「飛行バス」などと書いてはいるが、いわゆるハイパーループの事らしい。
時速1000キロの磁気浮上「飛行バス」観光実験線を建設へ 中国ハルビン
2023年5月14日 10:12
中国東北部の大手企業、ハルビン工業投資グループはこのほど、北京九州動脈トンネル技術有限公司と契約し、共同でハルビンに低真空超高速磁気浮上飛行バス観光実験線の建設と、飛行バス製造の産業化プロジェクトを実施することに合意しました。「飛行バス」は時速が1000キロ以上に達すると予測されています。
AFPより
チャレンジはして欲しいが、安全性については十分に配慮して欲しいとは思う。
夢の高速輸送手段
韓国も計画をぶち上げていた
そういえば、取り上げはしなかったが韓国もハイパーループ計画をぶち上げていたな。
韓国型ハイパーループに青写真…政府が研究に関する公告
2023年4月19日 11:00
韓国で空気抵抗のないほぼ真空のチューブ内で磁気の力で浮いた列車が時速1200キロで運行する「ハイパーチューブ」(韓国型ハイパーループ)の青写真が見えてきた。韓国政府がこのほど、ハイパーチューブ開発や運営ロードマップ樹立のための研究について公告した。
AFPより
韓国では「ハイパーチューブ」と呼ぶらしい。

そして、お決まりの絵(概念図)も登場している。こうした計画自体は支那も韓国も、欧米でもあるのだが、先行して開発していたアメリカでは早々に計画を断念してしまった。
イーロン・マスクの“真空鉄道構想”は失敗? 新幹線の3時間を30分に短縮するハイパーループ・チューブが撤去
2022.11.08 07:00
SpaceX本社がある米国カリフォルニア州ホーソーンにイーロン・マスクが設置したハイパーループ・チューブがなくなっていることが明らかになった。
Real Soundより
いや、正確には計画の断念ではなく、試験設備を撤去しただけなのだが、少なくともSpaceX社は計画を前に進めていないように見えるし、イーロン・マスク氏はその熱を失ったように見える。
課題があまりに多すぎるのだ。
速度を追求するためには
高速鉄道といえば、日本では新幹線がそれにあたるわけだが、300km/hを超える速度(「はやぶさ」「こまち」が最高速度320km/h)で運用している。
ただ、これ以上早くするというのは色々と問題があって実現できていない。かつては東海道新幹線の最高速度を上げようという話もあったのだが、諦めたようだ。
実現しない360km/h運転、なぜ東海道新幹線で試験したのか スピードアップ予定無し
2019.06.07
2019年6月6日(木)の深夜23時50分ごろ、最高速度が285km/hであるはずの東海道新幹線を、360km/hで駆け抜けていく列車がありました。2020年7月上旬の営業運転開始に向け、試運転を行っているJR東海の次世代新幹線電車「N700S」です。
~~略~~
また最高速度を上げるには、線路などにも相応の対策(コスト)が必要です。今回の試験でも、軌道(レールなど)や架線関係で特別な対応をしているとのこと。
乗り物ニュースより
実際に、最新の新幹線には360km/hを出せるポテンシャルはあるのだが、軌道や架線の消耗が激しくなるため、運行する時に採用するのは現実的ではないとの判断のようだ。
つまり、摩擦と空気抵抗が問題というわけだ。あ、あと空気抵抗の問題に含まれるとは思うが、揚力の問題も出てくるね。
ハイパーループの着想は、ここを両方解決しようという発想から来ている。
地上で車両が速度を上げると、車両の下側に入り込んだ空気によって次第にコントロール性を失う。300km/hを超えた辺りから、このバランスが難しくなると言われていて、飛行機のように空に飛び立ってしまう事になりかねない。
そこで、速度を競うF1では、ダウンフォースというものが重視されるし、最新のN700系新幹線の形状も特殊な形状をしている。

先頭車両は平べったいノーズを採用している。JR東日本が採用しようとしているE956系は更にそのデザインが突き詰められている。

このデザインは、ダウンフォースを稼ぐと言うより、トンネル突入時の圧力波を抑えることが主目的になってはいるのだが、レールとの接地力が弱くなると車輪が空転してしまうので、ダウンフォースを稼ぐことも必須である。
じゃあ、浮いてれば摩擦の問題とダウンフォースの問題はある程度解消できるんじゃないのか?という発想がリニアモーターカーである。
静岡知事、撤回考えなし 山梨側のリニア調査中止要請
2023/5/15 18:34
JR東海が山梨県内で進めているリニア中央新幹線のボーリング調査を巡り、静岡県の川勝平太知事は15日、同県が県境付近での調査をしないよう同社に要請したことに山梨県の長崎幸太郎知事が不快感を示したのを受け「(今後は山梨県側と)十分に調整する時間が取れるようにしたい」と述べた。
産経新聞より
リニア鉄道計画は、静岡県知事ただ一人のせいで実現が遅れに遅れているが、実現すれば最高速度500km/h出せるとされている。
なお、実験線での有人走行での最高速度は603km/hだったそうで。
ハイパーループは両方解決できる
で、それより速くとなると、摩擦と空気抵抗の両方を解決するために、チューブの中の真空度を高めて、磁気浮上させて車両を走らせるということが回答になる。
ただ……、有人での走行となると、効率の面でどうなのか?という点には疑問が残る。

これはアメリカでのテストの様子であるが、チューブ内の真空度を高める一方で、車両内には空気がある状態にする必要があるので、二重に真空対策が必要である。
つまり、チューブは内圧が低くなったときに外側から潰れないような円筒状の設計の上に、空気が漏れないような機密性を高めた構造に。車両は内側から外側に空気が漏れないような構造と、内圧に耐えられる構造にしなければならない。
そうすると、チューブは出来るだけ細い方が良いし、車両も狭い方が都合が良い。しかし、輸送手段としてはそれではダメだということに。

