あらら、懸念はしていたんだけれども。
インドネシア・ルピア、アジア通貨危機以来の最安値-中銀が介入実施
2025年3月25日 11:56 JST 更新日時 2025年3月25日 14:06 JST
25日の外為市場でインドネシア・ルピアが下落し、アジア通貨危機以来の最安値を付けた。同国の財政を巡る懸念の高まりが背景。インドネシア銀行(中央銀行)は通貨防衛に向け介入を実施した。
Bloombergより
しかし、思ったよりも大きな影響が出たみたいだね。
経済状況の悪化を招きかねない
ルピア安と市場介入
先日、不正絡みのニュースに触れたインドネシアの話なのだが。
ネックは外資に頼った経済構造にあるという言及はして、トランプ政権の動きの影響が米ドル高に伴うルピア安を警戒しているというような記事を引用させてもらった。
冒頭のニュースはそれが露骨に出たという話だ。
ルピアは一時0.5%安の1ドル=1万6642ルピアと、1998年6月以来の安値を記録。年初来では3%余り下落しており、新興国通貨市場の中でもパフォーマンスの悪さが目立っている。
インドネシア銀行の当局者は25日、テキストメッセージで、同中銀がルピア安定に向け、外為市場のスポット取引や国内のノンデリバラブル・フォワード(NDF)取引、債券市場に介入していると明らかにした。外為市場の需給バランスを確保し、国内市場の信頼を維持するために「大胆かつ慎重に」介入しているという。
Bloomberg「インドネシア・ルピア、アジア通貨危機以来の最安値」より
流石にインドネシア銀行は市場介入に入ったようだが、通過防衛のための市場介入とはいえ、あまり手広くやるとアメリカから名指しで非難されかねない。

確かにジリジリとルピア安になって、ついに過去最安値に大手がかかった感じになっている。トレンドがこれだと、状況的に更に安値を記録する可能性は高そうだ。
財政赤字と腐敗
そして、ここへ来て足を引っ張る可能性が高いのが、財政赤字の累積である。
プラボウォ氏は昨年10月の就任以来、年間約300億ドル(約4兆5200億円)の無料ランチプログラムなどポピュリスト政策を打ち出しており、財政赤字は国内総生産(GDP)比3%という法定上限に近づいている。
Bloomberg「インドネシア・ルピア、アジア通貨危機以来の最安値」より
僕は知らなかったのだが、プラボウォ氏が大統領に就任してから、何故か無料ランチプログラム(給食無償化)を開始してしまったようなのだ。
インドネシア、無料給食開始
2025年1月7日 2:00
インドネシアで6日、無料の学校給食が始まった。2029年には約8000万人を対象とし、プラボウォ政権は経済格差の是正を狙う。最大で年450兆ルピア(約4.4兆円)に上る予算の捻出が課題となる。
「(給食は)我々が先進国を目指すなか、若い世代の育成に向けた投資だ」。6日、首都ジャカルタの私立小学校で、給食を食べる生徒を視察したアグス・ジャボ社会副大臣はこう強調した。
日本経済新聞より
そういえば、日本も給食無償化とか騒いでいた人がいなかったっけ?

