Newsweekより
そもそもガリウム・ゲルマニウムは、支那が戦略物資・戦略金属という扱いにして重視しているものである。
さて、ところで、支那ってワッセナー・アレンジメントに参加していたっけ?
実は、支那はワッセナー・アレンジメントには加わっていない。そりゃそうだろう。ワッセナー・アレンジメントは西側中心にした協定で、東側の国は参加していない。
……いや、違うな。ロシアが参加しているんだよね、笑えることに。積極的に平気販売している国が、何を思って参加したのかは理解出来ないが、何か事情はあるんだろう。一方支那は参加していない。チンコムも廃止されたのにねぇ。
つまり、支那の言う「輸出管理」って一体?という話なんだよね。多分、支那共産党の思う通りに管理するという意味なんだろう。
日本側の対応
ともあれ、支那はアメリカとの半導体戦争に負けつつあるんだけど、必死に抵抗したい。そこで、最近知った「輸出管理」などという言葉を使って、ガリウムとゲルマニウムの輸出規制するつもりなんだな。
そこに巻き込まれそうになっているのが、日本というわけだ。

ガリウムやゲルマニウムなどを含む特殊金属を輸入している先の国の割合だが、トップは支那だ。ガリウムに限定すれば56%が支那からの輸入である。ゲルマニウムは二酸化ゲルマニウムと金属ゲルマニウムで比率が違うのだけれど、金属ゲルマニウムの方は57%が支那からの輸入となっている。
深刻な影響が出るのは避けられない。
西村康稔経産相は4日午前の閣議後会見で、中国政府が前日に発表したガリウムやゲルマニウムなど半導体製造に使う鉱物資源の輸出規制について、中国側に意図や運用方針を確認する考えを明らかにした。
西村氏は「仮にわが国に対し、WTO(世界貿易機関)などの国際ルールに照らして不当な措置が講じられているということであれば、ルールに基づいて適切に対応していきたい」と述べた。
日本は5月、先端半導体製造装置の輸出管理を強化する措置を公布している。西村氏は中国の規制について「(日本の措置に)関連して講じられたものとは承知していない」と語った。
Newsweekより
で、日本の対応は、「と、取りあえず聞いてみる」というもので、その結果によってはWTOへの提訴ということも考えているようだ。
日本を狙い撃ちにした政策かどうかはハッキリしないが……、おそらくはその可能性が高い。あ、別のところにもう少し分かりやすいものがあったな。

『JOGMEC』「鉱物資源マテリアルフロー 2021 22.ゲルマニウム(Ge)」

『JOGMEC』公式サイト「鉱物資源マテリアルフロー 2018 17.ガリウム(Ga)」
あー、ガッツリですわ。
支那のよくやる手で、レアアースの輸出規制もやってきたけど、今度はゲルマニウムとガリウムですか。そういえば、レアアース規制の時は、結果、どうでしたっけ?覚えていませんかね。
どうするのかなー、今回の日本政府は。そういや、外務大臣は林氏でしたな。強い態度に出るとはとても思えないけど。
こちらとリンクしているんだろうね。
コメント
結局、あの外務大臣は何の役にもたっていませんよね。
中国様のご意向を日本に伝える、という以外の仕事を何かやりましたっけ?
こんにちは。
昨今の中国は、何をやっても後手後手というか二流三流というか……
「駿馬も老いれば駄馬にも劣る」と言いますが、今のトップである集金Payは、そもそも天才秀才ではなく、凡百の青年が努力と運(と、父の恨み)で地位を捥ぎ取った感が強いです。
その「努力のヒト」も、ずいぶん前から老害化してましたが、そろそろ実害がやばくなってきた感じもします。
リチウムにしろガリウムゲルマニウムにしろ、「中国でしか産出しない」ものではなく、(労働者の賃金と健康を犠牲にした)低コスト生産にのみ価値があっただけ、だったら、戦略的判断としてはコスト度外視で仕入れ先を替えるのは当たり前、ですよね?
鼻薬嗅がされてる経団連のジジイどもはオタ付くでしょうが、そこを一喝して黙らせるのが政治の役目……なんですが。
岸田だしなぁ……リンだしなぁ……
明治は遠くになりにけり、青年将校の憂いが、今になって身につまされます。