アメリカの実験車両はこんな形になっていたが、これ、人がどうやって乗り込むの?という疑問も出てくる。二人乗りなら前から乗り込めば良いんだろうけど。
SpaceX社の実験線のテストは大成功だったとされているが、列車という形にするためには側面から乗り込む必要があり、そうすると圧力に耐えられる形状にすることがかなり困難になる。
韓国鉄道技術研究院も2020年に、ハイパーループを17分の1に縮小した模型試験を通じて時速1019キロ走行に成功している。国土交通省としては核心技術を他に先んじて確保し、関連市場を先取りしたい考えだ。
~~略~~
今年下半期ごろに予備妥当性調査に通過すれば、国土交通省は2025年に全羅北道(チョルラプクド)での区間試験などを経て、12キロの本試験線路を建設する1兆ウォン(1ウォン=約0.1円)規模の事業を進める計画だ。
AFPより
韓国でも模型の走行には成功しているのだが、実物大で人間が乗り込む構造にするとなると、途端に難易度は跳ね上がる。
正直、ハイパーループを作るのであれば、物流に使うべきだと思うんだよね。人を運ぶのはかなりハードルが高い。
低コストで大容量の輸送が可能
が、支那はそうは判断していないようだ。
紹介によりますと、この飛行バスは超高速のチューブ型交通システムであり、道路や軌道、航空、水路に続く5番目の輸送様式で、超高速、低い建設コスト、低いエネルギー消費、高い安全性など多くのメリットがあり、時速1000キロ以上を実現できる唯一の大量輸送方式であるとのことです。
AFPより
うーん、心配である。
関係者の話では、この磁気浮上飛行バス観光実験線は地上から少なくとも4.5メートルの高さに設けられた直径約5メートルの鉄骨構造のチューブで、1両の車両には60人が収容可能で、当初計画では2キロが建設される予定です。1キロ当たりの総合建造費は2億元(約39億円)近くかかります。
AFPより
とりあえずは、2km程度の長さでテストをするらしい。アメリカの実験線は500mだったので、2kmあれば最高速度は1000km/hを超えることは可能だろう。
韓国は12kmを1兆ウォン(1000億円相当)で建設しようとしているのだけれど、支那は2kmを4億元(78億円相当)で建設するつもりらしい。安い!
いや、正直、安いかどうかはよく分からない。
新幹線の建設費は1kmあたりおよそ70億円程度といわれており、リニア中央新幹線の1kmあたりの工事費は200億円を超えると言われている。
ハイパーループがコレよりも圧倒的に安く建設できる理由は、構造的にコストが安いからだという風な結論になるはずなのだが、実際には逆だろう。そうすると、単位距離あたりの単価を下げる為には構造強度を下げる、つまり、乗車人数を絞ると言うことになりそうなのだが、それが輸送の効率にどう影響するか?
チューブ内の減圧時間まで加味すると、効率が上がるとは思えないんだが。
まあ、観光実験線ということなので、効率は二の次なんだろうね。
コメント
気送管(エアシューター)を思い出しますね。昔、実物を某市営病院(現在は建て替えて現存してないと思う)で使っているのを見たときは感動した覚えがあります。
電気通信ではできない見る楽しみがあるので、次世代通信だなんだと言われている中、どこかで新たに使われないかと、密かに期待している次第。
と、ここまでは書類を送るレベルの話。
乗り物となると実用化が大変なわけで。
日本のリニアだって、宮崎実験線からどれだけ時間がかかっていることやら。
全長2キロで時速1000キロ、観光実験線とは、実は水平ジェットコースター(遊具)の建設かもしれません。
それなら効率も加減速の不安も車体の動揺も、なんなら多少のコストもすべて解決しますからね。加えて、中国なら安全性も政治的に解決するので。(苦笑)
エアシューターっていうと、どうしてもラブホのイメージが強いんですが(汗)。
面白い技術だとは思いますけど、メンテナンスとかは大変そうですね。
さておき、人間を送るとなると、そう簡単にはいかないわけで。
ただ、ご指摘のように、遊具と考えれば、アリかもしれませんね。尤も、乗車する前に「死んでも文句を言うな」という誓約書を書く必要がありそうですが。
こんにちは。
ご指摘のように、ハイパーループには気密がらみの問題がてんこ盛りですよね。
・これだけのチューブを常に真空に引いておくコストと、気密を保つメンテコスト
・客室内を加圧するコスト
この二つだけで、下手な宇宙船より金かかるんじゃないかっていう……
見落としがちですが、車体の周りは真空ですから、
・動力の冷却はどうする?(対流と伝導が使えない)
・キャビンの空調〃
という、熱力学の冷酷な課題がある上に、
・万が一の時、キャビンから出れない(出なくても気密破れたら即死)
という、絶対に乗りたくない条件が……(成層圏からパラシュート降下した方が百倍以上マシ)
宮崎だかの実験線跡地でやってた、地面効果機の変形のヤツの方がよほど実用的だと思いますけどねぇ……
いやでもアメリカでやった実験では、500mの距離のチューブ内の空気を一気に引いた訳ですから、なんかノウハウはありそうです。
距離が伸びれば伸びるほど大変そうですけどね。
言及するのをうっかり忘れていましたが、ご指摘のように廃熱問題は深刻そうですよ。人が増えれば増えるほど問題になりそうです。
個人的には地面効果機(エアロトレイン)には期待していまして、宮崎県日向市の実験、続報があればと思っていましたが、最近はニュースを見ませんねぇ。