ああ、石破氏か。ダメだこいつ早くなんとかしないと。

えぇ、インドネシアにも支援するつもりなの?石破氏は。駄目だ(略
とはいえ、予算は最大450兆ルピア(約4兆4000億円)に膨らむ見通しだったというから、財政の裏付けなしにこの政策をスタートさせてしまったことが裏目に出たということのようだ。理念は素晴らしいとは思うけれども。
黄金のインドネシア
プラボウォ氏の政策としては、他にも色々あるらしい。
プラボウォ大統領が就任、貧困撲滅や食料・エネルギー自給率向上を訴え
2024年10月24日
インドネシアで10月20日、プラボウォ・スビアント大統領が第8代大統領に就任した。プラボウォ大統領は同日、首都ジャカルタの国会議事堂で開催された大統領就任式での就任演説で、「黄金のインドネシア2045(注)の達成に向け、強く、独立し、公正で繁栄した国家を目指す」と訴えた(10月20日付内閣官房プレスリリース)。
~~略~~
プラボウォ大統領は2024年2月の大統領選挙で、8つのミッション、17項目の優先プログラム、早急に取り組む8つのプログラムを公約に掲げ、当選を果たした。2期10年続いたジョコ・ウィドド前大統領の路線を継承するとしたうえで、目玉政策として給食や健康診断の無償実施など、国民の健康の質を高めるための政策を打ち出していた(添付資料表参照)。
就任演説では、「国内の貧困問題はいまだに深刻だ。栄養失調に陥る子供や、安定した職に就くことができない国民が多くいる」と述べ、貧困問題解決に向けた決意を示した。また、「食料を輸入に依存する状態を続けてはならない」と述べ、速やかに食料自給率を高める必要があるとした。同大統領は「4~5年後には食料自給を達成できると確信している」との見通しを示した。さらに、国内で豊富に有する地熱、石炭、水力エネルギーなどの資源を活用し、エネルギー自給率の向上を目指す意向なども明らかにした。
JETROより
就任演説に目を通してみると、汚職撲滅を訴え、食料自給率の向上を図り、エネルギーの自給自足を訴え、1日1回は栄養のある食事を!と訴えていて、手始めに給食無償化を一部地域の小学校から始めたらしい。
ハサン・ナスビ大統領広報府長官によると、3月までに300万人、2025年末までに1,500万人への無償の食事提供を達成し、2029年までに8,290万人への提供達成を目指しているという(「CNNインドネシア」1月6日)。
JETROより
でもまだ、300万人程度に行き渡っただけで、これからもっと規模を拡大していく予定なんだけれども、既に躓いてしまったというわけだ。
大丈夫なのだろうか。
軍が民間組織に
記事にあるもう1つの懸念要素が、「軍の役割を民間社会に広げようとしていること」なのだけれども、これはどういうことなのだろうか。
インドネシア、軍がより多くの民間職に就くことを認める法律を改正
21/03/2025
(CLO)インドネシア下院は3月20日、インドネシア軍事法(TNI)の改正案を可決し、軍がより多くの民間人の役職に就くことを認めた。
この法案は、インドネシア民主闘争党(PDI-P)のプアン・マハラニ議長率いる下院で全会一致で支持された。彼女はこの法律が民主主義と人権の原則に合致していると断言した。
VIERNAM.VNより
は?
インドネシア、軍の権限拡大か 検察にも出向、民主化後退の懸念
2025年3月16日 15:23
インドネシアのプラボウォ政権が国軍法改正による軍の権限拡大に乗り出した。現行法は約20年前、独裁政権崩壊後に民主化に向け軍の力を抑えるため制定された。プラボウォ大統領は軍出身。政府提出の改正法案は現役軍人の検察庁や海洋・水産省への出向を新たに許可する内容で、民主化の後退を招くと懸念が広がる。
熊本日日新聞より
ああ、そういう。
つまり、インドネシア軍人が民間企業に出向する形で関与できるようにしたために、軍の権益強化に繋がり、民主化から後退すると考えられているという意味か。
なるほどそうすると、自由な投資に悪影響が出ると海外投資家達は見ているという意味になって、より投資のインセンティブが失われるということになるのか。
国家予算
社会保障を手厚くしていくことで、インドネシアの国力を高めたいという狙いはわかった。では、インドネシアの国家予算に見合った感じの制度なのかというと、これがちょっと怪しい。
2025年国家予算案、歳出約6%増、教育や社会保障などを手厚く
2024年08月27日
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は8月16日、2025年予算案を国民議会(DPR)に提出した。歳入は2024年見通しから6.9%増の2,996兆8,702億ルピア(約28兆4,702億円、1ルピア=約0.0095円)、歳出は2024年見通しから5.9%増の3,613兆563億ルピアと設定され、財政赤字はGDP比2.53%と見込む。予算案の前提となる2025年の経済指標の見通しは、実質GDP成長率が5.2%、物価上昇率が2.7%などと設定された。
~~略~~
歳出については、教育に予算全体の約2割にあたる722兆6,000億ルピア、貧困層支援を含めた社会保障に504兆7,000億ルピア、インフラ開発に400兆3,000億ルピア、医療に197兆8,000億ルピア、食料安全保障に約124兆4,000億ルピアを配分する。教育予算には次期政権の主要政策の1つである給食無償化など、学童の栄養改善に関する予算も含まれる。
JETROより
うーん、そもそも歳入に対して歳出が超過している状況ではあるんだけど、給食無償化に使う予定の金額は歳入に対して大きすぎる。
汚職撲滅を掲げて社会保障にも力をいれるという姿勢を見せたのは良いが、結果的に財政的なバランスが危うく、更に外国人投資家がインドネシア企業に投資したとして、軍の影響が強められることで配当金が狙った通りに得られないなんて展開もあり得るというわけだ。
大規模な汚職の話も影響して、これが投資家の心理を冷え込ませたから、ルビアは下落してしまったと。そして問題は、これが容易に解決する類の話ではないことだ。何故なら、原因となっているのが大統領の掲げた目玉政策で、それ故にその看板を簡単に下ろすことができない。結構な爆弾を抱えたものだね。
コメント
あ〜ぁ……。
習近平以前というよりも江沢民から胡錦濤に至る時期の中国と似てるというか…。
江沢民がいきなり100万人単位の解放軍リストラを始めて、軍が港湾施設や鉄道やホテル経営などに乗り出したでないですか。
んで、あまりに腐敗し過ぎていて、習くんが出張ってくる一因となった。
90年代の中国の解放軍リストラ→軍の民間企業進出→腐敗腐敗腐敗…の真似になるだけでは?
私が口出しできる筋の話ではないですが、
そもそも年に三毛作が可能な農業大国で、
なんで日に一回の飯が食えん奴がいる??
90年代の中国は元軍人の凶悪犯逮捕が年間で800人いました。日本で年間80人の元自凶悪犯逮捕あったら大騒ぎでしょう?
似たような話しになって、そこでフィリピンのドゥテルテみたいのが「根絶します」と出てきたら、人口規模がデカいだけにとんでもない騒ぎになりそう。
経営学の学会には軍人あがりが多いというのが米国ですが、ありゃーぁ、世界中に軍隊を派遣する為に兵站で数字強い奴らを養成してるかるですよ!!
タリバンとかアルカイダいる地域で、ろくに基地の外に出られない環境で、自浄能力ある分解型トイレを基地に作るとして、それでは何台のトイレが必要で、それを輸送するには……みたいな計算できる人材が米軍にはいるから! 大規模な海外派兵する国だからこそ、経営学的なセンスある軍人出身の経営者や経営学者が産まれるんで、
あの国の軍部にそういう人材が多いのかと問われれば?マーク付けざる得ません。
30年前の解放軍民需企業経営の二の舞なるだけでは? 習氏が軍から企業経営の施設や資材を奪ったのは、彼の権力掌握や実質的戦闘力向上の為もあるけれど、
「あまりに腐りきっていたから」
な理由も大きい。半端に人口規模の大きいインドネシアで、軍が口挟むとロクな事にはならないでしょうね。
インドネシア、農業大国なんですよね、あれで。ただ、土地柄で規模経済が適用しにくい農業形態をとらざるを得ないので、小規模農家が多く、貧困に結びつきやすいのだとか。
軍が掌握する時代が長く続いたインドネシアですが、ジャワ人は全体の4割程度で全体掌握するには足りない。支那のように漢人は全体の9割を占めるなら、一体感を生み出すと共に少数民族を弾圧する流れになる政治形態にはなりにくい。だからこそ、力で押し通すことと、宗教、あそこはイスラム教が主体でしたっけ、をベースにしてまとめ上げる感じなのでしょう。近年の流れは社会主義的な感じになりつつありますしね。その辺りは支那と親和性が高くなるポイントなのかも知れません。腐敗政治も広まりやすいようですが。
木霊様の過去記事を読んでも、解放軍が基地の戦闘機や戦車をスクラップにして売ってしまってました…みたいの多発してますよね? シナでは。
んで、より軍がガバガバなインドネシアですよ。利権に口挟んだ軍幹部の下野で、
畑が糞の野になるのは見えています。
鉄道の線路の上にテント式の売春宿を林立させる国ですから(列車接近で、裸の客と娼婦が慌ててパンツ一丁で逃げ出す光景を観た事がある)、腐らない方がおかしい!
インドネシアの悪口はあまり言いたくないんですが、援助で給食センターとかつくれば、その後のカオスが目に浮かぶ。
そういえば、ありましたね。人民解放軍が結構な数の兵器をスクラップにして売りさばいたり、ミサイルに水入れちゃった(多分、燃料を売りさばいた)りと。
インドネシアはなんというか群島国家でグリップ力が弱いんですよね、政府の。
だから、「軍隊で抑えよっか」という発想になりがちなのかと。
そして、多分、支援とか公金をチューチューしている人々も沢山いるのでしょうな。
軍人が規律から外れると、どんくらい腐るのか観てますから。
前に湾岸戦争時に劣悪なスポット原油を廃棄タンカーに積んで、それを解放軍に売りつけたビジネスの話しましたよね?
あん時に連中は劣悪なの知ってて買ってた。別な部隊とか基地とかに水増しして売る為ですよ(本当に水を足してた)。
ババ抜きを軍どうしでやるので無問題なのですねぇ(笑)
インドネシアでも、利権を軍幹部やババッごとに売り買いして、あげくにズブズブの泥沼になるだけですよ。
こんにちは。
大丈夫。
インドネシア、韓国ちゃんに現物支払い持ちかけてるくらいですから。
お金なんて無くても大丈夫!
なわけないですが。
ただ、
・リベラルは楽観的な政策を語り、これは楽観的であるが故に愚民に支持される
・本当の為政者は事実を語り、往々にしてこれは痛みを伴うため国民に支持されない
※あえて愚民と国民を分けてます。
という実態があるわけで、たとえ立派な為政者が立ったとしても、広報がダメだと、というか、広報をめいっぱい頑張らないとダメなのだろうと。
ゲッペルスとか適任なわけですが(笑)
以下、昔呼んだ同人誌の話です。
ヤマト、ありますよね。
ヤマトⅢで、ガミラスの出身地たるガルマンはボラーという連邦国に支配されている、という状況設定があり、母星ガミラスを喪ったデスラー総統がこれを開放するわけですが……
・ボラーに搾取されて不満たらたらのガルマン国民
・デスラーがボラー追い出して大歓喜
・でも経済ズタズタだし(仕返し必ず来るから)軍備もしなきゃで、税金とかそっちにガンガン取られるから国民生活はあんまり変わらない
・でも、「明日に希望が持てる」から国民は笑顔で使役する
なんて四コマ漫画があって。
これって、すごく、意味深だなぁ……って、思いながら読んでました。
要は、為政者、指導者は、国民に幸せを「感じさせる」事が出来るか否かが最重要なんですよね。
……まあ、後は言わずもがな、お後がよろしいようで……
こんばんは。
お金ないんですよね、インドネシア。
そして、ヤマトの下りはなんとも皮肉なものですね。えーと、何かSF小説でも読んだ気がしますが、そんなデストピアな話。うーん、思い出せない。
ちなみに。
ボラー連邦は、見た目はソビエトロシアっぽいけど、やってる事はロシアとアメリカとなんなら欧州の「嫌なところ取り」(悪いとこ取り、ではない)なので、そういう目で見ると非常に面白いです。
最新のリメイク(3199)で、ベムラーゼ首相の肖像画が出てきた時は、劇場で喝采を叫びそうになりました(笑)
ボラー連邦って、ヤマトでしたか。
何処か実在の組織かと、ネットで検索してしまいました。
最近のリメイクも結構力が入っているみたいですね。当たり外れの評価は結構分かれているようですが、何れにしても愛されている作品だなと。「念のため聞いておきたいが、あなたのお葬式は何宗で出せばよいのかな」と。
(*´∇`*)